【特集】最旬のブランド&アイテムや別注モデルも登場!ドレスクロージング2023年秋冬トレンドレポート
2023年秋は、伊勢丹新宿店メンズ館がリモデルオープンしてから20周年目という記念すべきシーズン。今秋のアイテムが出揃った頃合いに、最新ブランド&アイテムとともにアニバーサリー別注モデルもラインナップする注目のコレクションを、メンズテーラードクロージングバイヤー稲葉が紹介します。
目次
メンズ館20周年に時代と次代を見据えた提案を
「今シーズンのドレスクロージングは、“クラシック”と“リミックス”、2つのキーワードを設定しています。これは春夏から継続する5階フロアのメインテーマでもあるのですが、今季はオーセンティックかつ上質なアイテムにフォーカスしつつ、さらに編集しスタイリングしていく、より立体的な構成となっています。」春夏の傾向を踏まえつつも、メンズクロージングの本流をしっかり網羅し、ラグジュアリーの本質を究めた品揃え。そこへイタリア、イギリス、フランスなど各国クラシックの本流をリミックスするというのが稲葉の提案です。
「クラシックとは”古典的”ではなくクラス感やハイクラスなどと表現されるように”最高峰”の意。たとえばスーツやジャケット、コートなどオーセンティックなアイテムを最高級の素材で提供することは伊勢丹メンズの使命であり、一流の品々を取り揃えています。また、それらを新しいスタイリングやフィッティングで提案することも伝えていきたい。ミックスではなくリミックス。ただ組み合わせを提案するのではなく、意図して再構築することで時代と次代を見据えたメンズスタイルを発信していきます。」
自身も30代のウェルドレッサーとしてSNSを沸かせているインフルエンサーでもある稲葉が、今秋注目のアイテム&ブランドをピックアップしました。
クラシックなジャケット&パンツはよりコンフォートに
まずはジャケットですが、<スティレ ラティーノ>や<チェザレアットリーニ>といった、南イタリアのサルトリアをチェックしました。
陽気で軽快で男っぽい空気を感じさせるナポリの系譜を継ぐテーラリングらしく、ハンドメイドの着心地の良さを再評価しています。腕利きのサルトたちが、こだわりの仕立て技法で一着ずつ縫い上げるコレクションは、オーセンティックの極みともいえるものです。
たとえばツイーディーな素材感のチェック柄も、色合いや柄行きは英国調ですが、英国羊毛ならばもっとゴリっと硬くて重量感あるものになります。そこを軽量でラグジュアリーなカシミヤ混素材へと進化させました。肩周りは軽く、ウェストは少しゆとりのあるミディアムフィット。ラペル幅はやや広めですが、誇張せずバランスのよい仕上がりとなっています。袖を通せば、その違いを誰もが即座に体感できるはずです。
パンツでは<マッシモ コラード>や<フミヤ ヒラノ ザ トラウザーズ>といった、有名サルト、一流ブランドで経験を積んだ職人たちのシグニチャーを取り揃えています。シルエットは今風に少し余裕をもたせながら、しかしワイド過ぎず適度にストレートなものを展開しています。サルトリアの技法で仕立てられた袴タックやVスリットなど、最近の既製品パンツでは少なくなっているディテール仕様には、クラシックならではの魅力を見出されているお客さまは少なくありません。
マッシモ・コラード氏は有名ブランドのトラウザーズ部門の責任者をされていた方で、独立されてからも名だたる高級ブランドのファクトリーを運営されています。この秋冬から彼の名を冠して、メンズ館先行でオリジナルブランドをローンチしました。まずは別注モデルとして2インプリーツのモデルを用意しました。ともに腰回りのつくりにこだわり平尻補正が施されているなど、日本人体型に合わせてアレンジメントがされています。
<フミヤ ヒラノ ザ トラウザーズ>は、サヴィル・ロウの名門<ヘンリー・プール>でカッターを務めた実力派の平野史也氏監修による既製品ラインで、一昨年に帰国されて麻布にテーラーを開かれた後も世界中の顧客から支持され続けています。
スタイリングの幅を広げるフレンチブランドの上質ジャケット
テーラードに限らず、バリエーションに富むジャケット、アウターが今季は注目されています。メンズ館としてもスタイリングの幅を広げたいという思いから、フランスやイギリスなど脱イタリアを掲げたブランド選びに力を入れていたところです。そこで今回はフランスブランドの2つのジャケットを紹介します。<HUSBANDS/ハズバンズ>は2012年に弁護士のニコラ・ガバール氏がパリで立ち上げたブランドです。様々な時代のカルチャーや映画などからインスピレーションを得たコレクションは、知的で上品な男性像を描き出します。こちらのジップアップブルゾンはライディングコートをモチーフにしたデザインが個性的です。
