【インタビュー】<FRONT 11201>が思い描くヴィンテージショップとは。楽天ファッション・ウィーク東京 出展の舞台裏に迫る。【伊勢丹新宿店】
- 09.18 Wed -09.24 Tue
- 伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズクリエーターズ
9月18日(水)~9月24日(火)の期間、大人気ヴィンテージショップ<FRONT 11201>のポップアップショップが、伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズクリエーターズに誕生する。同店をディレクションする西山育貴氏が語る、このイベントの見どころ、そして<FRONT 11201>の人気の秘密とは。
「FRONT GENERAL STORE」の立ち上げ、<FRONT 11201>オープンに至るまで
折からのブームで百花繚乱を極めるヴィンテージショップ界隈において、一際注目を集める人気店<FRONT 11201>をご存知だろうか。 2014年「FRONT GENERAL STORE」をニューヨーク・ブルックリンにオープンし、徐々に地元でも屈指の人気スポットへと成長していったヴィンテージショップ。その国内1号店として、東京・代々木上原に"逆輸入”オープンしたのが、<FRONT 11201>だ。
ヴィンテージアイテムの卓越したセレクトセンスはもちろん、オリジナルアパレル、ジュエリー、雑貨、書籍等を絶妙なバランス感覚で提案する商品展開に、通なヴィンテージマニアのみならず高感度なファッショニスタをも魅了するこのショップが、伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズクリエーターズに期間限定で“出現”するという。
先日開催された2025年春夏「RakutenFWT/楽天ファッション・ウィーク東京」では、ヴィンテージショップとして初のランウェイショーを発表し、大きな話題となった<FRONT 11201>。そのキーマンである西山育貴氏がIMNのインタビューに応え、<FRONT 11201>の魅力やイベントの見どころについて語ってくれた。
──まず、「FRONT GENERAL STORE」を立ち上げた経緯、そしてなぜアメリカ・ニューヨークのブルックリンというエリアを選んだのか、教えて下さい。
僕は幼少期からファッションに傾倒していたわけではなく、学校で絵を描く時間が好きな子どもでした。学生時代といえば、生活費を稼ぎながら仕送りまでしていたので、アルバイト漬けの日々を送っていました。晴れて専門学校を卒業した23歳のとき、現金5万円とスケッチブックをもって単身ニューヨークに渡ったんです。
現地ではアルバイトをしながら古着を買い付け、当時出会った仲間とともに「ブルックリンフリー」という週末限定のフリーマーケットで古着を販売していました。世界的なブルックリン人気の高まりとともにそのビジネスが軌道に乗ってきたので、平日にもバイヤーなどプロの方たち向けにホールセール(卸売)ができるショールームをオープンしたんです。小売店舗としての「FRONT GENERAL STORE」をオープンしたのは、その2年後ですね。
「FRONT GENERAL STORE」をブルックリンにオープンしたのは、創設メンバーである僕とパートナーの出会った場所が、たまたまニューヨークのブルックリンだったから。パンデミックさえなければ「逆輸入ヴィンテージショップ」という形態もなかったでしょうし、元々洋服をつくる方に興味があったので、ニューヨークで「FRONT GENERAL STORE」のオリジナルアイテムを細々と作り続けていたんじゃないかな、と思っています。
──それから日本に<FRONT 11201>をオープンされるわけですが、“逆輸入ヴィンテージショップ”という斬新な視点の店舗を運営する楽しさや苦労、他店と差別化するうえで意識している点などについても伺えますか?
日本で<FRONT 11201>をオープンしたのは、コロナ禍で「FRONT GENERAL STORE」の運営が先行き不透明になってしまい、そのサポートができる状況をつくりたいと考えたからです。代々木上原店、神山町店と自然な流れで複数店舗を出店していきましたが、どこかのタイミングで一か所に根を張りたいと思っていたので、既存のお客さまが通ってくれている代々木上原にほど近い、代々木八幡に集約させることにしたんです。
アメリカからの逆輸入のようなカタチで店舗を営業していてうれしいのは、お客さまが喜んでいるのを直接感じられること、スタッフがやりがいを感じてくれること、そして、微力ながらも社会貢献につながるかもしれないという希望をもてることです。逆に苦労したのは、やっぱりコロナ禍真っ只中にオープンした店舗だったので、大手を振って集客や販売をできなかったことですね。東京とニューヨークの客層や趣味趣向の違い、気候の違いなどを修正するのも大変でした。
他のヴィンテージショップと差別化しようとしていることは、特にないんです。ニューヨークで重ねた経験と見てきた景色を、どうやって東京にフィットさせるか──これが、嘘偽りのない“違い”になると考えています。
── 「FRONT GENERAL STORE」と <FRONT 11201>、それぞれのショップコンセプトやフィロソフィーには、違いがあるのでしょうか? また西山さんのヴィンテージのバイイングにおけるこだわりを教えて下さい。
「FRONT GENERAL STORE」と <FRONT 11201>はどちらも、ローカルに根差して、細く長く愛されるお店というものをコンセプトにしています。<FRONT 11201>は長く愛用していただけるものづくりを意識したオリジナルアイテムを展開しているので、古着をセレクトするときも、新しい服を一からつくるときも、常に「無駄を生み出さないこと」を心がけているんです。
<FRONT 11201>は他のヴィンテージショップとしては珍しい商品構成なので、比較対象となるお店がないということが、<FRONT 11201>のヴィンテージ市場におけるユニークさ、立ち位置となっていると思ってます。私たちが選んでいるヴィンテージアイテムは、言葉にできない“いい!”を感じさせるもの。そして、それぞれのアイテムの特性を踏まえたうえでの“状態”が良いことを必須としています。
──商品構成ということでいえば、<FRONT 11201>はヴィンテージ以外のオリジナルや雑貨などが充実しています。オリジナルにはどのようなこだわりがあるのでしょうか?
