【インタビュー】マーティンのギターのそばにはいつも、音楽と笑顔がある──尾崎裕哉(1/2)
昨年10月上旬から約1カ月間に渡り、メンズ館8階=イセタンメンズ レジデンスでは、世界で最も有名なアコースティックギター・メーカーとして知られる〈MARTIN/マーティン〉のポップアップが開催された。期間中の各週末には〈マーティン〉にゆかりのあるアーティストによるアコースティックライブが行われ、シンガーソングライター尾崎裕哉もここに登場。抽選で選ばれた幸運なオーディエンスたちを盛り上げた。ライブ前の貴重な時間をいただき、〈マーティン〉への想い、そして音楽への想いを語ってもらった。
父に尾崎豊という偉大なシンガーを持つ彼。音楽へ導かれていったのは必然の流れだったのかもしれない。そんな彼の、ギターとの初めての出会いが〈マーティン〉だった。
「かつて父のプロデューサーだった方に、”バックパッカー”という携帯に便利なモデルをいただきました。それがギターとの出会いであり、〈マーティン〉との出会いでした。ちょうどギターを弾き始めた頃でしたね。15歳までアメリカに住んでいたのですが、同じ寮の隣の部屋に住んでいた友人から『いっしょに練習しないか』と誘われて。ロックが入り口だったんですが、手にしたギターはアコギでした。ハードロックをアコギでカバーできたらとかっこいいのではと思って、AC/DCみたいなバンドをアコギでカバーしていましたね」
先日リリースされた「Glory Days」という曲は、原曲はEDMをベースとしているが、当日のライブでは愛用の〈マーティン〉のアコースティックギターで披露された。より温かみが増し、原曲とは違ったエネルギーを感じることができた。
「〈マーティン〉はやっぱり憧れのブランド。音楽をやる者であれば、一度は手にしてみたいと思うはずです。実際に多くの著名アーティストが愛用中ですし。持っているだけで、勇気がもらえるような、そんな力を持っています」
「音楽を長いことやってきて思うのは、アコースティックギターは自分の”声”のような存在だなって。何気なくギターを持ったときに弾く最初のコード、最初の単音。その音は、その時の自分の気分を表していると思います。ギターが自分の今の気持ちを代弁しているような。手癖であり、ルーティーンであり、そこからコード探しに入っていく。例えば今朝起きたときに、とあるベースラインが思い浮かんだんです。そこでギターを手に取って、コードを弾く。曲作りで言えば、0を1にする最初の段階ですね。頭でイメージしたものが、音として形になる瞬間です」
最初に手にしたギターが〈マーティン〉だけあって、思い入れはかなり強い。弾き込むうちに「これ以外のアコギにはもう戻れない」と思うようになった。
「さわり心地が他のギターとは違うんです。ネックをもったときの心地よさ。”持ちやすさ”は”弾きやすさ”に直結します。優しく触っても、音の立ち上がりがすごくいい。はっきり抜けるような音がポーンと。倍音もよく響きます。よくマーティンをひとたび握ったら、ほかのものには戻れないなんていいますが、まさにこのフィット感に尽きると」
創業184年の老舗だからこそ実現できる、優しいさわり心地。しかし、長きに渡って多くのアーティストから支持を集める理由は、最新のテクノロジーも取り入れ、常にアーティストをバックアップしてきたからだ。
「今日持ってきたものは、もう6年くらい使っています。当時は新しかったオーラピックアップというのがついているタイプです。マイクが拾った音をシュミレーションして、ギターの音に混ぜてくれるんですね。一番ギターが良く聞こえるのは、マイクで拾ったときで、それに近い音で変換してくれるシステムです。ライブでも非常に助かってますね。フォルム自体は長い歴史の中で改良を重ねて、完成されていると思います。ですが、こういったテクノロジーを取り入れているというのは、プレイヤーに寄り添ってくれている証拠。しっかりとプレイヤーの意見を取り込んでいるというのは強く感じますね。ギタービルダーのセンス、蓄積された歴史の賜物だと思います」
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