【特集】大人に支持される3大パンツブランドの人気モデルを徹底比較
目まぐるしく変わるパンツトレンド、2020年は「機能性素材」が主役
近年のメンズスタイルの変遷を振り返ると、スタイルの変化はトップスとボトムスで大きな差があることに気付かされる。最新モードのトップスシルエットは、ビッグサイズや肩を落としたルーズめのシルエットだが、クラシックスタイルではアンコン仕立てのテーラードジャケットが一般化したことで、肩パッドや毛芯を省いた軽く柔らかなフォルムが定着した。シルエットとディテールの変遷に一時的な流行はあっても、アイテムに大きな変化はないといっていい。
しかしボトムスは別だ。シルエットが最重要なアイテムは膝下ストレートに始まる美脚ブームから、ウェストプリーツ入りのテーパードラインへとトレンドが移行しだしたのは3〜4年前のこと。「ベルトレスパンツ」や足首を覗かせる「九分丈」、スポーツウエアのデザインをドレスに持ち込んだ「ジョガーパンツ」がメンズスタイルのスタンダードとして定着したことも目新しい。最近では進化系パンツの登場で、新興のパンツブランドも毎シーズンのように登場している。
このようなパンツトレンドが進化したことに加え、最新トレンドでは機能性素材を用いたパンツが注目されている。一見、普通のウールのパンツに見えて素材に化繊を混紡していたり、ジャージー素材が使われているため、伸縮・撥水に加え防シワ、ホームウォッシャブルなど、履き心地を快適にするとともに、イージーケアなどの便利な機能を搭載している。この傾向はイタリアのパンツブランドでも、新興勢力だけでなく老舗のファクトリーブランドまで波及しており、メンズファッション全体に影響を及ぼしている。
選ぶポイントはオン・オフ兼用できる素材使いとトレンドのシルエット
多様化するワークスタイルの変化とともに、ビジネススタイルはカジュアル化している。さらに休日にセットアップスーツを羽織るように“着流す”スタイルもトレンドになり、オン・オフスタイルの境界線は曖昧だ。そんななか汎用性の高い定番パンツが、見た目はそのままで機能を付加した素材に変われば、これまでと変わらず穿けるうえに、いままでより着心地までよくなっているならば人気が高まるのもうなずける。
たとえば定番であるグレーのウールスラックスもウール100%のようなタッチながら、じつはポリウレタンを混紡することで伸縮性を高めていたり、糸にナノレベルで加工することで撥水性や防シワ性が付加されていれば、着座時に膝の曲げ伸ばしや腰回りの締め付け感が緩和されて、これまでよりも快適なものになる。雨濡れや泥ハネもサッと払うだけで落とせたり、飛行機などで長時間の移動時や、折りたたんでスーツケースに収納していても、シワがつきにくいものならば気になることもないだろう。
シルエットもこれまでのものより進化していて、現代的なシルエットが確立されている。腰回りタイトでノープリーツなストレートシルエットはビジネススタイルで定番的だが、プリーツで腰まわりに余裕をもたせながら膝下から細身にテーパードするシルエットや、裾までワイドなモード的なシルエットも浸透してきた。クラシックスタイルでも、くるぶしを覗かせる丈ではくのが人気となり、ジョガーパンツをテーラードジャケットと合わせるスタイリングも定着した。クラシックトレンドはゆっくりと変化するため、これからもしばらくこのスタイルが主流になると思われる。
3大ブランドの今売れているパンツをチェック!
