【対談】「ファインウォッチメイキング」伊勢丹新宿店と考える”本当に良い時計”とは?
今年も7月5日(水)から18日(火)まで、伊勢丹新宿店では「ウォッチコレクターズ ウィーク」が開催される。国内外の有名メーカー、人気時計ブランドから一流の”高級時計”を取り揃えるこの機会だが、現場を取り仕切るバイヤー上野は「私たちは高級時計という呼び方はしません」という。その真意を尋ねるため、ISETAN MEN'S net編集長・関が話しを聞いた。
伊勢丹が”高級時計”と呼ばない理由。
一般的に、永久カレンダー、トゥールビヨンなど、高度な技術を要する複雑機構を搭載したコンプリケーション時計や、ゴールドケースにダイヤモンドをあしらった宝飾時計を「高級時計」と呼ぶだろう。しかし伊勢丹の時計バイヤー上野は「私たちは”高級”時計という呼称を使いません」という。
価格だけ見て高額な時計を”高級”と呼ぶのは、果たして正しいことだろうか。高い精度と複雑構造をもつ、手仕事で作られた数百万円の機械式時計と、イノベーティブなデザインで視認性に優れながら装着性にも優れる数十万円のクォーツ時計とでは、どちらが”高級”なのだろうか。
バイヤー上野の答えはこうだ。
「デザインと機能に優れ、流行にされず世代を越えて長く使えるに足る耐久性を備える良質な時計を、私たちは時計作りの観点からファインウォッチメイキングと呼んでいます」。
時代を越えて愛されるデザイン、斬新だが一過性に流行に陥らない時計。そして装着性の良いエルゴノミクスデザインも評価すべき。もちろん複雑時計の最新機構もまた素晴らしい時計のひとつであることに異論はない。どれも紛れもない「ファインウォッチメイキング」であり“良い時計”である、と上野は言う。
デザインと機能、その両面からのアプローチ
関 太樹(以下、関):「ファインウォッチメイキング」の考え方については理解できます。“良い時計”って、単に価格だけで判断できるものじゃありませんよね。上野 翔太(以下、上野):そうなんです。専門家やマニアの間では、パフォーマンス面の精度、機能などスペックを語ることが多く、デザインや装着性についてももっと語りたいですね。
関:デザイン性が高い時計も、同じように“良い時計”と言ってもいいわけです。
上野:店頭を訪れるお客様の多くは、「カッコいいね!」とか「毎日着けたいね」といって買われていかれる方が多い。ならば私たちも、使いやすく、毎日でも使いたくなる、身に着けていると気分が揚がる時計を“良い時計”と呼ぶべきと考えます。
関:良いスーツや靴も、身につけていてストレスがない。そして、着用することで気分が上がります。
上野:クルマもそうだと思うんです。エンジンだけでなく、エクステリアもインテリアも、そして運転していて楽しい、疲れないといったことが大切です。
関:プロダクトって、デザインと機能、両方が大切なんですね。
上野:最新作ばかりでなく、新作であまりフィーチャーされないモデルや、過去のモデルから、いまこそ取り上げて再評価すべきという時計もあります。そういった幅広い観点から今回、デザインと機能2つのカテゴリーに分けて、ご紹介したいと思っています。
ISETAN ウォッチコレクターズ ウィークは日本製時計に注目
関:今回11回目となったウォッチコレクターズ ウィーク、以前のワールドウォッチフェアと違い新作のお披露目会ではなく、伊勢丹新宿店がセレクトする「ファインウォッチメイキング」が集められています。今回の抱負や注目すべき点について教えてください。上野:伊勢丹新宿店が考える、“良い時計”の機能とデザインという着眼とともに、日本製時計の再評価という点にも注目していただきたいです。
関:いま世界の時計業界のなかで日本の時計が高く評価されていると聞きます。その理由はどこに有るのでしょう?
上野:妥協の無い品質と精度ですね。デザインが斬新だったり、上品で品格漂うデザインと、確かな機能性を両立している点は海外メーカーに劣ることなく、ぶれない時計作りが再評価されています。とくにグランドセイコーに至っては品質・デザイン両面から評価され、国内より海外での人気が伸び、再び日本にその勢いが戻ってきています。
関:ファッションでも日本のデザイナーが海外で高く評価されてから、日本でも人気が出ることが近年増えています。我々日本人も胸を張って、日本のプロダクトを世界にお薦めしていきたいですね。
上野:ほかにも海外メーカーのなかには、日本のプロダクトデザインでは考えつかないようなアイデアや機構を採用した“良い時計”がたくさんあります。それらの中から、いくつかセレクトしてきたのでご紹介したいと思います。
►【対談】グランドセイコー他、伊勢丹時計バイヤー注目のウォッチモデル6選
伊勢丹新宿店の宝飾・時計各バイヤーが独自の視点で選んだ商品をご紹介する「About Fine Watch Making」や、今回店頭にご用意する一部商品などを盛り込んだ「ジュエリー&ウォッチカタログ2023」を公開中!
►「ジュエリー&ウォッチカタログ2023」はこちら
- 開催期間:7月5日(水)~7月18日(火)
- 開催場所:伊勢丹新宿店 本館1階 ザ・ステージ・プロモーションスペース、本館4階 ジュエリー、本館5階 ウォッチ、メンズ館8階 イセタンメンズ レジデンス
*誠に勝手ながら、2023年7月7日(金) 伊勢丹新宿店本館5階時計売場はイベント開催につき午後4時に閉場させていただきます。他のフロアは通常営業いたします。
Text:Yasuyuki Ikeda
Photograph:Tatsuya Ozawa(Studio Mug)
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