【Fun to Dress vol.7】 新任AB青島のはじめてのあつらえ|日本橋三越本店 パーソナルオーダーサロン
日本橋三越本店 パーソナルオーダーサロンのアシスタントバイヤー(AB)に着任したばかりの青島大樹が念願のコートをつくりました。「このサロンに立つわたしが吊るしの服でツンツルテン、というのはいかにもまずい。来年はいよいよ30(歳)。大台をまえに大人の仲間入りを果たすならいましかない」と考えた青島が先輩の宮地智也のアドバイスに従い、門を叩いたのはリッドテーラー。新任アシスタントバイヤーの、“はじめてのあつらえ”。
既製服よりオーダーを選ぶ理由
神田にある老舗の喫茶店、ショパンで青島と宮地がコーヒーを飲んでいる。どうやら近所の生地商での打ち合わせの帰りのようだ。冬の到来を感じさせる木枯らしで冷え切った体をあたためるべく、ふたりは馴染みの喫茶店に駆け込んだ――。青島:今日も良い商談ができましたね。
宮地:とかいいながら、青島はコートのほうばかりみていて気もそぞろだったじゃないか。
青島:バレました? 今日ようやく下ろすことができたもので。それにしても最高の1着ができあがりました。
宮地:うん、青島の身体に映えるコートだな。(身長は)何センチだっけ?
青島:188センチです。それでいて細い。既製服はほとんど合いませんでした。
宮地:着丈も短ければ股上も浅い。スーツに苦労していたのは知っていたけれど、コートもツンツルテンだったのか。
青島:ちゃんとしたコートで、となるとこれがなかなかないんです。流行りのオーバーサイズはあるんですよ。でもまさかそんなコートをテーラードのスーツに合わせるわけにはいきませんし。
宮地:たしかにそうだね。
初心者こそ、<リッドテーラー>を選びたい
青島:“はじめてのあつらえ”は宮地さんのアドバイスに従って(リッドテーラーの)根本さんにお願いしましたが、想像をはるかに超えて感動的でした。まずは熟練の職人ならではの手さばき。その手さばきをみているだけでうっとりしましたし、フィッティングの段階で早くも胸は高鳴りました。宮地:そうだろう。ぼくもいまだに時間を忘れて見惚れるからね(笑)。
青島:パーソナルオーダーサロンには凄腕のテーラーがずらりと揃います。わたしひとりではいつまで経っても決められなかったでしょう。背中を押してくれて感謝しています。
宮地:根本さんをすすめた理由は(たしかな腕前の)ほかにもあるんだよ。
青島:というと?
宮地:普段の私服を見ていて、トラディショナルな洋服が好きな事が分かっていたから“普遍”を追求する<リッドテーラー>が合うと思ったんだ。
もうひとつは根本さんが頼れる兄貴分であるということ。服を売って終わりではない関係性が築けるのはテーラーの醍醐味だけれど、損得抜きに親身になってくれる人なんだ。しかも根本さんの美意識は隅々にまで息づいている。車、音楽、インテリア……それこそライフスタイル全般に。西荻窪のアトリエには根本さんに心酔した若い人達が足繁く通っているのを知っているだろ? “はじめてのあつらえ”にこれ以上の適任はないと考えたわけだ。
<リッドテーラー>ならではのフィット感
青島:オーダーにあたっては「いよいよ30(歳)の大台に乗るので大人のコートが欲しいんです」とほとんど丸裸でぶつかりました。なんといっても“はじめてのあつらえ”ですから。宮地:賢明な選択だったね。経験がないならないで、根本さんはおんなじ目線で向き合ってくれるから。
青島:根本さんは大人が着るコートならダブルのチェスターだろうとその歴史を踏まえつつアドバイスしてくれました。無数にある選択肢から素人が選ぶのはおよそ不可能です。根本さんが主導してくれるのはたいへんありがたかった。そしてここが肝心なところですが、導いてくれるけれど、けして一方的ではないんです。ボタンやライニングといったディテールにいたるまでいくつかの選択肢を用意して、最後はわたしに選ばせてくれる。絶妙な案配でした。たしなめられる一幕もありましたけれど(笑)。
宮地:それはどんな?
