2020.10.26 update

2020 WATCH COLLECTOR’S WEEK|注目ブランドはこれだ!Vol.1〈ブレゲ〉

今年の「ウォッチコレクターズ ウイーク」のテーマは、わたしにとっての“いい時計”。ここでは、そんなテーマに合わせて注目ブランドにフォーカス。1回目は〈BREGUET/ブレゲ〉をご紹介する。

 

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〈ブレゲ〉といえば高級腕時計ブランドの名門。ルイ16世やマリーアントワネットといった誰もが知る著名人に愛されてきた古い歴史を持つブランドで、今日の腕時計づくりにおいての重要な機構をいくつも生み出してきた。
“腕時計界の秀才”ともいえる同ブランドだが、どんな点に魅力があるのだろう。“技術”の素晴らしさが真っ先に思い浮かぶ〈ブレゲ〉なのだが、今回はあえて“デザイン”の良さに先に触れながら、今年の新作の魅力に迫ってみよう。

 

タイムレスなデザイン・コードを体現した新作「クラシック 7337」

 


〈ブレゲ〉
「クラシック 7337」
5,126,000円
K18WGケース:直径39mm、3気圧防水、自動巻

 

タイムレスな気品を湛える「クラシック」は、ブレゲ・スタイルが最も純粋に表現されたコレクションだ。シルバー仕上げのゴールド製ダイヤルとブレゲ・ブルーのゴールド製ダイヤルはいずれも今年の新作で、ブランドが得意とする技術のひとつでもあるギヨシェ彫りの模様が施されているのだが、ただ単に装飾として美しいだけではなく、各表示を巧妙に区別して判読を容易にする機能を果たしている。また、先端に丸いモチーフを配したブレゲ針やローマ数字も視認性を高めることに一役買っている。

 

「クラシック 7337」のダイヤルでは、時間のチャプターリングの縁に麦粒のような模様の「グレンドルジュ」、スモールセコンドに市松模様の「ダミエ」、そして中央部には「クル・ド・パリ」の模様が施されている。ムーンフェイズ表示のラッカー仕上げの空は彫金による雲で区切られ、輝くドットが銀河を思わせる。眺めていると、思わず空に思いを巡らせてしまうことだろう。

 

 

モデルの核となるデザインとも言えるオフセンター・ダイヤルは、1812年頃からいくつかの懐中時計に導入されていた。1823 年に販売され、現在パリのブレゲ・ミュージアムに展示されているクォーター・リピーターウォッチ「No.3833」は、6時位置にオフセットされた時間のチャプターリングや、12時位置に置かれたムーンフェイズ表示に特徴があり、そのレイアウトが現在の「クラシック 7337」に採用されている。

 

〈ブレゲ〉は1930年代の終わりから、ギヨシェ彫りやケースバンドのフルート装飾など、懐中時計に用いられた古典的なデザイン・コードを再び腕時計に取り入れたのだが、そうした傾向は1950年から1970年の頃に、現在「クラシック」と呼ばれるようになったコレクションで確固たるものとなった。

〈ブレゲ〉は、アブラアン-ルイ・ブレゲが発明したタイムレスなデザイン・コードを現在の時計づくりに取り込み、その継続を図ることで、クラシカルな魅力を持つ“いい時計”を次世代に引き継ごうとしているのだ。
 

“ブレゲ・ブルー”が表現された、特別な工芸と呼ぶべきエナメル

 


〈ブレゲ〉
「クラシック トゥールビヨン エクストラフラット オートマティック 5367」
19,272,000円
Ptケース:直径41mm、トゥールビヨン、3気圧防水、自動巻、ブティック限定

 

「クラシック」コレクションの中からさらにもう1つ注目したいモデルが今年の新作である「クラシック トゥールビヨン エクストラフラット オートマティック」だ。同モデルが搭載しており、ほかならぬアブラアン-ルイ・ブレゲがこの世に生み出した複雑機構“トゥールビヨン”に関しては今回はあえて語らない。
今回着目したいのは、ダイヤルのエナメル加工なのだ。これには、これまで語ったギヨシェ彫りと同じく、単なる装飾以上のものを感じる。“エナメル”という言葉自体はよく耳にするが、〈ブレゲ〉のエナメルは通常のエナメルとは一味違う。職人に厳密さや忍耐強さ、技術の習熟が求められる、非常に特別な工芸なのである。

