2018.12.21 update

写真家・中野敬久が撮り下ろし、「ライカM10」で紡ぐファッションストーリー(1/2)

ユースカルチャーに親しみ、国内外のセレブリティやアーティストからの信頼も厚い気鋭の写真家・中野敬久氏が、ロードムービーさながらのファッションストーリーをライカM10&M10-Pを駆使して撮り下ろし。メンズ館8F=イセタンメンズ レジデンス/チャーリー・ヴァイスで開催されるポップアップミュージアムイベントで、満を持して披露する。住宅街の工場跡地をリノベーションしたというプライベートスタジオに中野氏を訪ね、撮影の舞台裏や「ライカM10」シリーズについて話を訊いた。


中野敬久
1993年渡英。『ロンドン・カレッジ・オブ・プリンティング』にて、写真、映像を学び、スタジオにて数々のアシスタントを経験した後、帰国。VOGUEのイタリア版メンズファッション紙「L'UOMO VOGUE」をはじめとするファッション誌や国内外の俳優女優、アイドル、ミュージシャン、文化人など枠に捕われないポートレート撮影で、広告、CDジャケット、雑誌など幅広い媒体で活動中。https://www.hirohisanakano.com


被写体のパーソナリティを克明に写し出す、中野氏のこだわり。

12月26日(水)から2019年1月15日(火)まで、メンズ館8階=イセタンメンズ レジデンス/チャーリー・ヴァイスに期間限定で開廊する「LEICAミュージアム」。ここでは数々のファッション誌、音楽誌、カルチャー誌、CDジャケットや広告など、多彩な分野の最前線で活躍するフォトグラファー・中野敬久氏をフィーチャーし、伝統のレンジファインダー式システムを採用したデジカメ「ライカM10」シリーズで撮り下ろしたファッションストーリーを展示する。

<ライカ>といえば、“エンスー”なカメラマニアのみならず、ガジェット好きやデザイングッズ愛好家までをも惹きつけてやまない世界最高峰のブランド。そして「ライカM10」シリーズは、伝説の「M型カメラ」の系譜に連なる世界最小サイズのレンズ交換式デジタルカメラだ。気鋭の写真家とのコラボレーションとなれば、その作品や仕上がりは大いに気になる。

そこでイベント開催を前に、中野氏本人のプライベートスタジオでインタビュー。撮影の舞台裏、ライカのこと、そしてこの写真展に込めた思いを語ってもらった。


「僕自身、人物を撮るということを主軸にしています。だからそれが雑誌でも広告でも、たとえばファッションであったとしても、“人物”そのものが撮れてなければ意味がないと考えているんです。僕がロンドンで過ごした1990年代には、錚々たる大御所フォトグラファーたちのアシスタントを務めるなかで被写体となる人物の動かし方や、彼らとの向き合い方を学ぶことができました。

日本ではファッションモデルをマネキンのように扱う人もいるし、モデルを撮ることと人物を撮ることを別物として考えられていることが多いです。でもモデルであってもきちんと“人物”やパーソナリティを引き出せているときは、“いい写真”が撮れているという確かな実感がありますね。

だから今回の取り組みでも、ファッションシューティングとして洋服を見せながら、演者のパーソナリティを表現したいと考えました。海外では、自己表現やアイデンティティとしてのセルフ・ファッショニングが確立しています。じゃあ日本におけるセルフ・ファッショニングってなんだろうと考えた時、若い俳優が最先端のグッチをリアルに着こなすというのが象徴的なのではないか、と。ハイファッションがストリートファッションの憧れになるように、いい服を着せてナチュラルに撮る。そんなスタイルが、自分的にしっくりくると感じているんです」

©HIROHISA NAKANO

「東京から海へ行く」より


そしてこの撮影にあたってモデルのキャスティングに際して最も重要視したのが、「若さ」だという。もちろん、単純に年齢的に若いということではない。未完成、未熟なジェネレーション特有の、醸し出されるような人間的「若さ」である。

「伊勢丹での開催ということもあり、まず最初に思い浮かんだのは、新宿という街に若者がいるという画だったんです。自分は元々ユースカルチャーが好きですしね。そしてそれをどうやって撮ったら面白いかな、と。そこでいろいろ気になる人に声を掛けて、男性2人、女性1人という3人の若い俳優さんをキャスティングしました」

 

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