【対談】あの実力派ファッションブランド<フィグベル>が、「靴」だけで勝負する! 紳士靴の殿堂に革新をもたらす、シューズコレクション。
今秋も大盛況のうちに終了した「ISETAN靴博2021」だが、”靴のイセタン”というイメージも確立させた伊勢丹新宿店 メンズ館地下1階 紳士靴にて、11月17日(水)よりさらに”チャレンジング”なプロモーションを行う予定。このイベントでフォーカスされるのは、「ニュークラシック」をコンセプトに、クラシックかつ上質、そして普遍的なリアルクローズを提案するファッションブランド、<フィグベル>のシューズコレクションのみ。世界の高級靴を集積するこの売り場において、あえて「洋服屋」の靴を訴求する理由は何なのか──。<フィグベル>デザイナーの東野英樹氏、<フィグベル>プロダクション コントロール 黒河将吾氏、さらに仕掛け人でもある紳士靴バイヤーの宮下創太らによる鼎談から、彼らの狙いや見どころなどを探ってみよう。
「ニュークラシック」を掲げる、<フィグベル>とは?
宮下創太バイヤー(以下、宮下) 今回は、伊勢丹新宿店 メンズ館地下1階 紳士靴での<フィグベル>プロモーションに向けて、東野さんと黒河さんにお話を伺いたいと思い、中目黒のPROD tokyoさんにお邪魔させていただきました。唐突ではありますが、<フィグベル>というブランドについて、デザイナーである東野さんご自身からどんなブランドなのか教えていただけませんでしょうか?
東野英樹 フィグベル デザイナー(以下、東野) 自分は言葉で説明するのが苦手なんですが、わかりやすく「普段着のすごくいいヤツ」と答えるようにしていますね(笑)。ハレの服ではないけれど、普段着としてはいちばん上等というか……。大きく分ければデイリーウエアなんですが、キレイにもラフにも、どちらにでも対応できるブランドだと思っています。
宮下 オールドアメリカンなスタイルを踏襲していると思うんですが、品良くモダンに着ることができますよね。現代の東京でも取り入れやすい洗練されたバランスで、まさにブランドコンセプトの「ニュークラシック」を体現しているように感じます。僕自身、学生時代から着ている大好きなブランドなんですよ(笑)。
東野 ありがとうございます(笑)。確かにデザインのソースはアメリカがメインですが、実はいろいろな要素が混ざっているものが多いんです。僕は好みの方向性がバラバラで、古いものだけじゃなく新しめのアメリカも好きだし、ヨーロッパも好き。根底にアメリカンクラシックがあって、そこにヨーロッパのテイストやモダンさを加える感じでしょうか。この”ミックス感”は、常に意識していますね。
東野 それから僕がなにより大事にしているのが、”バランス”です。皆さんが良いな、カッコイイなと思う物って何となくバランスが取れているから自然と手に取る物が多いと思います。好みがあるので一概には言えませんが…シャツだったらポケットの位置だったり、素材のチョイスだったり、色の組み合わせだったりと。違和感のあるものは手に取られづらい気がします。でもモノとしてバランスの取れたものを、コーディネイトで崩したりするのは好きですね。
黒河将吾 プロダクション コントロール(以下、黒河) 僕は2015年に入社したのですが、それ以前は大阪のセレクトショップで<フィグベル>をバイイングする立場でした。高校生のときに地元の愛媛県松山市のセレクトショップで<フィグベル>を紹介され、初めて触れたのがダメージ加工のワーク系デニムジャケット。「これは手作業で加工してるから、一枚一枚表情が違うんだよ」と教えられ、「そんな洋服あるの!?」っていう大きな衝撃を受けて。それ以来、<フィグベル>のことが気になって、ユーザーとしてもっともっと知りたくなって……。大阪時代も、自分が着るのは<フィグベル>ばっかりでしたね。他の取り扱いブランドの服も、ちゃんと売ることを条件にお許しをいただいてました(笑)。
東野 いまは洗練されたデザインが主流ですが、ブランドを立ち上げた頃にはワークウエアにハマって、加工モノも多く展開していましたね。若いから自分がカッコいいと思ったものを掘り下げて、コレクションに反映するということをひたすら繰り返してました。売れるモノをつくろうとか考えたこともなかったし、なにが売れるのかもわかりませんでしたから(笑)。好きなモノしかつくらないというのは、昔もいまも変わりません。
黒河 周囲に着てる人間がいないというのも嬉しかったんですよね。松山のお店の方には、「その歳(高校生)で<フィグベル>着てるってヤバイよ」なんておだてられて、その気になってました(笑)。
東野 確かに<フィグベル>を着てくださっているのは、他人とカブらないのが好きな方が多いかもしれないですね。
デザイナー東野英樹の、ものづくりの背景
宮下 ところで東野さんって、<フィグベル>を立ち上げる前は何をやられてたんですか?