セレクトしている雑貨は、ニューヨークで取り扱っているブランドのもの、長く愛用いただけるものを選んでいます。ショップオリジナルのアイテムでこだわっているのは、ヴィンテージで提案したくても見つけることが困難になってしまったアイテムのなかでも、本当にお客さまにおすすめしたいと考えているもの。そしてこれからもずっと世の中に残していきたい、さまざまなカテゴリーのヴィンテージがもつ特別な生地感ですね。
素材に関していえば、避けることのできない“経年変化”のなかで自然と手元に残り続ける素材とでもいいますか……。残反などをクラッシュして一から糸をつくり直している素材を軸に、アンティークの素材を加工したもの、再生繊維などを駆使した素材のアイテムが、コレクションの中心になっています。
デザインやディテールは、歴史に証明された必要十分な機能をもつものに、細かなバランスの修正を加えたシンプルなものになっています。産地にこだわりは特にありませんが、日本国内でのものづくりは強く意識していますね。
楽天ファッション・ウィーク東京 出展を果たした2025年コレクションと本プロモーションにかける思い
──2024年秋冬シーズンのテーマや方向性についても、教えて下さい。
この秋冬のテーマというのは特に設定していませんが、10〜11月頃をめどに代々木八幡店の地下に、“街の小さな美術館”のようなギャラリースペースをオープンしたいと思っています。これにより、さらにローカルの方々や地域のコミュニティに根差したショップになっていけるんじゃないかと思っています。まだ展示の詳細についてはお答えできないのですが、ご期待いただきたいですね。
──先日行われた2025年春夏「楽天ファッション・ウィーク東京」でのランウェイショーも大好評だったとのことですが、どのような狙いで出展を決意されたのでしょうか?
正直にいえば、先方からオファーをいただいたのがきっかけです。ただ私たちのようなヴィンテージショップがランウェイショーを発表することはとても珍しいことだと思いますし、これからは持続可能なものづくりが強く求められる時代だと感じているので、そういうメッセージを“腹から声を出す”ように訴えられるのは、ヴィンテージショップならでは。大きな意義があると感じ、参加させていただきました。
これまでいいものを厳選してきたバイヤーが、あえて選ばれなかった(バイイングされなかった)洋服たちをもう一度拾い上げて、再生するということに意味がある。いいものを選りすぐるということは、その裏に膨大な選ばれなかった古着が存在するということですから……。昔から、この“選ばれなかった洋服たち”とどう向き合っていけばいいのかをずっと考えてきたので、今後もこの取り組みを継続的に発信していきたいと考えています。
ヴィンテージショップが持続可能な社会を意識しながら取り組むものづくりは、さまざまな面で力の及ばないことも多いかもしれません。しかし、私たちは“古着”というモノを扱う者としての、ある種の説得力をもつ立場であるとも思っているんです。多くの人の手に届くようにするためには、まず知っていただくことが大変重要。時代に淘汰されずに現存している、“いい!”と思えるモノを注視し続けてきたヴィンテージバイヤーだからこそ、世の中に枯渇している洋服、これから必要とされる洋服を創り出すことが、できるのではないかと思っています。
──今回のポップアップでは、どのようなことを表現し、お客さまやユーザーに向けて発信したいと考えていますか?
おかげさまでこのような機会を得ることができ、すべてではないものの、ランウェイショーで発表したアイテムをほぼタイムラグなくお見せすることができるのがうれしいですね。ショーで初お披露目したアイテムや、〈ヴィブラム〉とのコラボスニーカーなど、このポップアップで先行発売をする予定です。
併せて、今回の取り組みにおけるインスピレーション源になったヴィンテージアイテムや、<FRONT 11201>オリジナルの2024年秋冬コレクションのスウェットアイテム、某人気ブランドとのコラボスウェットなども登場する予定です。伊勢丹新宿店メンズ館6階には、素晴らしいブランドがたくさん揃っています。どのブランドにも寄り添える洋服を意識して、充実した内容にしたいと頑張っています。私自身もできるだけ店頭に立ちたいと思っているので、ぜひ足を運んでください。
希少な<TRUE VINTAGE>も展開!注目はデニムカバーオール
──最後に今回のポップアップで特に注目すべき、おすすめのアイテムを教えて下さい。
1930年代の一点物。要注目のデニムカバーオール
1930年代のデニムの色も残った希少なデニムカバーオール。
<フロント 11201>オリジナルアイテム、オンブレチェックシャツを逆配色パターンで展開
昨年伊勢丹新宿店のPOP-UPにて完売した「ORIGINAL OMBRE CHECK SHIRT」の新色。1950年代のオンブレチェックシャツの中でもトップクオリティの生地を表現し、何度もサンプル修正を繰り返し、工場や職人さんの協力の元、糸を一から染色し、理想的なオンブレチェックのパターンを制作しました。日本製のオリジナルの生地はしっとりとしながらもタフな素材感で、それぞれのワードローブに残るようなオンブレチェックシャツに仕上がりました。
不要になった残布やTシャツなどをクラッシュし、再構築したTシャツ
不要になった残布やTシャツなどをクラッシュして、もう一度糸にしたものを使用したTシャツです。ヴィンテージに触り慣れている方はこの独特な風合いに馴染みがあるかもしれません。
その他、希少な<TRUE VINTAGE>やアイウェア、ヴィンテージジュエリーも展開予定。
<FRONT 11201>の世界観が体感できる貴重な機会、是非店頭へ足を運んでみてはいかがだろうか。
- 開催期間:9
- 開催場所:伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズクリエーターズ
Text:Junya Hasegawa(America)
Photograph:Natsuko Okada(Studio Mug)
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