2024.12.04 update

【インタビュー】ル・コルビュジエに想いを馳せて識者が再構築! 「フォレスティエール 2.0」を考える。<オーベルジュ>×<國立外套店>|ISETAN STORY STORE

12.11 Wed -12.17 Tue
伊勢丹新宿店 本館6階 催物場

たいせつなあの人に、贈りたい。いつの日かわが子に、譲りたい。メンテナンスしながら永く使いたくなるような名品たちが揃うイベント『ISETAN STORY STORE』が、12月11日(水)〜12月15日(日)まで、伊勢丹新宿店 本館6階 催物場にて期間限定オープンします。

 

メンズ館の担当バイヤーが企画する肝入りのブースが集まる本イベント。そのなかでも注目したいのが、近年爆発的な人気を博すフレンチジャケットの名作「フォレスティエール」を目玉にした、<オーベルジュ>のデザイナー 小林 学氏と<國立外套店/ナショナルコートショップ>の代表 佐藤 閑氏によるポップアップです。建築家のル・コルビュジエが愛用したと言われる「フォレスティエール」の誕生の歴史を識者二人が紐解き、新たな解釈を加えて再構築した一着を受注販売します。二人が持つル・コルビュジエと「フォレスティエール」の愛に溢れた、渾身の一着をご紹介。

 

  1. 第一人者が語る「フォレスティエール」への想い
  2. 定説を覆す「フォレスティエール」の新事実とは?
  3. 「フォレスティエール」が名作と言われるその理由
  4. コルビュジエに想いを馳せて生まれた「フォレスティエール2.0」
  5. 『ISETAN STORY STORE』イベント情報はこちら

 

  • profile
     
小林 学
<オーベルジュ>デザイナー
1966年、神奈川県湘南生まれ。文化服装学院を卒業後にフランスへ渡り、多くのヴィンテージの服や雑貨に触れる。フランス生まれのブランド<シピー>のプランナーや岡山のデニム工場での企画生産等に携わるなど、様々な経験を経て1989年に自身のブランド<スロウガン>をスタート。その後、ヴィンテージウェアを再解釈し、永世定番を再定義し展開する<オーベルジュ>を立ち上げる。
Instagram:@auberge_official
佐藤 閑
<國立外套店>代表
1980年、東京都出身。大手通信会社勤務後、スタイリストのソニアパークのもとで従事。趣味であったヴィンテージウェアの収集が高じて、2021年より<國立外套店/ナショナルコートショップ>をスタート。実店舗を持たずに、不定期の販売会とオンラインストアをメインに活動する。
Instagram:@nationalcoatshop

 

第一人者が語る「フォレスティエール」への想い



 

希少なユーロヴィンテージウェアのバイイングと販売を手がける<國立外套店>の代表佐藤さんと、ワークやミリタリーなどを含むフレンチウェアに造形が深く、デザインから製法までフレンチヴィンテージを踏襲したモノづくりを行う<オーベルジュ>の小林さん。今回の『ISETAN STORY STORE』にて初めてタッグを組んだ二人が、なぜフレンチの名作ジャケット「フォレスティエール」をテーマに据えることにしたのか、その理由について二人は次のように語ります。

 

佐藤 閑氏(以下 佐藤)「今回このようなポップアップにお声がけいただき、コレクター気質で物作りとは一線を引いた立場でありたいので、お受けするべきか迷いました。そのときに小林さんをご紹介いただき、何しろ10代の頃から存じ上げている方ですので、とてもお断りするわけにはいきません(笑)。ヨーロッパのヴィンテージウェアや生産背景に詳しい小林さんとは、自身も知見がある『フォレスティエール』のことで自然と話が進みました」

 

小林 学氏(以下 小林)「『フォレスティエール』は近年のユーロヴィンテージウェアブームの流れに乗って、ここ数年で非常に人気になったアイテムですよね。日本でも知名度が高くファンが多い建築家、ル・コルビュジエがパリのソルボンヌ大学で教鞭をとるときに着る服として、<アルニス>にオーダーして作らせたことで生まれたと言われていました。そのストーリーにも引っ張られて今では古着市場でかなり高い価格がついています」

 

定説を覆す「フォレスティエール」の新事実とは?



 

佐藤「ただ実際よく調べてみると、コルビュジエがソルボンヌ大学で講師を務めたという記録が見つからないのです。フランスの図書館で古い文献も探しましたが、やはりコルビュジエの名前すら見つからない」

 

小林「実際に『フォレスティエール』を着ている写真もないんですよね。通称『コルビュジエジャケット』と呼ばれるダブルのレザーアウターを着ている写真の方は見つかるのですが……」

 

佐藤「そのエビデンスのなさに、私や小林さんのようなヴィンテージ愛好家は長年悩まされてきました。魅了されてきた、というほうが正しいかも知れませんね。近年になっていくつかのインタビューでコルビュジエの発案ではないという発言を見かけるようになりました。今更これを事実ととるかどうかは、難しいところです」

 

 

小林「これまでは、エビデンス無き伝説のジャケットという形で落ち着いていたんですけれどね。ただあまりにもストーリーとしてロマンがありすぎて、また形や雰囲気もコルビュジエがまさに好みそうなデザインなので、ここまで人気が高まったのではないでしょうか」

 

