物事に影響されやすい、飽きっぽい性格――――
柴田 どういう学生時代を過ごされましたか。
山下 ファッションのことしか頭にない時代だったような気がしますね。渋カジに始まって、きれいめカジュアル、フェミ男、モッズやフィフティーズなど、その時に流行ったファッションに影響を受けて、気持ちと着こなしはどんどん変わっていきました。自分は、ファッションからカルチャーを深掘りするタイプで、たとえばモッズファッションに興味が湧くと、モッズが聴く音楽を辿っていって、バンドにハマったり。でも、ファッションに興味がなくなったら音楽の興味も失せるんです。物事に影響されやすい、飽きっぽいたちなんですよ。
柴田 洋服を作る方には興味はなかったのですか?
山下 興味はちょっとだけありましたが、自分は「このスタイル」と決められない性格なのは自覚していたので、アパレル会社に入ったとしても、すぐ気持ちが変わるから長続きしないだろうと……。飽きっぽいから雑誌に進んだというのはあります。
柴田 なるほど…。お話を聞いていると、洋服作りより雑誌作り進まれたというのはすごくしっくりしてきました。
山下 自分の装いはコスプレに近い感覚なんですね。たまたま自分の興味の対象が「ファッション」というものだっただけで、気持ちの有り様は秋葉原にいるようなオタクと変わらないというか、自分が憧れているファッションやスタイルをすぐ真似てしまう。その感覚はずっと同じですね、今もまったく変わらないです。
柴田 たとえば……
山下 ウディ・アレンに憧れたら、それまで穿いていたモッズ風の細いズボンには見向きもしなくなって、ツータックのチノパンにツイードジャケット、ボタンダウンシャツを着るとか、竹中直人の映画を見たらコム デ ギャルソンとヨウジ ヤマモトにハマるとか(笑)。
一つのスタイルを極める前に気持ちが次に移っていくので、よくいえばマニアック、「マニアック界の超ミーハー」という感覚がありますね。
柴田 完全に突き詰める前に興味が失せてしまう……。山下さんにはそんなイメージはないですけどね。結構突き詰めてるように外からは見えてますよ。
山下 気持ちはコスプレですが(笑)、こういう仕事をしているので、「今影響されているスタイルを今あるモノでどういう風に着こなすか」をずっと考えている気がしますね。雑誌の仕事をしていなかったら、全身古着になっているんだろうと思います。