2019.05.27 update

【Amvaiコラボ企画】名著から紐解く達人のファッション考vol.3|山下裕文が「本物を知る」きっかけになった83年の雑誌(1/3)

「無難」でも「どうでもいい」でもなく、「ちょうどいい」アイテムを探し、発信する男性向けファッションメディアサイト「Amvai」で異彩を放つのが、こだわりを持ち、あらゆるモノを知り尽くしているAMVAR=メンバーたち。そのAmvaiとイセタンメンズネットのコラボ企画として、メンズ館7階=メンズオーセンティックで扱っている3ブランド=3人のデザイナーにインタビューを敢行。テーマは、「名著から紐解く達人のファッション考」。なぜその本が刺さったのかという答えから、デザイナーたちの現在・過去・未来を紐解く。

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【Amvai×徒然なるモノ語り】名著から紐解く達人のファッション考



<MOJITO/モヒート>
デザイナーの山下裕文さんは、1968年熊本生まれ。東京の服飾専門学校を卒業後、スタイリストアシスタントを経て、原宿の伝説的ショップ「PROPELLER(プロペラ)」にアルバイトとして入社。その後、2005年に独立し、2010年に自身のブランド<モヒート>を立ち上げた。
「アメリカの好きなところはダイナミックさとアレンジの面白さ。英国のラグビーがアメリカンフットボールになり、バイクレースはモトクロスになるなど、アレンジの仕方も上手い。アメリカの風俗を含めてカルチャーに惹きつけられます」と語る。


ややこしい服には必ずメッセージがあります


柴田 名著から紐解く達人のファッション考、3人目のファッション賢者は、アメリカの小説家 ヘミングウェイの伝道師でもある山下裕文さんです。
<KENNETH FIELD>の草野健一さんはインドの旅から、<AUBERGE>の小林 学さんは戦後から70年代と現在までのファッションの大きな流れからの本を選んでいただきましたが、山下さんにも今の山下さんの頭の中身の根っこの部分を紹介していただきます。

山下さんの服は草野さんからご紹介いただいて取り扱いがスタートしました。初めて伺った展示会でリッツジャケットを見せてもらったとき、『ヘミングウェイがパリのリッツホテルのバーカウンターに佇んでいる姿が、このダーツに込められている』と説明されて、得も言われぬ感動を覚えて発注したことを今でも覚えています。

デザインに世界観を付加することで、オリジナルストーリーができていくのがとても面白い。7階で扱っているブランドは、日本で指折りのややこしいモノが多いと思いますが、デザイナーのお人柄も含め、<モヒート>はそのややこしや代表格です(笑)。
そんな山下さんが持参してくれたのは1983年の雑誌『ポパイ』2冊です。


DCブランド全盛期。ここからすべてが始まっている


山下 柴田さんから声をかけていただいて、持って来たのは1983年9月25日号『秋の「男前」特集 ポパイのファッション役立ちファイル』と、同年12月25日号『女のコといっしょに暮したい』の2冊。15歳だった自分にとって83年はすごい年で、今の自分の“背骨”になっています。

柴田 あ、山下さんも2冊構成ですか(笑)Amverさんって皆本当に根っこがつながってる!
小林さんも2冊構成でした(笑)

山下 自分は15歳の時に「将来は洋服で飯を食おう!」と決めていたので、いろんな情報を収集しようと頑張っていた時期で、まさにDCブランド全盛期。発売から1、2日遅れで熊本に届いたポパイを貪るように読み、この2冊のポパイが「本物を知る」きっかけになりました。

子どもの頃から洋服が好きで、自分なりにリフォームしたり、ベルトに彫刻刀でカービングのように彫ってみたり、ちょっとずつこだわったことをしていました。また、熊本市内のブティック「Blaze(ブレイズ)」や出身地の天草でDCブランドの服を買っていましたね。


山下 12月25日号のファッションページを初めて見たときのことは今も鮮明です。ジージャンのボタンを全部留めている、デニムをピッタリ穿いて後ろからトランクスがちょっと出ている、デッキジャケットの中にネルシャツを着て白のTシャツが少しのぞく、ハンティングモチーフの千鳥格子ジャケットの上にベスト着て、ダンガリーシャツにネクタイ、カーゴパンツを穿くというどれも刺激が強すぎて、食い入るように見ていました。

そして、男服の原点に「ユニフォーム」があることに気づかされました。着こなしはもちろん、デニムや軍モノなどアイテムのキャプションまで熟読していましたが、自分が興味を持っていたDCブランドや好きなデザイナーの作品を見ると全部ここに繋がっている。ポパイのページによってアメリカにどんどん惹かれていき、<モヒート>の立ち上げにも繋がっていきます。

柴田 やはり原点はそこなんですね。ワーク・ミリタリー・ユニフォーム・・・・
私たちの7階の基本コンセプトに本当に合致する。