東野 19歳のころからおよそ6年間、”裏原”の<ヘクティク>(プロスケーター江川芳文、古着屋「ビンテージ・キング」のバイヤー真柄尚武が1994年にオープンした伝説的セレクトショップ)というお店で働いてました。<ヘクティク>のメンバーとは遊び場で知り合い、そのまま入り仕事も遊びの延長の様で楽しかったです。セレクトはもちろん、カルチャーを含めてすごいカッコよかったそのショップで、スタッフ、店長、新店舗のローンチ、最終的には洋服の企画までやらせてもらいました。
仕事は楽しかったのですが、会社もどんどん大きくなり人数も増え組織的に回さないといけなくなりいわゆるちゃんとした会社っぽくなってきていて、自分の思い描いていたスタイルとはズレを感じる様になっていました。
ブランドなのか、ショップなのかはわからないままに、”何か”を自分自身でやりたいと思うようになりました。最後は洋服作りに携わっていたので、そこで自分の理想をカタチにできれば、昔のような情熱や楽しさをまた味わうことができるんじゃいかと思って独立。<フィグベル>というオリジナルブランドを立ち上げた、というわけです。
宮下 25歳で独立ってすごいですよね。
東野 そんな大げさに考えていなくて、若かったから後先考えてなかっただけですね。なんとなくのノリで、自分でやっちゃおうと。ブランドを立ち上げて、それが失敗するかもという想像すらしていませんでした。冷静になって、「いま同じことがやれますか?」といわれると……考えちゃいますよね(笑)。色々知ってしまっているから。モノを知らないこその強さみたいなものは、確かにありました。
宮下 スケーター系の<ヘクティク>を経て、まったくスタイルの異なる”ニュークラシック”な<フィグベル>に辿り着いたというのがユニークですね。どういう理由なのでしょうか?
東野 それは当時からも言われていましたね。初めての展示会には<ヘクティク>でもお世話になっていたバイヤーさんをお呼びしてたんですが、皆さんビックリ(笑)。その意外性がいいとおっしゃってくださる方と、予想外すぎるということで取り引きなしに終わった方と。ちょうど半々ぐらいでした。というのも、辞めたとはいえ僕は<ヘクティク>のことが大好きだったので、せっかく独立するからには<ヘクティク>っぽいことをやる意味も必要もないと思っていました。だから、まったく違う切り口でいこうと考えたんです。
東野 じゃあどうしようと考えて、自分のファッションのルーツであるアメリカ古着に立ち返ることにしました。実は遠い親戚にあたる方が地元の秋田で古着屋を営んでいて、ファッションに目覚めた高校生の頃は、そこに入り浸っていました。古着からファッションに入った自分だからこそ、強い初期衝動を与えてくれた旧き良きアメリカンクラシックを追求しようと決めたんです。
<ヘクティク>はスケーター、ヴィンテージ、ヒップホップやハイファッションなど、異なるスタイルやカルチャーをミックスした世界観が先進的で、面白かった。アメリカンクラシックに”何か”をミックスするという”フィグベル”のスタイルは、必然的なものだったのかもしれませんね。
画期的イベントが伊勢丹メンズで開催されるにいたったワケ
黒河 僕らとしては当初、直営店のPRODには東京店と金沢店があり、全国にお取り引き先をもつなかで、伊勢丹とお付き合いするということはまったく想定していませんでした。<フィグベル>はある意味ニッチなブランドなので、伊勢丹のようなメジャーなショップとは対極的な位置にあると思っていましたから(笑)。
でもプライベートで宮下さんの先輩バイヤーさんと知り合うきっかけがあり、感覚的にとても共感できる部分があった。だから、「いつか何かでご一緒できるといいな」とは思っていたんです。でも、やっぱり洋服をご紹介するというイメージはなく……(笑)。じゃあ、靴はどうだろう、と。
宮下 しつこいですが(笑)、僕自身は学生の頃から洋服もカルチャーもアメリカンクラシックなものが好きで、<フィグベル>が大好きでした。それでも、6階メンズコンテンポラリーの担当として<フィグベル>というブランドを見ていたときは、伊勢丹のお客さまにご紹介するには少しカルチャーの色が強すぎるとも感じていた。だから、あえてお取り引きをお願いしてこなかったという背景があります。だから<フィグベル>の服ではなく、靴のみにフォーカスするというのは、目からウロコのアイデアでした。
黒河 常々東野とは、「靴もどこかでしっかり紹介したいね」と話していました。洋服だけじゃなく靴もいいんだぞ、と訴求できる場を探していたんです。そこで伊勢丹メンズに、”靴”のみの企画を打診させていただきました。
