森岡 弘さんと歩く(1)「春のメンズ館5階」|ジャケット選びの3ステップ教えます
服を買いに行くのは、気分を買いに行くこと
――森岡さんは、いろんな人から「センスが良くなるにはどうしたらいいですか?」と尋ねられますよね。
そうですね、そういうときは「たくさん試着してください」と答えています。いろんなタイプの服をまず実際に着てみて、そうするとふとした瞬間に「あ、これを着てみたいな」と、前を向ける瞬間があります。そうすると自分の中で可能性が広がります。
――「食わず嫌いせず、食べてみたらおいしかった」というのと一緒ですね。
いろいろ試着していくと、自分のファッション観のチャンネルが変わるときがあります。着てみたら意外と似合っていたとか、販売員(スタイリスト)のお薦めに袖を通したら気分が変わったとか。
――自分一人で選ぶと、どうしても似た感じばかり買います(笑)。
新しい服との出会いは、画を描くのと同じ作業で、どんな絵の具で次を描こうかというのと一緒。「どんな新しいカラーを自分に足せばきれいに着こなせるかな」というのを、試着しながら見つけてほしいですね。そうすると、次に派手な服を地味に着たり、地味な服を派手に着たりと、いろんなことに気がついてきます。
春のジャケット講座「初級編」は、ネイビーを着こなす
――5階フロア中央のジャケット&スラックスにはさまざまなタイプのジャケットが揃っていますが、まずどこから着てみましょうか。
そうですね。トークショーなどで、会社勤めの男性から、「きちんとした感じに見える格好は?」とよく質問を受けますが、「装いのベースを知らないと加減できません」と答えます。「もう一度TPOを知りたい」という質問も多いですね。
――森岡さんの考える“ベース”とは?
ずばり「ネイビー」ですね。たとえば、今の就活生は黒のスーツがデフォルトになっていて、入社後も黒のスーツを着るという若者が多いですが、まずなにをおいてもネイビーです。ネイビーは真面目で知性的な男を演出できる色。さらに色っぽく着ることもできる奥深いカラーです。ネイビーをベース(軸)にすると、ブラウンやグレーなどともきれいにマッチして、男の服装の基本が出来上がります。ネイビーをベースにしておくと着こなしも楽ですよ。
<THE GIGI/ザ・ジジ>ジャケット 125,280円
――そうして選んだのが<THE GIGI/ザ・ジジ>の2016年春夏コレクションからモデル「ANGIE(アンジー)」です。
ベースはネイビーで、柄で攻めるジャケットですね。サイズは48でちょうど良いですね。着て帰っていいですか?(笑)
――このジャケットの魅力は。
コットン・リネン混の刺繍柄生地というのが個性的ですね。2Bで3パッチ仕様というオーソドックスなスタイルながら、ラペル幅が広くて、ゴージラインが高いのでより男らしく見えます。着丈がやや短いのでカジュアルな雰囲気でも着られるのもいいですね。ネイビーのジャケットながら懐が深い感じが新しいです。
ジャケット講座「中級編」は、薄めの色や柄を着て楽しむ
――では、<ザ・ジジ>のネイビージャケットを「初級」とすると、春の「中級」はどんなタイプを選びますか。
ちょっと歩いて探しましょうか。
――森岡さんの今日のジャケットはダブルですが、ダブルはお好きですか。
ダブルはよく着ますよ。今のダブルは、いわゆるソフトスーツ時代のダブルブレストとは別物ですから、皆さんもイメージだけで敬遠しなくていいです(笑)。僕はボタンを留めて着るのが好きですね。
――では、中級編はダブルを着てみていただけますか。
それではこの<TAGLIATORE/タリアトーレ>の白のダブルを着てみましょうか。フロント6ボタンできれいなダブルですね。
<TAGLIATORE/タリアトーレ>ジャケット 105,840円
――タリアトーレの人気モデル「MONTECARLO(モンテカルロ)」ですね。
<ザ・ジジ>のジャケットと同じようにゴージラインが高くてクラシカルな印象を受けますが、実際に着てみると両脇の高い位置からウエストまできれいに絞りが効いて、とてもきれいなラインが出ます。このダブルはサイズ50でちょうどいいですね。
――白のジャケットというと着こなしが難しい印象がありますが。
普段から白パンを穿く人なら、上を白ジャケットで、下をデニムなどにすればそれほど抵抗がないはず。このタリアトーレのダブルなら、あまり気を遣わなくてもきちんと見えます(笑)。春夏はライトトーンを上手に着こなしてほしいですね。
ジャケットの初級・中級を試着した森岡さん。さて、「上級」では何を選ぶでしょうか(つづく)。
Photo:SUZUKI Shimpei
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