11センチというロングポイントの襟と短丈のシルエットは、股上の深い今風のトラウザーズと合わせるとカッコいいのではないでしょうか。素材は目の詰まったウールツイルでしっかりした質感ですが、カラーバリエーションとともに、ベイビーラムスキンのモデルもご用意しています。
もうひとつは<LUTAYS/ルテス>という2019年に誕生した若いブランドです。フランスのミリタリーやユニフォームといったワークウェアをベースにデザインを起こし、フランス国内で仕立てることにこだわっています。
コーデュロイのスタンドカラージャケット「ティレル」は、フランス貴族に仕えた料理人として著名なギヨーム・ティレル氏のユニフォームに由来しています。余計な装飾を削ぎ落とし、腰ポケットもフラップではなく玉縁仕様。内側にはポケットを3つも備えていて、ゆったりとしたフィッティングで羽織るように着るのが似合います。
インナー&アウターに利かせるミドルゲージのカラードニット
昨年からローゲージのパターンニットが支持されています。とくにカシミヤのケーブルニットは、もっとも力を入れているラインナップで、メンズ館でしか買えない別注モデルを多数取り揃えました。
山形の奥山メリヤスさんのオリジナルブランドは<BATONER/バトナー>。畔編みがシグニチャーとなっているニットブランドで、メンズ館でもロングセラーのモデルです。
今回、一頭からわずか10gほどしか採取できない希少なベビーカシミヤを使ったモデルを別注しました。本来、その編み立ての特徴から、畔編みはキックバックが強くなるぶんハリコシが強く硬めに仕上がるのですが、ベビーカシミヤを使うとかなり柔らかくもっちりとした風合いに仕上がりました。これまで<バトナー>のニットを愛用されてきた方も、この着心地には驚かれるのではないでしょうか。
もうひとつ日本のニットブランド<PICEA/ピセア>をご紹介します。<ピセア>は日本のブランドなのですが、内モンゴルに工場を構えていて、整毛、紡績、染色、ニッティングまで一貫生産する貴重なブランドです。
こちらもベビーカシミヤにこだわった展開で、たっぷりと重量感あるケーブルニットに仕上げました。こちらは同ブランドのレディスのケーブルニットをメンズにリサイズしています。表情のある繊細なケーブル柄を繊細なベビーカシミヤで編み立てると、とてもラグジュアリーな雰囲気。色は黒とグレーの2色のみですが、タートルネックもラインナップしています。
最後にインポートのニットブランドをご紹介します。<BEGG&CO/ベグ&コー>は、スコットランドで1866年に創業した老舗メーカー。数年前に著名なニットファクトリーをその傘下に収めたことで、ニットウェアにも力を入れるようになり、昨年リリースしたカシミヤニットは独特なケーブル柄が話題となりメンズ館でも好評をいただきました。
ちなみに糸はトッド&ダンカン社のカシミヤ糸。英国王室が愛用するニットにも採用される、信頼の高い紡績メーカーです。今年もこのニットを、レッド、グリーン、ロイヤルブルーというビビッドな別注色で展開します。
シルエットと差し色ニットでトレンド感を表現
全体的にダークなトーンで展開するオーセンティックなアイテムが多いなか、ニットを差し色使いしたり、シルエットとフィッティングにもトレンド感をもたせるのが、今シーズンらしさを表現するポイントと稲葉は指摘します。
「さまざまな国のテイストを組み合わせることで、サイジングやフィッティングに、現代的なリラックス感を取り入れています。いま若い世代にクラシックスタイルを支持する人たちが増えているのですが、色々なスタイルを上手くMIXして取り入れています。従来のクラシックスタイルを愛してきた方達も、フィッティングは明らかに変化しています。」
ワイドパンツのトレンドは記憶に新しいところ。さらに最近では少しドロップしたショルダーや、ウェストシェイプをとらないボックス型のテーラードジャケットなど、次世代のクラシックスタイルが広がりを見せていますが、稲葉自身のスタイリングがまさにそう。メンズ館5階はそういったスタイリングも提案しています。
「また海外を見て回れるようになり、6月にはフィレンツェのピッティウォモにも参加してきました。そこで感じたのは、体格の良い外国人に洋服が似合うのは当然ですが、着こなし方は日本人のほうが断然カッコいいということでした。そして若い世代にも、本物のラグジュアリーに触れる機会も増やしていきたいということも。秋には国内外のテーラーを招いてのクラフツマンズフェスタや、ピッティに出展しているブランドを招いてのイベントも企画しています。メンズ館が発信基地となり、多くのお客様にテーラードクロージングのよさを体験できる場を提供していきたいですね。」
Text:Yasuyuki Ikeda
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