宮下 先輩バイヤーから「<フィグベル>さんが靴を打ち出したいと考えている」と聞いて、文字通り飛んで来ました(笑)。そのシューズコレクションを改めて見てみると、生産背景にものすごくこだわっていたり、ラストをオリジナルで制作したり。靴そのものへの情熱が、ヒシヒシと感じられる素晴らしいものでした。シーズンごとのコレクションに則したモデルだけでなく、定番モノをちゃんと展開しているのにも魅力を感じました。
それに、洋服の売り場で一緒に靴を購入されるような方ではなく、靴の売り場、しかも<ジョンロブ>や<チャーチ>、<オールデン>などの本格靴ばかりを展開する靴売り場で、”何かいいモノ”を求めていらっしゃる目の肥えたお客さまに<フィグベル>の靴がどう映るのか、個人的にすごく気になったんです。
宮下 トータルファッションブランドから”靴”だけを切り出してご紹介するというのは、<フィグベル>さんとしても、伊勢丹メンズの紳士靴としても初めての試みです。しかし「今後に向けた効果測定を行うという意味においても、伊勢丹メンズ以上の売り場はない!」と、猛烈にアピールさせていただきました(笑)。それこそ”こだわりの靴ブランド”は、山ほどあります。でも<フィグベル>の靴は、なんだかバランスがすごくいい。靴ブランドでは表現できない、ファッションブランドならではの”雰囲気”があると思うんです。
<フィグベル>独自の、靴へのこだわり
東野 それはウチの靴が、靴としては”不格好”だからじゃないですかね(笑)。靴専門のデザイナーさんだったら、多分このバランスで靴を作らない。ずっとお任せしている職人さんにも何度も指摘されたんですが、なんかズレてるっぽいです(笑)。
僕は靴デザイナーではないので、靴作りのセオリーを知らないがゆえの、自由なリクエストをいろいろ出してしまいます。羽根の位置を動かしたいとお願いすると、「足に当たって痛いですよ」とか「バランス悪いですよ」と言われることも。一枚革の靴を作ったときには、「切り替えを入れたほうがいい」「こうすれば革の取り都合が良くなる」などのアドバイスをもらったり……。それはすべて靴職人として良かれと思って言ってくれているので、受け入れて変更することもありますが、絶対に譲れないことも多いんです。一枚革であることへのこだわりや、自分にとっての最善のバランスのために。お付き合いが長い職人さんなのでそれも理解してくれて、そのおかげで、「意外とやってみたらできるじゃん」という風に生まれたモデルが、これまでもたくさんありました。
東野 世の中には、”すごい”洋服なんていくらでもあります。斬新なデザインやアイデアの面白い靴も、靴ブランドさんがどんどん発表している。だから服でも靴でも、新しい物をデザインしたいと言う意識は僕には少なく、どちらかと言えば編集作業に近い様な気がします。自分が本当に好きなもの、昔からある良いものをどう自分なりに消化して、自分らしく、<フィグベル>らしく表現できるかにこだわっています。
宮下 数ある<フィグベル>の靴のなかでも、唯一の定番モデルである「SERVICE SHOES」は、まさに”昔からある良いもの”がベースですね。
東野 根底にあるのは、やっぱりヴィンテージ。でも、オリジナルであるアメリカ海軍支給のサービスシューズは、好きでも痛くて履けないんですよ(笑)。アメリカ人用の木型だから、僕みたいな典型的日本人の足には合わない。履きたいけど履けないサービスシューズを、自分の足にあった木型で作り直したのが、この「SERVICE SHOES」です。
宮下 オリジナルに比べて、ラストのバランスが違っているようですね。
東野 アメリカンクラシックなナローシルエットのプレーントゥだけど、フィット感が良く履きやすいというのがポイントです。それこそカタチだけのカッコよさを追求しようと思ったら、もっといろんなことができると思う。でもそれをやっちゃうと、履いたときのバランスが崩れてしまいますから。2012年春夏のコレクション向けに初めて制作したのですが、いつでも、どんな人でも履けるデザインなので、定番化を目指してその後約2年を掛け何度もアップデート。木型、縫製、全体のバランス、シューレースなどの改善を繰り返し、14年春夏に”完成”したのが現在のモデルです。最初は羽根の位置がいまとは全然違いましたし、木型はさらに細身に、立体的になりました。でも、やっぱり”完成”ってないんだなと思いますね。変更したい部分が、少しずつ出てきてしまう。こればっかりは、一生終わんないんだろうなって(笑)。
宮下 作っているのは、国内の工場さんですよね?
