伊勢丹メンズ館のスタイリストが教える新社会人の"好印象の作り方"
社会人1年目のスタートに着るスーツ選び――晴れの門出にふさわしいスーツ、シャツ・タイ、靴選びを、メンズ館のエーススタイリストがナビゲート!就活で、第一印象は「見た目」が重要ということをたっぷり経験した2人が、「好感度が上がるフレッシャーズスタイル」の“基本のキ”を教わっていきます。
今回登場してくれたのは、2018年4月に入社予定の三越伊勢丹内定者、永井裕太朗さん(左)と梅本優太さんの2人。
就活を戦い抜いた三越伊勢丹内定者がリクルートスーツで登場!
高身長で細身の梅本優太さんは、ファッションが大好きで、今日締めているネクタイも、「ネクタイの発祥はクロアチアなので、クロアチアを訪れた友人に買ってもらいました」という凝りよう。リクルート活動で着用したスーツも、「堅苦しく見えてしまう概念を取り払うため、自分の色が出るスーツをデザインとシルエットで選びました」と、<アクネ ストゥディオス>をセレクト。これには「アクネのスーツで就活している人はなかなかいないですね」と取材陣も驚きました。
小柄ですがガッチリした体格の永井裕太朗さんは、大学ではヨットサークルに所属。日焼けして精悍な印象です。「ファッションには疎いのでこれから学んでいきたい」という永井さんのリクルートスーツは、「社会人から見て間違いじゃない無難な“黒”を、父と一緒に買いに行きました」と説明。スーツ専門店で仕立てたスーツに、エンジのネクタイで登場です。
さて、リクルートスーツ選びの考え方も好対照な2人が、春から戦うステージは社会。同一化から好印象へと舵を切るスーツ選びのために、まずメンズ館5階=ビジネスクロージングに向かいます。
「好感度が上がるフレッシャーズスタイル」の“基本のキ”
1. スーツは、正しいサイズ感と好印象を与える生地を
新社会人は、4月から何をどう着る?――フレッシャーズスタイルづくりは、やはりスーツから。今年4月入社予定の2人を待ち受けるのは、三越伊勢丹の優秀スタイリスト(販売員)を認定する「エバーグリーン」をもつメンズ館5階=ビジネスクロージングの羽鳥です。
スタイリスト羽鳥から見た2人のリクルートスーツ評は、「梅本さんのファーストインプレッションは、サイズ感が気になりますが、着こなしは清潔感が前面に出ていて、色合わせは本人のキャラクターが程よく出ていると思います」と。
対して、「永井さんは、黒のスーツは学生さんにとっては定番的な色なので、リクルート活動で人気なのもわかります。永井さんはネクタイの色の印象が前面に打ち出されていて、パッションがあるのかなと思いました」と感想を。
スーツ選びは、見られ方やコンセプトをもつことが大事
ビジネススーツのビギナーの2人に羽鳥は、「ビジネス用のスタイルづくりで一番大事なのは、各アイテムを漫然と買うのではなく、着たときの見られ方やコンセプトをもつことが大事です」と説明。「見られ方やコンセプトをもつと、それに沿った買いものができて、結果、長く着られるワードローブが揃います。漫然と買うと、結局タンスの肥やしになりやすいものです」と続けます。
梅本さんは、「社会人1年目なら、どんなイメージやコンセプトをもつのがいいのでしょうか」と質問。
「たとえば、清潔に見られたい、年相応、若々しくなどがありますね。女子ウケがいいでも大丈夫ですよ」と羽鳥。
初めてのビジネススーツ選びについて梅本さんは、「自分のキャラクターを活かしつつ、落ち着いた中にも個性が見えるスーツ」をと、永井さんは、「無難にスーツを着るのは飽きたので、ちょっと目立つスーツを着てみたいのと、きれいなシルエットが出るスーツを着たいです」とリクエストしました。
スーツ選びのファーストステップは、適正サイズを着ること。スタイリストの羽鳥は2人のチェストサイズを測ります。「若い人がよく間違えるのは、一番細いウエストに合わせてしまうこと。スーツは肩からウエストにかけてきれいにシェイプが入るのが大事です」と説明しながら計測。
