【インタビュー】<visvim/ビスビム>ディレクター・中村ヒロキ|ハートに訴えかけるものづくり(1/2)
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──今までなぜショーをやってこなかったのでしょうか?また、今回初めてショーにチャレンジしてみようと思ったのは何故ですか?
<ビズビム>スタート時はシューズがメインでしたので、ランウェイショーができる商品構成ではありませんでした。シーズン毎にエキシビジョン形式のプレゼンテーションを開催していて、やがてウェアのコレクションが揃った頃には自分たちなりの"カタチ"ができあがっていたんです。ファーマットができあがってしまったことで、新しい形式に移行する必要がなくなり、もともとランウェイショーにこだわりがないまま今に至るというのが正直なところですね。
チャレンジしてみようと思ったのは、ピッティ協会に推薦していただき、好きにやっていいですよと言っていただけたのと、こういう機会でもないと、新しいことにトライ出来ないと思ったからです。
左/配布された揃いの法被に描かれている波状の紋様は、竹をモチーフにした和を意識させるモチーフだ。
右/ショー会場には中村が愛するビンテージカーやバイクが展示された。
──演出や表現でこだわったことはどんなことでしょう?これまで行ってきた展示会では、商品を見ながら手に取り伝えるということをしてきました。ランウェイショーだと、どうしても商品までの距離がありますよね。それをどう埋めるかがテーマでした。会場入り口で法被を配布して観客席で着てもらったのは、お客さまにショーの一部になってもらうことでショー会場の空気をリアルに感じてもらいたかったからです。
──終わってみて、印象はいかがでしたか?
久しぶりに緊張もしましたし、楽しかったですね。ショーはほんの12、3分でしたけれども、プレゼンテーション全体にクリエーションを凝縮したことで、その高揚感にはエキシビジョン形式の展示会とは違ったものがありました。これまで店舗空間や紙媒体、プロダクトなど、さまざまな世界観を作ってきたのですが、ショー形式だとすごく伝わりやすいように思いました。
──モノづくりでこだわっていることや、ブランドとして目指している方向性、実現したいことはなんでしょう?
自分が生きていくなかで感じたことや心に響いたものを、そのシーズン毎に正直に形にしていきたいと考えています。元々、キャラクターがあるものや、手づくりで温もりを感じるものなどには自然と魅かれます。そして、長く使い続けることができる、楽しみ続けることができるプロダクトを作りたいと思っています。
今回のコレクションでは、自分が生まれ育った日本の伝統的な衣装や日本人職人ならではの繊細な技術、ずっと好きだったアメリカンカジュアル、そしていま暮らしているアメリカのリアルライフが融合しています。ショーの会場にも展示していたビンテージのロードスターやモーターサイクルなんかも、僕の興味の範疇を象徴していると思います。
ランウェイに展開されたのは、和装をモチーフにしたコートとアメリカンカジュアルの融合。
──今季のテーマや、これから展開するアイテムの特徴について教えてください。
「PEERLESS」という言葉を今回のコレクションの中で使いました。「似たもの、比較するものがない」という意味で、1950年代によく使われていた言葉のようですが、今はあまり使われていないようです。
キーになるアイテムは、手漉きの和紙を使用したジャケット、コート、シャツなどです。和紙を糸にして織り込んだプロダクトは渋紙を使用して、彫刻のように彫った版画を使いプリントを施しています。雷=ライトニングボルトは1940~1950年代のアメリカを象徴するモチーフであると当時に江戸期の日本でも使われていたモチーフでもあります。同時に竹柄や鯉の柄をプリントしたアイテムなどを展開します。
日本の伝統と職人技術、そして50年代のアメリカのハッピーな部分のミックステイスト。和とカウボーイ、ウエスタン、アメリカンネイティブなど自分が好きなものを織り交ぜたコレクションになっています。
左/ランウェイショーのテーマは「PEERLESS」。
右/モップダンサーは中村がイギリスから呼び寄せた。
──2月8日(水)から開催されるイセタンメンズのプロモーションで表現したいこと、伝えたいことはどんなことでしょうか?
これまでモノづくりを通じて愛情や情熱、人が手で作り出すぬくもりなどを伝えながら、人をハッピーにしたいという思いがつねにありました。ピッティでのランウェイショーは、そんな僕の周りにいつもあるもの、頭のなかにある想像を膨らませる様子を、みなさんとシェアしたいと考えた内容だったんです。
今回のプロモーションでは実際のランウェイショーの開催はしませんが、ピッティでのショー会場を感じていただけるような装飾を施す予定です。そこに360度映像で撮影したランウェイショーのビジュアルを、お客さまにご覧いただきながら、あの日の臨場感を届けたいと思っています。
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