ピッティには、ラグジュアリーの本質がありました
「ビームス時代、年に2回のピッティは戦場でした。会場中を足を棒にしながら隅から隅まで歩き回るんです。とても会期中だけでは見きれません。閉幕後は、各地のサプライヤーを訪ねて、さらにコレクションを深掘りするんです。そうやってビームスの枠内に収まる服を探してきました。
秋からシンガポールのセレクトショップCOLONY CLOTHINGのクリエイティブディレクターに就任します。シンガポールは世界有数の金融センター(*2019年度世界金融センター指数第4位。東京は6位)ですし、政府が海外企業の誘致活動を推進していることもあり、世界中からビジネスマンが集まるアジアのハブ都市。富裕な方々も多い街にも関わらず、ラグジュアリークロージングの供給が追いついていません。そこに可能性を感じたのです。
COLONY CLOTHINGのテーマは2軸あって、それは「ジェットセット」「ラグジュアリーリゾート」。これからはそういった方たちのライフスタイルに見合った服を探しに、ピッティへ行くことになりそうです。トレンドよりも上質さを感じられる服。シチュエーションに合わせ、ライフスタイルが思い浮かぶ服ですね。
オフィスにはインターナショナルな人々が集まっているのでスーツは必携です。出張時に行くなら機内で快適に過ごせる服も要るでしょう。休暇を過ごすならリゾート地のホテルや別荘へ行くので、海沿いのレストランの着るリネンのシャツ、夜のパーティに行くためのテーラードジャケット、プールサイドでくつろぐビーチウェアも揃えておかなくてはなりません。
シンガポールは常夏の亜熱帯ですが、富裕層は世界中に拠点があるので、行く先々で着る多様な服が求められます。これからはブランドに囚われず、アイテムごとにピックアップしていくバイイングが中心になるでしょう。プライスレンジもかなり広がると思います。様々なシチュエーションに相応しいアイテムを、これまで蓄えた知識と人脈から引き出して実現していくことになります。
ピッティには、世界的から勢いのあるラグジュアリーブランドが集まっています。日本ではまだ知られていない、もっとラグジュアリーなメゾンや、高級なアイテムもたくさんあります。シンガポールに集まる企業経営者やジェットセッター、エグゼクティブの日常に相応しいラグジュアリーな服もたくさん揃っていますが、ラグジュアリーの本質はただ単に値段が高いということじゃないんです。上質な素材と上質な作り、そしてライフスタイルと結びついている事が何よりも大切です。
PITTI IMAGINE UOMO@ISETAN MEN’Sに来日するイタリア人たちは、そんなラグジュアリーなライフスタイルを知る人たちにワードローブを提供してきた人たちであり、同時に彼ら自身も、日本では考えられないぐらいの富裕層です。彼らが経営するアトリエやファクトリーを訪問すると、フェラーリが何台も並んでいたり、昼食時はランチとは思えないフルコースで出迎えてくれるし、休日には所有するクルーザーでカプリ島まで遊びに連れて行ってくれたり。そんな人たちと出会える場が、伊勢丹で開催されるんです。リアルなグローバルラグジュアリーを体感できる、貴重な場になるのでしょうね。
▼ 1. 稲葉智大(三越伊勢丹バイヤー)
▼ 2. 高田朋佳(「コロニークロージング」クリエイティブディレクター)
▼ 3. 広瀬未花(モデル・タレント)
▼ 4. KING MASA
▼ 5. 石井洋(『LEON』編集長)