イタリアのパンツ専業ブランドからも機能性素材を使ったモデルが多数リリースされている。そこで3大ブランドの人気モデルをクローズアップして、その汎用性について検証してみた。これまで通りのドレス&カジュアルも、素材面でランクアップされたスタイリングとなる。
1. INCOTEX/インコテックス「35」
イタリア美脚パンツの“雄”として揺るぎない地位を得ているインコテックス。この「35」モデルは、日本人体型に合わせて平尻補正を加えた人気の高い定番モデルだ。
ビジネスマンの紺ジャケ&グレースラックススタイルではマスターピースだが、ドレスのみならずカジュアルでも穿ける様々な素材で展開されている。ウェストの内側にはフィット感を高める袴タックが入り、ノープリーツで余計なシワが入らないスマートなバックスタイル。シルエットはスリムストレートだが、微妙にラインが変わる膝位置を高く設定することで、視覚的な脚長効果も生み出している。
ミディアムグレーの素材はシャリッとした強撚糸のタッチに清涼感があり、ルックスは従来どおりのウールトロピカルだが、ポリウレタンを3%ミックスすることでストレッチ性を備えている。さらに撥水性とホームウォッシャブルなタイプなら、これまでの「グレスラ」を買い替えてもイージーケアなぶん、お買い得と言えそうだ。
ドレススタイルでは定番の紺ジャケとのコーディネートは外せない。従来ならジャケパンにはローファーを合わせるものだが、最近はスーツに代わるドレスアップの上級スタイリングなだけに、レースアップタイプの内羽根ストレートチップも合わせられる。より今年らしく着るならカラーシャツを合わせてVゾーンに色を使うのもいいだろう。
カジュアルに着るなら少し裾丈を上げておきたい。タッセルローファーにドレッシーなくるぶしを覗かせて素足履きすれば、上品な大人のカジュアルスタイルで着こなせる。
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2. PT TORINO/ピーティートリノ「GENTLEMAN FIT」
今春、<ピーティーゼロウーノ>とデニムラインの<ピーティーゼロチンクエ>を統一して<ピーティートリノ>として生まれかわったこのブランドの、人気モデルがこの「GENTLEMAN FIT」だ。やや深い股上と長めの持ち出しが特徴的で、ウェストプリーツで膨らみをもたせた腰回りからふわりと落ちるワタリ、膝下絞ったテーパードシルエットがモダンなボトムズラインを描き出す。フロントのコインポケットにはクラシックパンツの趣もある。
ドレスにもカジュアルにも使い勝手の良い黒のスラックスは、「黒スラ」と呼ばれる定番アイテム。モノトーントレンドの現在だけでなく、将来的にも定番的に履くことができるうえ、今回はイセタンメンズの別注モデルとして、ナイロン×ウレタンの機能性を採用した。薄手でシャカっとしたタッチだが見た目はウールのような上品な表情。さわってみると抜群の伸縮性に優れ、シワにもなりにくく撥水性にも富むので、ドレススタイルにはもちろん、アクティブなカジュアルスタイルにも合わせることができる。
オンに活用するなら、ジャケットに合わせてスラックスらしくジャストレングスで着るのがいい。生地にハリがあるのでシルエットもシャープに映え、レザーのシューズとも相性がいいのでオフィスのドレスコートを損ねることもない。
カジュアルに穿くなら上掲のインコテックスのときと同じく、素足履きのスニーカーにくるぶしが覗く丈が軽快だ。
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3. GTA/ジーティーアー「GIORGIO」
いまでは多くのフォロワーがいるが、スラックスでありながら裾にリブニットを使うことで、ジョギングパンツのシルエットを生み出したのは、この「GIORGIO」が先駆けだ。
ベルトループを取り付けたままドローコードをあしらい、フロントにはプリーツを入れながらもクリースを意識せずに履くことができる。裾リブは後ろ部分のみゴムを入れることで、前からはすっきりとしたシルエットでスポーツウェア感も中和されている。
杢グレーのウールジャージーは伸縮性に富み膝も抜けにくい。スウェットパンツ風だが春夏用に薄手のジャージー素材にすることで爽やかに履くことができるものだ。腰回りはスラックス仕立てなので、テーラード型のジャケットと合わせても違和感がない。
このテーラードジャケットに合わせるスタイリングはピッティ会場でも一大ブームとなったもので、今ではメンズのラグスポ(ラグジュアリースポーツ)スタイルでは定番となっている。
カジュアルなシャツブルゾンスタイルも、リラックスしたスウェットパンツを細身の美脚シルエットではくことでワンマイルウェアとしてだけでなく、カジュアルアップしたスタイルとして着こなせる。上着を脱げば、このままジョギングやフットサルなどに興じることも出来そうな高い汎用性は、アクティブな大人のボトムズとしても若々しいスタイリングを楽しめるだけに、年齢を問わず高く支持されているのだ。
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Photo:Natsuko Okada
Text:Yasuyuki Ikeda
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