メンテナンスによって未来へと受け継ぎたい名靴たち。
サステイナビリティが声高に叫ばれるこの時代、おふたりがどのような意識でいるのかという素朴な疑問を投げかけてみた。
「アパレル業界では、大量生産や衣料品ロスっていうものが大きな問題になっています。でもヨーロッパでは昔から良いものを長く使おうという文化があって、それに対する自分自身の憧れもあったので、ファストファッションのように安く大量に売ってというのは良くないとは常に思っていました。流行りを追うよりも、好きなものを買うというスタイルですし。死に筋好きなんて揶揄されたりもしましたけどね(笑)」
そんな田島氏とは、また違った視点で答えてくれたのが濱岡氏だ。
「アパレルも革靴も、まだまだ勉強中の身ではあるのですが、駅ナカという多くの人が行き交う場で靴磨きをしている実体験を通して、革靴というのは一般的に“消耗品”として捉えられているなと強く感じます。世の中の大多数の方は、靴の踵が磨り減ったら捨てるか、良くてクイックリペアに持ち込む程度。それが当たり前のような風潮にもなっているので、正直もったいなって思うんですよ」
「そういう靴でも磨けば寿命は長くなりますよ、新品からプレメンテナンスをしておけば、さらに保ちがよくなりますよ、とご提案することで、お客さまに『そういう観点もあったのか』という新たな発見をしていただける。僕らとしては、靴を単なる“消耗品”から、愛着があるから買ってみたい、ずっと履いていたいという“財産”に変えていきたいんです。結果的に、サステイナビリティを重視する今の流れに沿ったことをやれていると感じています」
そんなふたりがタッグを組んで取り組む今回のイベントは、昨秋に行われた「ALDEN GARAGE」がさらにパワーアップしたようなもの。その詳しい内容について田島氏が教えてくれた。
そこで重要な意味をもってくるのが、濱岡氏の存在というわけだ。
「名靴と呼べる一足を手に入れたら、大切にメンテナンスして何年、何十年と履き続ける。そんなご提案をしたくて、僕ら『BRIFT STAND』は参加させていただいています。今回のメニューは、ご購入いただいた靴に無料で磨き加工を施しお渡しするというもの。人間でいえば洗顔し、保湿クリームするところまで。汚れを落として栄養クリームを付け、塗り込んであげるという所要約10分のサービスです。もちろん我々のコアメニューである鏡面磨きも承ります」
定番的人気を誇る傑作のビンテージ、あるいはオールデンの希少カラーやコードヴァン素材、そして最高位の職人が手掛けたビスポーク系は特に意識して揃えたというから、靴好きは決して見逃せない内容となりそうだ。
最後に、そんな二人にとっての特別な一足を訊いてみた。田島氏はジェイエムウエストンのローファー「180」を挙げてくれた。
「ずっと昔から好きで、常に何足か色違い、素材違いで所有しています。今は6足くらいあって、ほぼ毎日履いているような感じです。主張しすぎないデザインが心地よく、カジュアルからジャケパン、スーツまでと何にでも合う。色が変われば表情も変わるので、その日の気分やスタイリングに合わせて楽しんでいます」
濱岡氏は社会人1年目に購入した、チーニーにまつわるエピソードを明かしてくれた。
「当時は何も知らずに某セレクトショップで購入して、なんのケアもしていませんでした(笑)。毎日ガンガン、雨の日にも構わず履くしケアも修理もしなかったせいで、拇指球の裏あたりに大きな穴が開いてしまったんです。ただ、いろんな仕事やプライベートで使ったので、ずっと捨てられずにいました。形はストレートチップで、エドワードグリーンの『202』ラストのように丸みがあるのでカジュアルにも履くことができた。この仕事を始めるとなったとき、思い立って弊社の修理職人にリペアをしてもらうことにしたんです。そうしたら本当に見事に蘇ってしまって……、今でも偶に履きますね。革靴にハマってエドワードグリーンもジョンロブも持ってはいるのですが、やっぱり一番思い入れがあるのは、そのチーニー。残念ながら、今日は履いてないんですけどね(笑)」
伊勢丹メンズ館バイヤーが選ぶ、「SAFARI 3号店」で見つけた"お宝シューズ"
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Photo:Nastuko Okada
Text:Junya Hasegawa(america)
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