Vol.22 〈TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.〉× KOSUKE ICHIKAWA | 儚い記憶の断片を絵画に仕立てる(1/2)
伊勢丹新宿店メンズ館2階 メンズクリエーターズにて、現代美術家・市川孝典氏を迎え、人気ブランド〈TAKAHIROMIYASHITATheSoloist./タカヒロミヤシタ ザ ソロイスト.〉とのコラボポップアップ「11:11(イレブンイレブン)」を、10月14日(水)より開催。
2020年秋冬コレクションで両者が共作したことで、今回の企画が実現。市川氏が表現する、線香の微かな火を使って仕立てる作品は、アート業界のみならずファッション関係者やミュージシャン、俳優など様々なフィールドで活躍する人から注目を集めている。
今回は市川氏のアーティストになるまでの経緯や、〈タカヒロミヤシタ ザ ソロイスト.〉のデザイナー、宮下貴裕氏との出会い、さらに今回の展示に対する思いについて語っていただきました。
「11:11(イレブンイレブン)」
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作品作りの根源は、朧げで消え入りそうな記憶の断片を
ものに定着させることで安心に変える行為
――市川さんとアートとの出会いは子どもの頃に遡る。
小学生の時にリチャード・プリンスの作品集を見て、自由で自分勝手につくっているように見えたのですが、実はルールに忠実に従っていることを知りました。その時それが何か、人を食ったような、大人を小馬鹿にしたような感じがして、子供心にとてもカッコ良く感じました。そして僕でも出来そうと勘違いをしたことで興味を持ちました。
――子どもの頃にそういう体験をしながら、しばらくはアートから離れた生活を送っていたという。
その後16歳くらいまで絵も描いていませんでした。その間は音楽をやったり、色んな表現方法を模索していました。というのも、絵でも音楽でもアウトプットの仕方は変わっていっても創りたい内容は全て同じで、それは、記憶と時間でした。例えば、街の匂いや、その日の湿度、人の体温、耳にした音楽、そのようなことがきっかけになってふと思い出す何気ない日常の記憶を壊さないように大切に作品に仕立てていきます。
――そんな記憶の破片が気になる気持ちは幼少期に芽生えた。
自分の都合で一つの場所に長い間定住することが難しくて、短期間だけ住んで移動をするという生活を送っていて、幼い頃から変化することに対して恐怖と諦めがありました。そのなかでとにかく自分に安心を与えたいというのが、根本的な作品を創ることの始まりです。今は、焦げ跡や塗り重ねた色層を削り出す作品が頭の中のイメージに一番近いので発表をしているだけで、頭の中にあるイメージに近づけるために常に模索し、色んな素材を試しています。技術を磨くというよりも、どれだけ簡単に自分の頭の中にあるイメージに近づけるか、そして壊れそうな記憶の断片を”もの”にして安心に変えるという作業の連続です。その記憶は、僕にとって何の意味ののないものであっても変化したり失うことへの恐怖を安心に変えたいんです。
NEXT>>宮下さんと仕事ができることはとても嬉しい出来事でした。
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