東野 実は革靴の1作目は、業界でも有名な工場にお願いしていました。そこは確かに”手が良く”、卒なくキレイにまとまっているような気がして、自分の理想とは少し違うかも、と感じていたんです。そんなときに出会ったのが、埼玉のとある工場。僕よりも若いメンバーと一緒に作り上げている感覚があって、すごく良かったんですね。
でも、その工場が経営難から生産途中で閉鎖されることになってしまい、木型も部材もなにもかも持ち出せなくなってしまいました。それをどうにか回収してくれて、生産するところまでもっていってくれたのが、その工場の<フィグベル>の担当者の方々でした。
急遽そのメンバーで集まって浅草に小さな物件を借り、中古の機械を入れ生産を再開。彼らもそれまでの仕事がなくなってしまった状況になり、だったらウチの仕事を引き続き宜しくお願いしますと!それ以来ずっと、10年以上そのメンバーが<フィグベル>の靴を作ってくれているんです。
定番、継続、シーズナル、さらには先行別注モデルまで
黒河 今回、「SERVICE SHOES」とともにオススメしたいのが、「AVIATOR ZIP BOOTS」です。このブーツは18年秋冬にムートン素材で初登場。でも「暖かすぎて、冬しか履けないのは残念すぎる」というお声をいただき、翌19年秋冬からムートン無しのヌバック、20年秋冬からホースレザー、そして21年秋冬からボックスカーフが、アッパー素材のラインナップに追加されました。ちなみに女性のお客さまからのラブコールを受けて昨年からウイメンズサイズも展開しており、人気は「SERVICE SHOES」に負けず劣らず。ブランドの”顔”となりつつあるモデルなんです。
東野 これは昔のアウトドアブーツやアビエイターブーツをイメージし、履きやすさと防寒性にこだわって作ったモデル。一見シャープな靴なのに、ムートンをまとうことってできないものかと追求して生まれました。僕はムートンブーツにありがちな、あのボリューム感がすごく嫌いなんですよ(笑)。これを履いていたら、まずムートンブーツって思われないですからね。そこから季節も関係なく履き回しやすいレザータイプのものが派生して、男性だけじゃなく女性にも気に入って履いていただけるようになったのは嬉しいですね。
黒河 定番モデルの「SERVICE SHOES」と継続モデルの「AVIATOR ZIP BOOTS」に加え、シーズナルなものや過去のアーカイブをご用意して紹介できればなと思っています。
東野 これまで製作してきた靴は20型以上になると思うのですが、ウチはファッションブランドっぽくないとも言われるくらい、靴のバリエーションが豊富。最初はそんなに多く作るつもりじゃなかったのですが、シーズンごとのテーマに合わせて「今季はこんなワークブーツあったらカッコいいな」とかやってるうちに、あれよあれよという間に増えてしまいました(笑)。
宮下 さらに今回のイベントでは、伊勢丹メンズ先行販売の「SIDE-GORE BOOTS」も一緒に作らせていただいてたので、ご期待いただきたいです。
なぜサイドゴアブーツでお願いしたかというと、今年から市場ではサイドゴアブーツの需要がどんどん高まっているんです。スニーカーブームの”本当の”終焉が見えてきたのか、スニーカーばかり履いていた方たちが、いざ革靴を履こうとなると、サイドゴアブーツというのはストリート感があって脱ぎ履きもしやすいので、必ず選択肢にあがってくる。実際、今年はサイドゴアを軸に、革靴がとても売れているという背景があります。冬の時代が本当に長かったですけどね(笑)。<フィグベル>でもすでに、さまざまな素材で展開しているサイドゴアブーツですので、特別感のあるホーウィン社製シェルコードバンでお願いしたいというのが最初のプランでした。
東野 しかしながらコードバンは繊細なので、サイドゴアブーツの肝であるクリンピング(甲革部分の癖付け)に耐えられない。そこで思いついたのが、ワインハイマー社のボックスカーフでした。
宮下 あのドイツの名門タンナー、カールフロイデンベルグ社から”本家本元”のボックスカーフの製法を受け継いだという、ワインハイマー社ですね?