青島:たっぷりと生地をとった重厚なシルエットをリクエストしたんですが、「やりすぎるとチェスターらしさが失われてしまう。クラシカルなチェスターは肩周りがきちんとフィットしなければならない」とおっしゃいました。
宮地:さすが根本さんだ。まずは基本を知ることが大切だからね。でもさ、ベースが(前合わせにゆとりのある)ダブルだから青島が望むドレープはしっかりあらわれているよ。(生地に触れて)このドレープは選んだ生地も貢献しているね。
青島:目付565グラムの国産生地です。目が詰まっていて、しなやかなでなめらか。ドレープの美しさはもちろん、(カシミヤなどを混紡していないウール100%なので)手入れに神経質にならずに済むところも気に入っています。
唯一のこだわりは王道のネイビーではなく、ブラウンを選んだところ。大人を意識するならブラウンだろうと考えて。根本さんも頷いてくれました。
宮地:肝心のフィット感はやっぱり申し分がないね。
青島:ぴたりと沿ったショルダーラインとウェストライン、そしてちょうど膝丈の着丈――これぞあつらえと感服いたしております。そうそう、採寸してもらってはじめて自分の肩が怒り肩であることがわかりました。考えてみればどんな上着もツキジワ(首の裏あたりに入る横一本のシワ。怒り肩は原因のひとつといわれる)が当たり前で、これも半ば諦めていた部分でした。このコートにはそういういやなシワは一本たりともありません。
ところで宮地さん。胸まわりはほんのわずかですが、余裕をもたせています。なぜだかわかりますか?
宮地:それはあれだろう、チェスターはカシミアのストールを垂らしてはじめて完成するからな。その分のスペースというわけだろ。
青島:お見それしました。
宮地:(まんざらでもない表情で)スーツもリッドテーラーだったね。
青島:はい。スーツとコートをまとめてつくったから、先日一気に引き落とされた口座の残高をみて真っ青になりました。
宮地:それはともかく(笑)、スーツも惚れ惚れするほどフィットしているね。ジャケットの第二ボタンとウエスマンがぴったり重なっているだろ。ここが離れていると間延びしてみえる。このバランスを知っちゃうと、これまでの服が着られなくなるんじゃないか。
青島:納品されて以来、スーツはほとんどこればかり着ています。いまあるワードローブの服はだいぶ減ると思います(笑)。
モダンさも感じられるコートはオフの日にも
宮地:グレイのストライプスーツにクレストタイ、サスペンダー、そしてタッセルスリップオン……。うん、着こなしもなかなかいいね。バーバー・メイドな髪型にぴったりだな。青島:ありがとうございます。
宮地:トラッドはガチガチに固めるとコスプレになりかねない。ミニマルを意識した着こなしもさることながら、見逃せないのがコートそのもののポテンシャルだ。ピークドラペルは象徴的だろう。ピークドらしい威厳をそなえつつ、ほどよくモダンなところに着地している。このさじ加減は根本さんならではだ。
青島:わたしもラペルには満足しています。とんがり過ぎていないから、カジュアルにも合わせられる。じつは宮地さんにみてもらおうと思って、オフ・バージョンももってきているんです。着てみてもいいですか。
(青島は宮地の返事も待たずにトイレへ駆け込んだ)
青島:お待たせしました。どうです。ニットにチノーズ、それにデザートブーツを合わせました。
宮地:(青島の勢いに押されつつ)テーラードをベースにしたスタイリングは奇を衒わなくても洒落てみえるのがポイント。お手本のような着こなしだね。
宮地:テーラードはすべての服の基本。このイロハさえ押さえておけば、いくらでも応用が利く。かくいう自分も入社した年からオーダーフロアを担当させてもらったおかげで服選びに悩むということがなくなった。青島もまだ遅くはない。これからじっくりと基本を学んでいけば理想的なワードローブが完成するよ。
これは繰り返しになるけれど、そういうワードローブをつくりたかったら根本さんのような兄貴分をみつけるのが早道だ。そして、信頼できるテーラーをみつけようと思えばパーソナルオーダーサロンはうってつけだ。主だったテーラーがずらりと揃うというのもあるけれど、気軽に彼らに出会える場だからだ。いきなりテーラーのアトリエっていうのはハードルが高いだろ?
青島:あれ、ちょっと宣伝が入りましたね。
宮地:(青島のツッコミを無視して)このコートは1ヶ月という納期も胸を張りたい部分。つまりこれからオーダーしても冬のうちに袖を通すことができるんだ。
しばらくはワードローブの構築に精進します
宮地:申し分のないコートが仕上がったし、この冬はぼくの分も外回りで汗を流してもらおうか。青島:残念ながらご意向に沿うことはできません。なぜなら今年こそ彼女を射止めて、シャンパンゴールドにきらめく街を並んで歩きたいからですっ。
宮地:クリスマスまで1ヶ月を切っているじゃないか。いまから探したってみつからないよ。彼女はしばらく諦めろ。自分に投資するいい機会と思って、まずは仕事とワードローブの構築をがんばろう。
青島:精進します……。
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Text:Kei Takegawa
Photograph:Tatsuya Ozawa
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