梅本さんのリクルートスーツはサイズ44ですが、羽鳥は<イセタンメンズ>の46サイズをチョイスして試着。「似合うスーツ選びの一番のポイントは、肩幅と着丈です。若い人はとにかく細いのを選びがちですが、肩幅が広く、着丈が長くなると大人っぽく見えます。ジャケットがきちんと胸に納まって、お尻が隠れるくらいの長さがベスト。“細くて短いのは子どもっぽく見える”と覚えておいてください」とアドバイス。
梅本さんは、「44と46を着比べてみましたが、44だと肩まわりがキツい感じです。46の方が全体のバランス感がよくて、印象が変わります。今まではキツそうな着方だったんですね」と気づいた様子。
かたや体格はまったく違いますが、永井さんもサイズは44。試着しながら羽鳥は、「永井さんはスポーツをやっていて胸厚があるので、小柄ですが“スーツが似合う体型”です。肩がきちんと収まって、胸に沿うのは44でぴったり。梅本さんと同じ<イセタンメンズ>のスーツの44サイズですが、ほぼお直しなしで着られる体型で羨ましいです」と感心。
「ずっとスーツのジャケットはウエストを絞ったほうがいいのかなと思っていましたが、肩と胸に合わせるんですね」と永井さん。似合うスーツが見つかってうれしそうです。
「せっかくの機会なので、スーツの生地についても説明しましょう」と羽鳥が2人を連れてきたのは、同じくメンズ館5階=メイド トゥ メジャー。いわゆる「スーツ好き」の手練れたちが“スーツを自在に誂える”場です。そして、2人の前に差し出したのは、仕立て上がり13万円のスーパー160sのウール生地。
「このウール100%の生地を見てどう感じますか。見た目はベーシックですが、高級感があって落ち着いた印象があると思います」と羽鳥。「スーツは素材の持ち味によって印象が大きく変わりますが、たとえば“見た目は普通だが、個性を出したい”というリクエストにはこういう無地の生地をお薦めします。
「どこが違うのですか?」という梅本さんの問いに、「一番の違いは、体に収まったときですね。ドレープ感やツヤ感などの表現力があって、この生地はとてもきれいに出ます。またウール100%は復元力があるので、手入れすると長く着られるメリットもあります」と説明。
さらに、「就活ではウォッシャブルのスーツを選ぶのも、用途としてはOKですが、生地感はどうしても子どもっぽく見られがち。そのまま社会で着ると、見ている人は見ています」と羽鳥。「スーツで個性というと、派手な色やストライプやチェックの柄を選ぶと思いがちですが、こういう自然な光沢感が美しい“マットなネイビーの無地を着る”ことも落ち着きや個性に繋がります」
永井さんは、「今の自分には手が出せない価格ですが、素材の表現で大人っぽさを出せるのがわかりました。スーツ選びには生地感もしっかり押さえます」と感想を述べました。
スーツ選びには適正なサイズ感と生地のチョイスが必要ですが、さらに、パンツとジャケットのサイズバランスも重要です。股下の分岐点で上着の丈が終わると、上下が連続して見えて脚が長く見え、よりスラッとした印象を与えます。
また、パンツはクリースラインを絶対つけてください。清潔感がしっかり出ます。同じく、ジャケットの袖の長さはシャツの袖口がちょっとのぞくように。袖口が少し見えるのも清潔感に繋がります。
ジャケットは肩と胸でちゃんと着る。シャツは衿までボタンをしっかり留めて、ネクタイをキュッと結ぶ。それが年齢にかかわらず、スーツの着こなしの基本です。
2. シャツとタイのバランスの整った“Vゾーン”を
フレッシャーズスタイルで、スーツを選んだら、次はシャツとネクタイです。メンズ館1階=ワイシャツ・ネクタイで、今年4月入社予定の2人を待ち受けるのは、自前で<ANNA MATUOZZO/アンナ・マトゥッツォ>の“13ポイント”フルハンド仕立てのシャツを誂えたスタイリストの花野です。
Vゾーンを制するものは好印象を制するという鉄則
