「すでに2月に5階フロアは改装を終え、逸品ブランドを集積した世界でも類を見ない編集ショップ"アルチザン"が完成しました。一方で、イタリアブランドを中心に、世界中の旬なアイテムを揃えている"インターナショナルセレクション"では、クラシックファッションを自由なスタイリングや感度で楽しめる場所を表現したいというのをずっと考えています。最近だとクラシック回帰だとか、英国トレンドだとか、いややっぱりアメトラが新しいとか。いろいろ言われていますが、結局のところどうするのが一番今っぽいのかなって。それでようやく行き着いたのが、"トラディショナルミックス"というキーワードです。実際のところ伝統的なクラシコ・イタリアやサヴィルロウの伝統的なスタイルがお好きな人もいらっしゃいますが、どなたでも気軽に取り入れられるアイテムもありますよっていうところを、もっと多くの方に知っていただきたいんです」


メンズ館5階=メンズテーラードクロージングの編集ショップ「インターナショナルセレクション」


確かに、かつての90年代のクラシコ・イタリアブームからピッティ ウォモ至上主義へ、クラシック礼賛のメンズファッションは深化したと同時に、一部のマニアな人だけのものと思われがちだった。デザイナーズモードやラグジュアリーメゾンはストリート化しているのに、クラシックだけ取り残され、ドレス&ビジネスは取り残されて、いつのまにかファッションとして楽しむことができなくなっていたのかもしれない。

「世界のマーケットと触れて改めて実感するのは、イタリア、イギリス、そのほかの国も含めて、クラシックな服ってめちゃくちゃカッコいいんです。手仕事の良さだったり、着心地の快適さも、歴史と伝統が培ってきたからこその今があるし、そこに価値もある。それを見て見ぬふりして通り過ぎるのはもったいないと思うんです。SNSなんか見ていると、そういうウェルドレッサーがたくさんいるんです。だから今までのスタイリングに1点だけ、クラシックなアイテムを取り入れてみたらどうですかとか、いつも着ているアイテムをクラシックなブランドに変えてみては? というミックスの仕方から始めてみませんか、という思いなんです」


<デ・ペトリロ>ブルゾン96,120円

これまでイタリア&ブリティッシュなスタイルを楽しんできた人には、ルールに縛られないコーディネートを推奨している。それは稲葉自身が経験した、メンズファッションの洗礼に対する疑問から始まっているという。


<グレンフェル>ブルゾン74,520円
<マックローレン>セーター28,080円
<パッサージォクラバッテ>ネッカチーフ15,120円
<PT01>パンツ42,120円



<タリアトーレ>スーツ212,760円
<ヴァナコーレ>シャツ28,080円
<フランチェスコ マリーノ>タイ18,360円


「入社した当初、先輩からシャツとタイの組み合わせについて否定されたことがあるんです。なんでダメなのか、頭ではわかっていても、なんとなく反発心もあって、僕なりのクラシックでいいじゃないかって思っていました。いまそれはより現実的になっていて、ルールでガチガチに縛られたクラシックって、もうコスプレにしか見えないじゃないですか。もちろん着こなしのルールを知ることは大事ですが、もっと気軽なクラシックとの付き合い方があってもいいと思っています」

サルト仕立てのジャケットに、アメリカンボタンダウンやクルーネックニットを合わせるのは、行き過ぎたイタリアンスタイルに反旗を翻すようだが、リアリティあるドレスカジュアルとして成立している。スーツにスポーツウェアを合わせたり、足元をスニーカーでハズすスタイルも浸透してきた。

 


メンズ館5階=メンズテーラードクロージング/インターナショナルセレクションを担当する稲葉智大。


「大半のイタリアのファッション業界人だって、いつもコテコテのクラシックという人は、もういないですよ。ピッティ会場ではビシッとキメてるけど、ディナーではカジュアルなアイテムを場所と時間、その日の気候に合わせて上手に組み合わせている。そんな現代のファッションアイコンとリアルに触れ合える機会も、伊勢丹メンズが作っていきたいとも思っているんです」

稲葉の言葉を具現化するポップアップ&トランクショーは、全館リニューアルが完了する3月16日(土)から、2週にわたって盛大に行われる予定。3月23日(土)にはスペシャルなイベントも用意されている。新しい時代のクラシックを牽引すべく、「インターナショナルセレクション」の役割りは大きく変わろうとしている。

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