【対談】「エレミニスト」プロデューサー 深本南さんと語るこれからの「循環」社会にイセタンメンズができること
今、世界中が経済、人権、ジェンダーや地球資源など、さまざまな分野で新しいシステムの構築と価値の創造が不可欠であると声高に宣言している。その背景には、新型感染症の脅威に沈んだ世界が今ようやく新たな一歩を歩み出そうとしていること、そして「気候変動の原因はすべての人間の生活にある」というIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)報告書の課題解決という目標がある。我々1人ひとりができることを継続的に探っていこうという強い意志も滲んでいる。
伊勢丹新宿店メンズ館の担当横井も、そんな新しい社会への想いを強く持つ1人。彼自身が百貨店という枠組みの中で、いま何ができるのかを考え辿り着いたのは、「本物・本質へのこだわり」に加えて「社会にとってもいい物を消費する」というライフスタイルをご提案すること。それが、この度11月10日(水)から開催する「循環」をテーマとしたプロモーションだ。
今回の特集記事では、本プロモーションの企画に賛同し出店に参加いただく、サステナブルな暮らしを提案するwebメディア「ELEMINIST」プロデューサー 深本南さんにお越しいただき、共通する思いについて語り合った。
それぞれが描く「循環」社会とは
クリエイティブの力がエシカルの種を蒔く
深本:2020年にスタートした『ELEMINIST(エレミニスト)』は、サステナブルな暮らしをガイドするメディアと通販を運営していますが、その取り組みを通して世の中の関心が急速に変わってきていると実感しています。横井さんが「エシカル」や「サステナブル」に興味を持たれたのは、いつ頃からですか?
横井:思い起こせば大学生の頃だと思います。それまであまり地球環境について考えることはなかったのですが、誰もが笑顔で暮らせる社会であってほしいという思いから、ボランティア活動や社会貢献の勉強を初めるうちに、社会のすべての部分に「環境」が関わってくることに気づきました。そこから環境保全や社会に配慮した行動や考え方といった「エシカル」(*)というキーワードにたどり着いた感じです。
深本:地球環境問題は考えているだけではなく行動することが何よりも大切です。私も学生時代にアクションを起こさねばという強い意志をもっていたので、仲間を集めて環境NGO団体を立ち上げました。主に音楽フェスティバルの環境対策ボランティア活動を運営していました。
横井:音楽ではどのように人々に届いたんですか?
深本:私たちの活動にボランティア申し込みしてくれる、そのほとんどが環境問題に関心が低い学生です。イベント会場内に設置しているごみ箱の前で分別ナビゲーションをしてもらう活動に参加していただくのですが、来場者が持ち込んでくるごみは、中身が入ったドリンクボトルや食べ残しのフードも少なくはありません。
そういった光景を目の当たりにして「もう食べ残しをやめる」と宣言する人が出てきたり、イベント終了後、駅までの道のりをごみ拾いしながら帰る姿をみて、きっかけは音楽でも、体験することで意識だけではなく行動も変わる。こうやって1人ひとりのエシカルな心の種が咲く瞬間に立ち会えたことで、エンターテイメントなどの非日常をきっかけに日常に持ち帰れるアプローチこそ、エシカルを広める成功法だと確信しました。
横井:その後、深本さんはファッションの世界へと転身されましたね。
深本: アーティストパワーで世の中を変える夢を抱いたものの、当時、音楽業界で社会活動しているアーティストは少なかったので、広めていくには相当時間がかかると考え、ファッション業界に転身しました。音楽もファッションも、共通していることは、クリエイティブの力で、人々の心を動かすパワーがあるということ。いつかエシカルを広める大きな力になると信じて、この業界に生きてきました。
横井:私も自分自信と周りの人たちが笑顔になれる社会を具体化するため、モノやコトを通して人と社会を幸せにしたいと思い三越伊勢丹に入りました。
深本:私にとっても百貨店は、幼い頃からテーマパークのようにわくわくときめく場所であったし、いつの時代も自分たちのライフスタイルの半歩先を提案してくれました。そのトップランナーでもある伊勢丹が、ポップアップを通してサステナブルな暮らしを提案してくれることは、非常に意味があると思っています。
1年間で地球3個分を消費する日本人が今すべきこと
横井:いま多くの企業がサステナブルな取り組みを強化しています。私も、百貨店は生活に根ざしたものを提案するなかで、どう新しい暮らしを提案するかが大切なことだと考えています。
深本: 気候変動の時代を生きるために、衣食住すべてにおいて価値感を変容させていく必要がありますね。
横井: 今回のプロモーションテーマでもある「循環」は地球上のすべてを包括できるキーワードです。
深本:今年の「ダボス会議」が掲げたテーマ「グレートリセット」(*)を実行するには「循環する暮らし」が最も重要となってきます。人間は動植物と共存しながら、地球一個分の暮らしをしていれば、気候危機もここまで急速には発展しなかったはずです。
横井:日本でも夏のような暑さが長く続いたかと思えば急に寒くなったり、自然環境が昔と変わっていることを感じます。
深本:日本人は「地球3個分の暮らしをしている」といわれています。世界中の人類が日本人と同じ暮らしをすると、地球が3個要るということ。毎年地球2個分のリソースを未来から搾取している状態です。そこに歪みが発生している。
横井: その原因が、地球の資源を消費して経済成長を優先してしまった結果だったということですね。
深本:大量生産、大量消費、大量破棄といった一方通行型の「リニア・エコノミー(Liner Economy)」から、持続可能な資源を循環する「サーキュラー・エコノミー」へと経済モデルを換えることが提唱されています。もちろん海洋プラスチックや人権問題も大事だけれど、最重要課題は「気候変動」。ここを通らずして次のステップへはいけません。そのためのエシカルな心の種を蒔く活動を続けていかなければなりません。