東野 広くボックスカーフと呼ばれるもののなかでもやっぱり特別で、黒は黒でも他の黒と色味が全然違うんですよ。ちょっと深みがあって、インダストリアルというか、ドイツっぽいというか(笑)。でもウチのインライン向けとしてはドレッシーすぎるし、ちょっと高価すぎるんですよね……絶対にカッコいいと思ってましたけど。「SIDE-GORE BOOTS」は木型自体が無骨でドレッシーではないので、そのアッパーに載せたら逆に、いい”バランス”になるだろうな、と。
ワインハイマー社って規模は小さいですが、仕上げ磨きの詳細まで全部決まっているすごいタンナー。この革なら何分バフを掛ければこのツヤが出るっていうレシピが、彼らから送られてくるんです。
宮下 伊勢丹メンズのお客さまであれば、たとえ<フィグベル>が初見のブランドであっても、その価格以上の価値を感じていただけるはずです。
東野 コバの仕上げなんかも、18年秋冬から継続的に展開しているインラインのものとはまったく違います。僕個人は好きな仕上げなんですが、いつもの工場では対応しきれないくらい面倒なことをやっていますね。数量も限られるからこそ、普段やらないやり方を特別に。フィニッシュだけ別の工場にお願いするかたちで進めようと思っています。ソールにもドイツのレンデンバッハ社製オークバークソールベンズ(オーク樹皮から抽出されたタンニン鞣しのソール専用レザー)を使用していて、伊勢丹メンズのお客さまの上品なイメージと、<フィグベル>のクラシックなスタイルが融合したドレッシーかつデイリーな1足になると思います。
宮下 サイドゴアを探されているお客さまは多いと思うので、このワインハイマーのボックスカーフに加えてもうひとつ、ホーウィン社のラフアウトレザー(裏革)でも別注をお願いすることにしました。
東野 ラフアウトレザーはウチの靴によく使われている素材なのですが、サイドゴアブーツに載せるのは初めて。こちらもいつもとは違った見え方になりそうで、楽しみにしています。経年変化も楽しめるタフな素材なので、ソールにはハルボロ・ラバー社製のダイナイトソールを合わせました。どちらもブラック1色のみ。同じブラックのサイドゴアでありながら印象がまったく異なる、それでいてそれぞれが最高のバランスに仕上がるはずです。
カルチャーのある靴との”対話”で広がる世界
宮下 最後に、このイベントに向けて、率直ないまのお気持ちを教えていただけますか?
東野 靴のみではありますが、伊勢丹のお客さまに初めて<フィグベル>というブランドに触れていただける機会です。ファッションブランドの靴を靴の売り場でご紹介したとき、いい靴を知り尽くしたお客さまにどのように評価していただけるのかが、いまから非常に楽しみですね。
黒河 海外高級ブランドのものとは少し毛色が違う靴なので、「ちょっと覗いてみようかな」くらいの軽い気持ちでお立ち寄りいただきたいです。ご試着によって、きっとデザインだけでなく履き心地の良さにも満足いただけると思いますので。靴をきっかけに<フィグベル>というブランドや洋服のコレクション、そしてこのPROD tokyoにも興味をもっていただければ、なおうれしいです。
宮下 僕はこのイベントが、靴専業ブランドの目指す”いい靴”と、カルチャー的背景のあるファッションブランドの目指す”いい靴”との違いを、お客さまに感じていただけるチャンスだと捉えているんです。だから、ただ靴をお見せするのではなく、<フィグベル>の文化や価値観、テーマなどを含めてご紹介したい。ブランドの背景まで理解したうえで商品を購入するという行為は、お客さまにとっての新しいショッピングスタイルになりえると思います。
「そういうテーマがある靴なら、どうやってコーディネートに取り入れようか」──ブランドのカルチャー面に興味をもつことによって、私たちはこれまでとは違う新しい靴との”対話”ができる。それが、靴というアイテムそのものの奥行きにつながっていく。靴というアイテムには、さまざまな楽しみ方があるということを多くの方に知ってもらえれば、と思っています。
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Text:Junya Hasegawa
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伊勢丹新宿店 メンズ館地下1階 紳士靴
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