名作と呼ばれる数々のモデルを誕生させた<ジェイエムウエストン>とは、どんなブランドなのか、ここからはブランドの歴史を紐解きながらその魅力を解説します。



2.ヒストリー編|<ジェイエムウエストン>が歩んできた歴史

1891年、エドゥアール・ブランシャール氏によってフランス リモージュ地方に靴工場を創業。ほどなくして加わった息子ユージェーヌが、アメリカ靴の近代的な製造方法に注目し、ボストン近郊のウエストンでグッドイヤーウェルト製法を学びました。この地にちなみブランド名を<ジェイエムウエストン>と名付けられました。

1922年にクルセル大通りにパリ1号店をオープン以降は、大きく展開を広げつつ、国内はもちろん世界でも人気を博すブランドの1つとなっていきました。

フランスの歴史とともに歩んできた<ジェイエムウエストン>
1944年第二次世界大戦中のシャンゼリゼ通りでパリ解放を祝う市民たちの写真には<ジェイエムウエストン>のお店が写り込んでいる。(Photo:Robert Capa)


何よりもブランドが大きく飛躍したのは、1946年に誕生したブランドのアイコンとなる「#180 シグニチャーローファー」の存在です。1962年にはシャンゼリゼ大通りのドラッグストアにたむろする「Bande du Drugstore(ドラッグストアのギャング)」と呼ばれる若者達の”ジーンズにローファーを履く”スタイルのマストアイテムとなったことから、その世代の象徴としての地位を確立、現在もフランスの財産として歴史に深く刻まれています。

受け継がれるタイムレスな「フレンチエレガンス」


<ジェイエムウエストン>のシューズの特徴は、130年受け継いできた「フレンチ・エレガンス」にあります。クラシックスタイルに対照的な要素を掛け合わせる事で生まれるこのパリジャンヌのスタイルは、時代を経ても色あせる事のないタイムレスなモデルの誕生へと繋がっています。

創業から続くリモージュ工場の優れた職人技や、快適な歩行への研究を守りながら、今もなお、モデルチェンジを繰り返し進化を続けています。


豊かな表現活動を通じて進化し続ける<ジェイエムウエストン>

*アーティスティック・イメージ & カルチャー ディレクターのオリヴィエ・サイヤール氏


2018年、アーティスティック・イメージ & カルチャー ディレクターに就任した、オリヴィエ・サイヤール氏は、ガリエラ宮パリ市立モード美術館の元館長で、世界的なキュレーターとしての多くの展示会を手掛けた人物。日本文化への関心も高く、<イッセイ ミヤケ>、<ヨウジヤマモト>、<コム デ ギャルソン>といった日本ブランドから感銘を受けて、様々な表現活動を行ってきた経歴をもっています。

就任後は、プロダクツに加えブランド全体の世界観を担っており、今後のウエストン取組みも見逃せません。



3.プロダクト編|受け継がれるモノづくりへのこだわり

<ジェイエムウエストン>は、自社のタンナーを持つ唯一のシューメーカーです。そこでは数百年前と変わらない伝統的な技術とベジタブル・タンニンの製法が守り続けられ、熟練された職人の手によって最高の革が作られています。アッパーだけではない、レザーソールにも自社で鞣された上質な素材を使用しています。


創業から続くフランス・リモージュ地方の自社工場では、日々200名の職人が伝統を受け継ぎながら最新の機械を取り入れた靴作りを行っています。1足の靴を製作するのに、皮革の裁断、アッパーの縫合、組み立て、ツヤ出しなどの150の工程を、約2か月の歳月をかけて手作業で行っています。


クラフツマンシップと歴史から受け継がれた伝統技術が最高基準の製造技術を生み出し、ひとつひとつの技術の結晶がブランドを支えている。機械的な速さを求めず、希少な職人技を大切にすることが、手作業を続けていく理由でありブランドの魅力となっているのです。