 

 

どのような過程でこの艶やかで美しいエナメルが生み出されるのだろう。まずダイヤルとなるゴールド製プレートを研削や清掃してから、ブラシでエナメルの釉薬を湿ったまま薄くむらなく施す(文章にすると簡単そうに思えるが、むらなく施すだけでも非常に難しい)。これを炉に入れ、摂氏800度以上の高温で焼き上げる。その後、目指す色が得られるまで何度もエナメルを重ね、焼成を繰り返してようやく完成するのだ。

新作モデルでは、いくつかのブルーが絶妙にブレンドされており、その最終工程では、炉に入れる最後の回の前段階でそっと優しく研磨している。そのひと手間でエナメルに自然な光沢が生まれるのだ。そしてゴールド製ダイヤルは、高い技術を誇るエナメル技法の専門工房で面取りが行われ、次に表示に用いる各種のエレメントが加えられる。職人は非常に特殊な手法に則り、このダイヤルの中でブレゲ数字や時間目盛りと秒目盛り、ロゴなどに立体的感を作り出す。

このように高度な技術がつまった装飾が施されているからこそ、複雑機構の“トゥールビヨン”を搭載していても、メカニカルに寄りすぎず、クラシカルな魅力を静かに放つのだ。

 

さらなる進化を続ける”複雑機構”

 


〈ブレゲ〉
「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」
25,608,000円
K18RGケース:直径43.9mm、トゥールビヨン、永久カレンダー、イクエーション・オブ・タイム、10気圧防水、自動巻

 

そして、〈ブレゲ〉といえば印象が強いのが技術の素晴らしさだ。新作の「マリーン 5887」は、新世代の“トゥールビヨン”に加え“パーペチュアルカレンダー”と“イクエーション・オブ・タイム(均時差)の表示”も併せ持つ。2本の分針、すなわち伝統的に一般市民が使う平均太陽時の分針と、真太陽時での分を直接示す第2分針がこのモデルには搭載されている。

 

ムーブメントの中心にはサファイアクリスタルのディスクがあり、これがイクエーション・オブ・タイム(均時差)の周期を忠実に再現しながら1年で1周する。この透明ディスクは、周縁に12カ月の目盛りが記され、ディスクの下に置かれたトゥールビヨン機構も透けて見える。

ランニング・イクエーション・オブ・タイムの仕組みは、“ディファレンシャル”と呼ばれる歯車のセット(差動歯車)で行われるのだが、この巧妙な差動歯車は2つの独立した入力を1つの出力へと統合できる。平均太陽時の分針の表示のほうは、時計のメインの輪列で行われており、一方でディスクのカムの形状をなぞるフィンガーが均時差の情報を読み取り、続いて差動歯車が真太陽時(平均太陽時+均時差)を算出するための計算式を実際に演じ、その結果が真太陽時の分針で表示される。

これら2本の分針によって、時計の持ち主は平均太陽時と真太陽時を一目で読み取ることができる。
 

 

“イクエーション・オブ・タイム(均時差)の表示”は“パーペチュアルカレンダー”と連携している。このムーブメントのカレンダーは、30日の月と31日の月、2月28日と閏年の29日といった、4年周期のカレンダーに含まれるあらゆる不規則を計算に入れて正しく表示する。この表示スタイルも〈ブレゲ〉のコレクションの中では極めて独特なもので、新たに設計された機構が用いられている。曜日と月の名は、針ではなく、小さな窓を通して示され、日付は“レトログラード”の名で知られる方式の針で示される。この針は1日から始まって月の終わりまで進み、最後の日の真夜中に瞬時に最初の“1”に戻ると、翌月の日付がまたスタートするのだ。

 

得意とする高い技術力と、その魅力を下支えするデザインの精緻さ。これら2軸があるからこそ、〈ブレゲ〉の時計は長い歴史を刻みながらタイムレスな魅力で支持を得てきた。

同ブランドが、以前世に送り出したモデルのデザインや技術を継承しながら、さらにそれらをブラッシュアップし、新たな価値を持った時計を世に送り出しているように、次世代へと引き継ぎたくなるような時計を“いい時計”と考えるのなら、ぜひ手に取ってもらいたい。

 

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Text:ISETAN MEN‘S net

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