2020.02.19 update

名門の手を継ぐサルトリアが伊勢丹メンズ館初登場


<SARTORIA CARACCIOLO/サルトリア・カラッチョロ>はナポリ市内から1時間ほど北上したカゼルタの街にある。ここは18世紀ヨーロッパ最大といわれ、当時のナポリ王カルロ7世が「ヴェルサイユ宮殿を越える王宮を建てよ」と命じて造らせたカゼルタ王宮がある街だ。世界遺産に登録されるこの王宮のほかにもイタリアで最も古い品種の一つである"パラグレッロ"というワインが有名。また、水牛のモツァレラチーズやカゼルタ黒豚など食の産地としても有名だ。

工房を切り盛りするのは、ニコラ・ジョルダーノとアレッサンドロ・ディ・ミーコ。2人はいとこ同士で、<チェサレ・アットリーニ>などナポリでは誰もが知るサルトリア工房で働いた経験を持つ。祖父の工房を二人で継承することになり、カゼルタの街へ転居するも、工房の名に冠したのは祖父のサルトリアに由来するカラッチョロの名であった。

カラッチョロとはナポリの海岸通りの名称。卵城のあるサンタルチアから、パルテノペ通りをポジリポの方へ、左手に海を、右手に市民公園を眺めながら散歩しているとやがてカラッチョロ通りへ出る。この通りに、かつて祖父アルフレードのサルトリアがあったのだ。ナポリ市民で賑わう海水浴場に面し、いまではすっかり観光地化されたこの通りは、かつて仕立て屋が軒を連ねる通りだったという。



<サルトリア・カラッチョロ>ジャケット 269,000円


最新鋭の機械を所有せず、カットはハサミを使った手作業のみ。アイロンと針と糸だけで仕立てるため、静かな職人の気遣いが聞こえる工房には約20名ほどの職人が働いている。なかには<キートン>で50年以上、縫い子として働いた70歳を超える熟練職人もいる。型紙は、伊勢丹メンズ館のために新たに製作されたもの。日本人の体型に合うモデルを、前肩とのぼりの吸い付きにこだわって依頼したものだ。

ここで仕立てられる既成服は、高級サルトでの経験を活かしているため繊細で端正な顔を持つ。精緻な仕事は、まるで機械仕立てのようにさえ見えるが、ナポリ仕立てを顕著に示す数々のディテールと、やわらかいステッチは明らかに手の仕事であることがわかる。副資材には、かの高級サルトと同じものを使っていると、こっそり教えてくれた。今春、伊勢丹メンズ館初登場である。

Photo&Text:ISETAN MEN‘S net

*価格はすべて、税込です。

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