「フォレスティエール」が名作と言われるその理由

<アルニス>「フォレスティエール」ジャケット
ライター 山下 英介氏 私物
*参考商品

 

<アルニス>「フォレスティエール」ジャケット
<國立外套店>佐藤 閑氏 私物
*参考商品
<アルニス>「フォレスティエール」ジャケット
<國立外套店>佐藤 閑氏 私物
*参考商品

 

フレンチウェアの歴史的名作と言われる「フォレスティエール」ですが、実際にその魅力はどこにあるのでしょうか? その真価について、二人は次のように語ります。

 

佐藤「大きく開く襟は特徴的ですよね。ラペルがないのにボウタイをしても収まりがよい上品さがあります。コルビュジエだったらそのように着ていそうです。ただ、現代の生活習慣の着こなしにも非常に合います。カジュアルにリラックスして着られますが、きちんとした印象に見せられますからね。それに<アルニス>というブランドの格式高さも、ある程度年齢を重ねた方が着るには相応しいですよね。作りは至ってシンプルなのですが」

 

小林「フランスの服って基本的に芯地を入れず柔らかいんです。だからこそ着る人の”人”としての魅力が試されます。例えば英国の服なら構築的な服で誰でも羽織れば自然と紳士らしくなる。イタリアなら色気を感じさせる。そうではなくて、フランスの服は中の人間をどうくるむかという考えで作られていて、着る人を脚色するような服ではありません。まさに『フォレスティエール』もそのような服です。直線的で非常にシンプル。ただ、袖や丈など随所の生地の分量のバランスが秀逸で、このバランスでしか生まれない雰囲気というのはありますね」

 

 

小林「それになにより生地がとても良い。こちらのヴィンテージの『フォレスティエール』もしなやかで相当いいコットンを使っています」

 

佐藤「カシミヤやシルク、レザーを細部にでも惜しげもなく使う。素材には本当にこだわっていますよね。あとは、仕立てるまでの手数も非常に多いです。両玉縁のボタンホールになっている部分はまさにわかりやすい。それに背と袖の裏地にカシミヤを使うことが多いのですが、それが鮮やかな色になっているものが多いのも特徴です」

 

 

小林「こういう遊び心はパリっぽいですよね。ちょっと勇気がないと着られないというか。見頃のパッチポケットの端からも裏地がわざと少し見えるようにしていたりして。かなり手間のかかる作りだとは思いますが」

 

コルビュジエに想いを馳せて生まれた「フォレスティエール2.0」

<オーベルジュ>×<國立外套店> ジャケット 363,000円
*受注販売:お渡しは4月上旬以降

商品を見る

*三越伊勢丹オンラインストアでは12月11日(水) 午前10時00分頃より販売開始予定

 

このような「フォレスティエール」の個性を再現しつつ、実際にコルビュジエが着用していた「コルビュジエジャケット」のディテールと融合させて今回作ったのが本作。コルビュジエと「フォレスティエール」への二人の想いと独自の解釈が込められた、「フォレスティエール 2.0」と言えるような一着です。

 

小林「ベースになっているのはあくまで『フォレスティエール』。そのパターンシルエットを踏襲することで、『フォレスティエール』だけの雰囲気を崩さずに保っています。そして『コルビュジエジャケット』の仕様をアレンジで加えています。ダブル合わせのボタン付け部分に約3センチ幅のテープのディテールもそうですが、特にこだわったのはレザーです」

 

 

小林「元々『コルビュジエジャケット』と呼ばれる彼がアトリエなどで作業用にきていたジャケットは、フランスが国家公務員の為に支給していた作業着だったんです。成牛革で通称ラッカーと呼ばれる表面だけに塗料を吹き付けたレザーで作られていて、当時のコルビュジエが着ている写真をみても、革がおせんべいみたいにバリバリになっているんですよね。それをあえて、天然のカーフだけに生まれる横筋、いわゆる“トラ”で表現しています。さらに、裏地も実際の『コルビュジエジャケット』を参考に、あえておじさんっぽい前世代的なチェックを取り入れています。また、浮き出るようにちょっと捲れるパッチポケットは『フォレスティエール』のディテールを踏襲しています」

 

 

佐藤「私たちを魅了してきた『フォレスティエール』のムードを再現しつつ、実際にコルビュジエが着ていた『コルビュジエジャケット』の要素を取り入れて再構築。さまざまな議論も含めて、洋服の楽しみが凝縮された一着だと思います。そしてここから『フォレスティエール2.0』、新たな議論が始まります(笑)」

 

 

今まで答えがなかった「フォレスティエール」。今もなお多くの人々を魅了する「フォレスティエール」。識者二人が再構築した新たな「フォレスティエール」をご紹介しました。イベント当日には、<國立外套店>で取り扱うフレンチヴィンテージウェアも販売いたします。希少なヴィンテージウェアに袖を通し、ロマンに満ちた当時のフランスやヨーロッパの暮らしに想いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

 

『ISETAN STORY STORE』イベント情報はこちら

 

イベント情報
ISETAN STORY STORE

 

Photograph:Yusuke Iida
Text:Shinji Hashimoto

*価格はすべて、税込です。
*本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
*掲載文を一部修正しました。 12月4日

お問い合わせ
伊勢丹新宿店 メンズ館5階 メンズテーラードクロージング
電話03-3352-1111 大代表
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