就活時のシャツとネクタイについて、梅本優太さんは、「シャツはたくさん必要なので、とくにこだわらずに選んでいました。自分のサイズは全然分かりません。ネクタイは紺が好きです」と言い、永井裕太朗さんは、「ネクタイは紺やブルーをしている人が多いので、赤のドットでちょっと個性を出しました。就活では3本ほど使いました」とのこと。
2人を目の前にした花野は、「まずサイズを測りましょう」と、ネックサイズと裄(ゆき)丈を計測。「梅本さんはネック実寸が35cmなので、+2cmでネックサイズは37。裄丈は85がジャストです。今着ているシャツは裄が短いですね。永井さんは同じくネックサイズは37で裄丈は82。裄がちょっと長くて、カフスが緩いです」と寸評します。
社会人1年目にふさわしいシャツは「セミワイド」
梅本さんからの「社会人にはどんなシャツの襟型がいいのですか?」という問いに、「ネクタイの結び目がきれいに収まるのは“セミワイド”です。カッタウェイはネクタイの結び方が難しく、ボタンダウンはカジュアルな印象になるので、プレーンノットの結び方が似合うセミワイドやレギュラーをお薦めします」と花野。
「せっかくこういう機会ですから、良いシャツを着てみましょう」と花野が用意したのは、梅本さんに<LUIGI BORRELLI/ルイジ ボレッリ>の人気モデル「ルチアーノ」、永井さんには<Avino Laboratorio Napoletano/アヴィーノ ラボラトリオ ナポレターノ>のシャツ。
「どちらもメンズ館1階では上級者向けのシャツですが、良いシャツを着ると背筋が伸びます。また、襟型のセンスが良いので、ネクタイを締めたときに違いがわかります。こういうシャツを1枚持っていると、いざというときに安心だし、気も引き締まります」と説明します。
梅本さんのシャツは、<ルイジ ボレッリ>の8ポイントハンドの「ロイヤルコレクション」で、シャツメーカーが模範の一着とするルチアーノをベースに、今春新たに導入されるスリムフィットの「SNボディ」。着心地を尋ねると、「ナポリのハンドメイドのシャツを初めて着ました。高価なシャツですが、生地の感じがとても良いですね」と梅本さん。
永井さんが着用した<アヴィーノ>のシャツは、日本人向けに裄丈が3cm短い設定になっているモデルで、「シャツを着るとシワが気になるのですが……」という質問に、「ヨーロッパではスーツを着たときには人前でジャケットを脱がないので、シャツは“肌着”という考え方です。なので、シワは気にしなくていいです」という花野の答えに大きくうなずきます。
背中のギャザーなどテンションがかかる箇所をハンドメイドで仕上げているシャツを着て、「着心地が全然違いますね」と永井さん。「シャツをきちんと着る第一歩はサイズで、それから襟型や生地だとわかりました」と続けます。
シャツが決まったらネクタイ選びです。梅本さんには、ネイビースーツに合うネクタイを花野がセレクト。好きな一本を選んでというと、<ステファノビジ>のグリーン地に白の小紋をセレクトしました。「人とちょっと違うのがいいので、グリーンに初挑戦です」と梅本さん。
「ネクタイの結び方のポイントは、大剣の長さと結び目を重視してください。大剣の先はベルト当たりで、小剣は大剣より長くなっても構いません。結び目はプレーンノットでしっかりと。メンズ館1階のネクタイはプレーンノットできれいに結べるものを前提で揃えているので、難しい結び方に挑戦しなくても大丈夫です」と花野。
永井さんは、日焼けした顔に映える<ルイジ ボレッリ>のエンジ×グレーの小紋柄をセレクト。「就活も赤でしたが、赤は赤でも大人っぽさ出せる色と柄だと思い選びました。自分の前のネクタイの結び方はダメだったんですね」と問うと、「プレーンノットで、結び目はコンパクトに、ディンプルをちゃんと作ると、シャツの襟型がきれいに映ります。永井さんには“フレッシャーズの赤”がよくお似合いですよ」とセレクトを褒めます。
