Vol.2 海前ブラザーズ | 兄弟の絆が広める、幸せなアートの輪(1/2)
一大リモデルを敢行したばかりの伊勢丹新宿店メンズ館において、早くも話題のギャラリースペース、「ART UP(アートアップ)」。3月27日(水)からフィーチャーされる2組目のアーティストは、iPhoneケースにペイントを施した“持ち運べるアートピース”を提案する海前ブラザーズ。実の兄弟ユニットであるふたりを千葉県松戸市のアトリエに訪ね、話を訊いた。
もっと身近にアートを増やし、多くの人を幸せにしたい
世界NO.1のメンズファッションストアを目指し、15年ぶりの大胆なリモデルを完遂した、伊勢丹新宿店メンズ館。時代を切り拓く最先端の「クリエーション」を提案するメンズ館2階=メンズクリエーターズは、“カルチャー”“アート”“スピリット”というテーマに沿った、3つのゾーンで構成されている。そして「アート」ゾーンの中心となっているのが、バイヤー独自のキュレーションにより、マンスリーでさまざまなアーティストとその作品を紹介していくギャラリースペース「アートアップ」だ。
<コム デ ギャルソン>とのコラボレーションで、アートとファッションの蜜月時代を印象づけた baanai(バーナイ)。それに続く第2弾としてフィーチャーされるのは、ペンキ職人とアートディレクターという異色のコンビで、しかも実の兄弟だというデザインユニット、海前ブラザーズだ。
「僕らが活動を開始したのは、約3年ほど前。ずっと兄弟で一緒になにかをやりたいという思いがあったんですが、あるとき兄が、財布に得意のエアブラシでスカルモチーフを描いたものを持ってきたんです。『どう思うか』と訊かれたので、正直に『絵はすごくうまいけど、センスが悪い』と答えました(笑)。でもそこで、ハッと気づかされたんです」
大手セレクトショップでブランディングやアートディレクションを手がける弟は、世の中の流れや最先端のカルチャーやアートなどに精通。だからこそ兄の技術の素晴らしさに対してのモチーフ選びの拙さ、さらにはその才能の活かし方すらも瞬時に見抜いてしまったのだ。
「昔から兄の絵の巧さは知っていました。でも彼はどちらかというと"アウトサイダー"で、スカルなど“ベタ”なモチーフを“ベタ”な手法で描いていました。でもその財布を見せられたときに、腕は確かなのだからモチーフやアイデアは自分が提供すればいいんだと閃いたんです。僕自身は絵を描くことはできないけれど、僕のイメージを兄に具現化してもらうことで、きっと面白い作品ができるはずだと。ずっと思い描いていた兄弟のコラボレーションが、ようやく実現できると思いました」
誰にでも親しみやすく、常に携帯でき、気軽に購入することができる。そんな“持ち運べるアートピース”をテーマに据えることを決めたとき、ふたりがベストだと考えたのは、iPhoneケースに抽象的で立体的なペイントを施すことだったという。塗装工として、20年以上のキャリアを持つ兄は語る。
「僕は元々、具象的な作品を描くのが好きだったんです。でも弟との意見交換を通して、マーブリングやドリッピングという技法を駆使したペインティングの面白さと難しさを知りました。偶発的な表現のように見えると思いますが、経験を積めば積むほど、意図したとおりの動きを表現することができるようになったんです。僕はペイントをやるようになって、人生が楽しくなった。だからこの喜びをたくさんの人、特に子どもたちに知ってほしいと思っています。アートをもっと世に広めるなんていうと、ちょっと大げさでおこがましいかもしれません。でもiPhoneケースなら誰でも買える値段だし、毎日使って眺めてもらえる。『なんか、いいね』なんてゆって、普通のオバちゃんみたいなウチの母親も目をキラキラさせながら喜んでくれるので、やっぱり手のひらに収まるアートというのは、ちょっとでも人を幸せにする力があるんだな、と実感しているんです」
NEXT> 男性ならではの心象風景をテーマとしたアートとは?
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