【連載|私の愛用品】Vol.1 山浦勇樹|アナログ&デジタルツールをバランス良く使い分ける理由
“アシスタントの心得”から購入したもの
2006年に伊勢丹に入社し、1年目に店頭でスタイリストを務め、翌年に商品担当になりました。先輩アシスタントバイヤーから“アシスタントバイヤー心得”の手ほどきをしてもらったときに、「手帳で自分を管理しなさい。そして自分の担当のすべてを答えられるように」と教わって、初めて手帳を持ちました。
見た人に「辞書みたいに厚いね」と必ず言われるシステム手帳は、当時のメンズ館1階にあったステーショナリーで売っていたイセタンメンズオリジナルのコードバンのものです。当時で4~5万円しましたね。
気に入ったポイントは2つあって、私たちファッションの商品担当の仕事は連続性がポイントで、前年や前期を見返すことが多いので、たくさんのファイルを収められる「リングの大きなもの」というのが一つ。そして、A4サイズの資料やコピーを半分に折って収納できる「クリアポケット」を付けられること。この手帳とはまさに「運命的な出会い」でした。
中身自体は、自己管理のためのデイリー/マンスリーのTO DOとメモ、クリアポケットですが、情報が多く入るものを探したので、購入して10年経ちますが良い投資だったと思います。大切なことは書いて覚えたいので、打ち合わせや会議には欠かせません。
私はスタイリストを1年、翌年にアシスタントバイヤー、そしてアシスタントマネージャー、マネージャーを経て、バイヤーは3年目を迎えます。バイヤーになって再びこの手帳を本格的に使うようになりました。展示会や出張を含めたスケジュール管理と、ブランドとのミーティングなど書き込む情報量が格段に増えたからです。
バイヤーになって新しい相棒となったsurface Pro
字を書いていて自分がしっくりくるので、手帳のようなアナログは手放せませんが、一方でバイヤーになってからはPCのsurface Proを持っていきます。これは3年前から使っていて、自宅ではMacを使っていますが、仕事はExcelがメインなので、使い勝手の良さを考えてsurfaceにしました。
このPCの役割は、「情報の集約」です。仕事の効率を上げるためにブランド情報をファイルにしてまとめていますが、ブランド毎のシーズンをまとめた資料が今、約160ブランドほど入っています。
商品をオーダーするためのデジタルツールの活用と、日々のスケジュールやヒント、アイデアなどを書き留めるためのアナログツールは、自分なりに上手いバランスで使い分けていると思っています。
バイヤーとしての信条は、楽しむ精神が反映した商品を揃えること
洋服を好きになったのは中学生のとき。リーバイスのデニムに憧れて、ヴィンテージレプリカを買って、自分なりに手を加えて穿いたりしていました。大学生のときには当時のメンズ館の雰囲気が好きで、1月2日の福袋に友人と並んだこともあります(笑)。メンズ館の存在に惹かれて、バイヤーになりたくて、縁あって入社しました。
現在はメンズ館4・5階を担当していますが、仕事の信念は入社当時と変わらず、「バイイングで驚かせたい」ということ。洋服は感性の部分が大きく左右しますが、メンズ館でしか買えないものがあって、来店されるたびにお客さまを驚かせたい。それが売れたらもっとうれしい。単純です(笑)。
バイヤーという仕事は、デザイナーやメーカー、クリエーターが熱を込めて作った「沸騰したお湯」を私が感じて、それを違う器=スタイリストに移して、さらに違う器=お客さまに移すこと。理想は、そのバトンのときに熱量を変えずに、さらに熱く伝えたい。
最近の自分のテーマは、「自分の熱量も試される」ですね。シャツ1枚にも熱量は変えずに仕事したい。何ごとも「楽しむこと」を信条としているので、それが商品に反映されて、お客さまに喜んでいただけると、バイヤー冥利に尽きます。