今回はフレッシュな2人に「シャツの良さ」を感じてほしかったので、<ルイジ ボレッリ>と<アヴィーノ ラボラトリオ ナポレターノ>のシャツをお薦めしましたが、社会人一年目なら、シャツは<イセタンメンズ>の1万円前後のもの、ネクタイなら9000円ぐらいの価格が現実的だと思います。また、シャツは、アイロンをかけやすい「形態安定」が人気ですが、選ぶなら綿100%のものをお薦めします。
4月に入社してすぐクールビズですが、ネクタイをきれいに結んでいると暑苦しく見えないので、ぜひサイズの合ったシャツと、キリッとした結び目のネクタイで好スタートを切ってください。
3. ビジネススタイルに“ベストな足元”を
フレッシャーズスタイルで、スーツやシャツ、ネクタイを選んだら、全身の印象を引き締める靴選びの番です。メンズ館地下1階=紳士靴で、今年4月入社予定の2人を待ち受けるのは、靴はもちろん、コーディネートアイテム全般に造詣が深いスタイリストの越前屋です。
靴選びの第一歩は自分のサイズを知ることから
就活スタイルの2人の足元を見て、「どちらもオーソドックスなデザインの靴で、リクルートには間違っていません」と越前屋。梅本優太さんの「社会人はどんな靴を履けばいいですか?」という質問に、「ファーストビジネスシューズは、価格は3~5万円ほどで、国産のグッドイヤーウエルト製法のものを選ぶことをお薦めします」と回答。
越前屋から「ご自分のサイズを知っていますか?」と問われると、梅本さんは「27 cm」、永井さんは「26 cm」と返答。「では実際に測ってみましょう」と計測します。
「梅本さんは26cmで、ウィズ(足囲)はD。今風の足型ですね。永井さんは25.5cmで、ウィズはE。幅広く靴が選べる足型です。実際より大きいサイズの靴を履くと、靴を傷め、足を痛めることにも通じるので、ご自分のサイズをきちんと知ることが第一歩です」と越前屋。
メンズ館地下1階=紳士靴でサイズを尋ねると、ほとんどの方が“スニーカーサイズ”を答えられるそうです。革靴選びのときには、サイズはもちろん、ウィズも含めて、ぜひ計測からスタートしてください。
フレッシャーズスタイルに合わせる靴として、梅本さんは「尖りすぎず、プレーンな顔つきの靴」を、永井さんは「光沢のないシックな印象の靴」をリクエスト。越前屋は、梅本さんに<ユニオンインペリアル>のダブルモンクを、永井さんには<オーツカプラス>の外羽根プレーントゥを選びました。
「ダブルモンクは初めて履いたのでとても新鮮です。上から見ても収まりがいいですね。モード感が加わる感じがします」と梅本さん。永井さんは、「今履いている靴とフィット感が全然違います。トゥが丸いとスーツと合わせた印象が変わって、エレガントですね」と感心した様子です。
スタイリスト越前屋から、革靴のワンポイントアドバイス
若い人はスーツでもテーパードの効いた裾幅の狭いパンツを好みますが、裾幅が狭いのに、トゥの尖った大ぶりの靴を履くと、靴ばかり目立ってしまいバランスが悪いです。裾幅が19cmぐらいなら、柔らかい印象を与えるラウンドトゥの靴などをチョイスすると、全身の印象も変わります。
また、学生時代はほとんどスニーカーでの生活だと思うので、インソールが柔らかく、クッション性の高いスニーカー感覚で履ける<コールハーン>の靴をお薦めします。
スーツ、シャツ&タイ、革靴のフィッティングを終えて…
どのアイテムも「サイズ感の大切さ」を痛感しました。また、スタンダードを知ることができたのがうれしいです。スタイリストさんは「自分の理想をちょっと超えてくるところ」がすごいと思いました。シャツから買ってみようと思います(梅本)
スーツは個性を出せない服だと思っていたので、「どうやって個性を出すのかな」と思って来ました。個性でも、奇抜なモノを着るのではないことがよくわかりました。ジャケットの肩幅、ネクタイの結び方、靴のサイズなど、すべて参考にして1年目のスタイルを選びたいと思います(永井)
Photo:Tatsuya Ozawa
Text:ISETAN MEN‘S net
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