【インタビュー】尾作隼人&小堀浩太|ボタンからつくりこんだパンツ。(1/3)
──生産は長野のほうとか。織物の産地ですね。
尾作 人の伝手で紹介されました。その名も、長野アルプス。社員30人の小さな工場です。中国の工場も試したところ、これがうまかった。けれど、長野アルプスさんには伸び代を感じた。そしてそれは間違っていませんでした。
──ベルトまわりに惚れ惚れとするような曲線が現れています。ビスポークと比べても遜色ない、弓なりのカーブ。ウエストをしっかりホールドしてくれそうです。
尾作 まさかできるとは思っていませんでした。なぜならば、ぼくらに数値化した答えがないからです。じっさい、現場でもこのくらい曲げて、なんてそんなアドバイスでしたから(笑)。
小堀 そもそもラインから外れる工程ですからね。ふつう、工場でできることではない。
尾作 何度も工場にお邪魔して職人さんとコミュニケーションをとりました。この工程を任されているのはベテランの女性職人なんですが、みな、驚くほど積極的でした。工場に足を踏み入れて半年。じっくり取り組んだだけのものが完成しました。
小堀 工場長も務める二代目がいいんです。いいものを一緒につくろう、というスタンスがひしひし伝わってくる。現場には「この人はいずれ情熱大陸に出る人だからちゃんとやっておこう」ってハッパをかけたらしいです(笑)。
パンツ(アリストン社製生地使用)35,640円
──芯地もしっかりしていますね。それなのに、柔らかい。
尾作 ベルトまわりを語ろうと思えば芯地は外せません。三景さんという副資材屋さんとともにつくりました。柔らかいだけならいくらでもあるんですが、肉厚なそれは存在しませんでした。しかし寸法安定性(洗濯や着用によって変化しない性質)を考えれば、ここは譲れない部分。すると、「じゃ、つくってみましょうか」って。3ヵ月かかりましたが、待った甲斐がありました。
小堀 そして、6%のカーブ。これ、三景さんのアイデアなんですよね。ステッチで寄せれば表現できるよって。
尾作 当初は生産性なども踏まえて6%に設定したんですが、図らずもぼくがつくるビスポークのカーブに近かった。
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