【特集】ナポリの名匠を訪ねて|Vol.2 次代を担うカミチェリア
クラシックを極める者、あるいはその伝統を受け継ぎながら今の時代に合わせて新たなチャレンジを行う者、アプローチはさまざまだがモノづくりへの姿勢や一針一針への秘めた思いは強い──本稿は2019年1月に、イタリア・ナポリを訪れたメンズテーラードクロージング担当の稲葉智大と口元勇輝の取材記録。繊細な手仕事を介してはじめて完成する"ナポリ仕立て"にスポットを当て、そこに関わる人々やプロダクトの陰に潜むストーリーに密着した。
第2回は<Vanacore/ヴァナコーレ>。次世代を担うカミチェリアのもとを訪ねた。
<ヴァナコーレ>のサルヴァトーレ・ヌンツィアータ氏
伝統を継ぎながら、トレンドを捉える新たな感性
<ヴァナコーレ>の工房は、イタリア・ナポリの中心部から南東へ7km、ポルティチという小さな町にある。ヴェスヴィオ火山の溶岩による石畳、ピンクやイエローなど美しい漆喰の装飾が施された柱廊と張り出し窓が魅力的な街並みだ。
<ルイジ・ボレッリ>のシャツづくりに携わっていた創業者が工場を開き、創業は40年以上。過去には有名ブランドのOEMを請け負っていたが、現在は<ヴァナコーレ>のみを生産、2代目のサルヴァトーレ・ヌンツィアータが工場を指揮を取っている。若干24歳だ。
工房奥には生地がロールでにストックされており、発注された型紙をセレクト。柄合わせで重要な裁断は手作業で行われる。強度が必要な部分はミシンで縫製。その後はナポリ仕立ての真髄、ハンド工程で縫製が行われる。
工房に入り、目に飛び込んできたのは、海湾都市のナポリらしくブルーの作業着を纏った女性たち。彼女たちは皆、工房の近くに住み、地域を愛し、仕事を愛してやまない。なかには、創業当時から働く女性や、親子2代で働く者もいた。
「ナポリでは昔からそうだよ。女性は手が器用だろ(笑)」
そうサルヴァトーレは冗談めかしていたが、「シャツづくりは、繊細さと忍耐力がいる仕事」と、かのアンナ・マトッツォも言っていたことを思いだし、なんとなく腹に落ちた気がした。
そんな彼女たちによって、生産される数は一日に約60着。もちろんハンド工程の多い仕様のものは、受注が増えれば増えるほど生産数は少なくなる。
ハンド工程は、マニカカミーチャに象徴される躍動感あふれるギャザーなど、柔らかな仕立てから生まれるドレープは、本来ミシンをつかう直線の部分も含め、最大16箇所。実際に見た彼女たちの手の早さと正確な動きには驚きの連続でもあった。
サルヴァトーレの友人であるニコラ・ラダーノ(写真左)手がける<スパッカ・ネアポリス>のオーダー会も3月16日(土)と17日(日)の2日間限定で開催予定だ。
イセタンメンズで取り扱うシャツもレディメイドでありながら、ハンド箇所を9カ所設けたエクスクルーシブで製作。ナポリらしさを十二分に体感できる仕様に溢れているが、ハンド箇所を多用することで男性をエレガントに見せ、個性を引き立てることが狙いだ。
3月16日(土)と17日(日)の2日間は、上掲のサルヴァトーレ・ヌンツィアータ氏本人を招聘したオーダーイベントも初開催。新たなマーケットへのチャレンジにも前向きに取り組むサルヴァトーレらしく、次シーズンからスタートする新しい衿型も早速登場予定だ。
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イベント情報
<ヴァナコーレ>オーダー会
□3月16日(土)・17日(日)
□メンズ館5階=メンズテーラードクロージング
オーダー詳細
■価格:シャツ32,400円から
■お渡し:約3カ月後
*価格はすべて、税込です。
Text:ISETAN MEN'S net
お問い合わせ
メンズ館5階=メンズテーラードクロージング
03-3352-1111(大代表)