横井: 今回のプロモーションは、みんなでエシカルの考え方をシェアする場となって、その風景をまた別の誰かに伝えようという気づきの場所になってほしいと考えています。
地球と自然の今を表現した「循環」するコレクション
横井:ではここからは、今回のプロモーションの中で、深本さんが注目している企画を教えていただきます。深本: まず1点目は、廃瓦に描かれた、アーティストの田中健太郎さんの作品「ヴィンテージ “カワラ”アート」です。
1.「ヴィンテージ “カワラ”アート」
深本:作家の田中さんは国内外、幅広いフィールドで活動されているアーティスト。ボンポワンと手掛けた絵本は、2019年ドイツで開催された世界で最も美しい本コンクールにて「栄誉賞」を獲得しています。
横井:こちらは、もともと80年以上使われてきた屋根瓦で、本来なら、そのまま廃棄されてしまうものを手描きのアート作品にアップサイクルしました。今回のプロモーションに合わせて、絶滅のおそれのある野生動物たちを描いてもらいました。どれも1点ものです。
深本:描かれているアフリカゾウやベンガルトラ、アメリカワニなど普段、絵本でみるようなメジャーな動物が、じつは絶滅の危機に瀕していること、この作品を通して知っていただきたいですね。
横井:こちらの瓦を提供しているのが、山梨の「一ノ瀬瓦工業」さんという100年以上の歴史を持つ老舗の瓦工業です。他にも瓦で作成したドリッパーやマグカップなどオシャレな雑貨を今回の企画で出展していただきます。
2.「Re:planter/リプランター」
横井: こちらはガラスの球体のなかで生命を育む様子を室内で楽しめるテラリウム<Re:planter/リプランター>ですね。自然に触れることが少ない都会での暮らしや庭のない住宅でも、部屋のなかで自然を感じられる植物。LED照明が取り付けられていて、数週間に一度の水やりで育成します。
深本:京都を中心に活動されている植栽家・村瀬貴昭さんの作品です。球体の中にある小さな惑星のようで神秘的な魅力があります。球体に水滴があるのは、植物が自ら温度調整をしている証拠。テラリウムをお部屋の中心に飾って欲しいですね。都会に生きながら植物たちと生きている実感を味わえると思います。コンクリートジャングルで凝り固まった心と身体を癒してくれます。
横井: 室内で四季を感じることができるはずです。それが表すもの、その先にある意義や意味を感じてほしいですね。
ファッションやデザインからエシカルへの興味を持って欲しい
横井:ほかにも様々なアイテムが並びますが、深本さんの『ELEMINIST』にもブースを構えていただきました。深本: 世界中が企業理念やビジネスモデルをESG経営(*)にシフトしていますが、果たしてどれだけの人が日常からエシカルな暮らしをしているでしょうか。
私たちは、サステナビリティ経営を牽引していくビジネスパーソンに贈る「ホリデーギフト」をテーマに、学びながらお買い物できる体験コーナーを設置します。テーマは「ゼロウェイスト」、「オフグリッド」、「サーキュラーエコノミー」、「気候変動」。4つのキーワードについて基礎を学べる書籍を中心にビジネスシーンから車の移動やランチタイム、自宅でも愛用してもらえるアイテムを数多く取り揃えました。
横井: これらのテーマごとにわかりやすく、ギフトセットにして販売します。
深本:それぞれのギフトセットに「まさかシングルユースしてませんよねセット」とか「アメニティは使いません出張セット」など、どれもユーモアなタイトルを付けてみました(笑)
横井:「アメニティは使いません出張セット」は旅先や出張先での「ゼロウェイスト」を目指した繰り返し使える竹の歯ブラシや、エシカルな歯磨き粉を、スタッシャーというシリコン素材の容器にいれたセットですね。
深本:こちらのポータブルなカトラリーセットは『ELEMINIST』でも発売前から話題で人気となった商品です。マイバッグは当たり前になりましたが、これからマイカトラリーも増えて欲しいですね。
横井:デザイン的に普通にカッコよくて、使いやすいというのは大切ですね。
深本:ELEMINIST SHOPは、デザインと機能性を何よりも重要視しています。どれだけおしゃれでも実用性がなければ意味がありません。独自のエシカル基準をクリアした製品をラインナップしています。エシカルに関心がある人はおしゃれなプロダクトを探し求めていますし、関心がない人はデザインをきっかけに手にしてくれる。クリエイティブはエシカルを広める最大の武器ですね。
横井: デザインやファッションに目を向けた人が、新しい価値へ目を向け、その連鎖がどんどん繋がって、ひとや動物、自然と地球を思いやれる。そういったきっかけにしたいですね。
深本:伊勢丹新宿店 メンズ館が素敵なエシカルを拡散することが、また誰かの種になってくれたらいいなと思っています。
- 伊勢丹新宿店 メンズ館1階 プロモーション
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<田中健太郎> 「vintage“KAWARA”ART」販売方法について
<Vintege KAWARA ART>の全アイテムについて、ご購入をご希望のお客さまは、伊勢丹新宿店 メンズ館1階 プロモーション/エルメス脇階段までお越し下さい。11月10日(水)午前10時10分より、入場の順番を決める抽選を行います。
(抽選の時間に遅れた場合は、いかなる理由であっても抽選にはご参加いただけません)
*混雑状況に応じて購入制限をかけさせていただく可能性がございます。
Photograph:Taku Fuji
Text:Yasuyuki Ikeda
*価格はすべて、税込です。
*本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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