2015.12.23 update

【インタビュー】マーク・スターン(Seaward&Stearn/シーワード&スターン 創業者)|ロンドンの中心地で手作りされる<シーワード&スターン>のタイに宿る大胆さ


世にも上品で気品高い、パープル&ピンク

タイを中心に、マフラー、シャツ、ジャケットなどを展開する<シーワード&スターン>は、2003年にロンドンで設立した、まだ若いブランドだが、創業者であるギャリー・シーワードとマーク・スターンのそれまでのキャリアが存分に生かされた同ブランドのアイテムは、世界中で高い評価を得ており、今やロンドンを代表するブランドとなっている。


ふたりのキャリアをまずはここに記そう。

ギャリーは16歳の時に、英国で最も古いとされるタイメーカー、<ジョンコンフォート>で働き始めた。独立までセールスディレクターとして活躍したという。一方、今回インタビューに応じてくれたマークは、3代続く高級紳士服製造の家に生まれ、10代のうちから家業を手伝っていた。ロンドンのタイ作りの中心人物として有名なチャールズ・ヒルの元で修業を積み、<ターンブル&アッサー>のタイ部門の責任者兼デザインとマーケティング部門のディレクターを務めてきた。2000年に二人は<ターンブル&アッサー>で出会い、その数年後に<シーワード&スターン>を立ち上げることとなった。

「我々のブランドの特徴は、まずロンドンの中心地でマニュファクチャー、つまりハンドメイドで物作りをしている点にあります」とマークさんはいう。確かに、ロンドンは、シティという世界有数の金融街をもち、観光や買い物をする都市というイメージが強い。


「ロンドンの自社工場内で手作業によって年間約12万本のタイを生産しています。タイ作りで最も重要なのが、裏側の中心を手で縫うこと。生地のテンションを目と手で確かめながらひとつの針で縫い上げます」。機械で画一的に縫われたタイは、どこか硬い着け心地。一方、手縫いのタイは最初から首へのフィット感や結び心地がいい。

「また、パープルとピンクという二つの色がブランドを表現する大事な要素です」とマークさんは続ける。大剣と小剣の裏にはその二色が配されている。シャツの一番上と一番下のボタンホールのかがり糸もこの二色を使っている。「この二色の意味は、パープルは情熱を感じ、私が大好きな色。ピンクは英国を代表する色です」と語る。


日本でピンクというと可愛らしい印象をもつことが多いが、担当バイヤー佐藤氏も「ジャーミンストリートにあるシャツやタイのブランドでピンクを使っている所は確かに多いですね」という。淡い赤やピンクの花を咲かせるイングリッシュローズからこのインスピレーションを受けているのかもしれない。

「生地はリネン、コットン、ウール、カシミヤやそれらのミックスをシーズンによって使い分けますが、やはり何といってもシルクが中心です。英国の東部にあるサフォークという州は世界有数のシルク生産地です。中でもバーナーズとスティーブン・ウォルターズはシルクの2大テキスタイルメーカーとして知られています。我々のシルク・タイはこの2社の物を使うことが多いのです」とマークさん。


この地で作られるシルク地は、打ち込みが多く、張りと腰が強い。7本の糸を1平方インチあたり350ポンド分使うという。ちなみに、イタリアの標準的なシルク素材はこの2/3ほど。そんな重厚感のある生地はどのような効果をもたらすのだろうか。

「このウェイトファブリックによって色に高級感が出ます。とにかくパープルが映えるシルクなんです。またピンクも同様です。冬季はピンクはダークがかったものを使いますが、この生地でないと発色に納得のいくものが出ません」。毎シーズン、タイの表地にもパープルとピンクを使う同ブランドは、季節によってその二色の濃淡を変えている。だからこそ、その発色にはとことんこだわっている。


「我々英国人のスーツはトラディショナルなグレーかネイビー、どちらかというと地味なものが多い。だからタイでパーソナリティを表現したいと思っています」。パープルやピンクという鮮やかな色を使いながら、派手や悪趣味という印象を抱かせないシーワード&スターンのタイ。その理由は、先に挙げたように打ち込みの強い素材感による上品な発色によるもの以外に、鮮やかな色をグレーやブラウン、ネイビーといったシックな色とコンビネーションしている点も見逃せない。また、大きなストライプもイタリアやフランスのタイには見られない大胆さを感じる。

「クラシック×ブライトは我々の個性です。また、色だけではなくジオメトリックパターン(幾何学模様)にも独自性を感じていただきたい」とマークさんがいうように、同ブランドのタイの柄は大きく、大胆な配色とともに首元で品よく個性を主張するのに適している。


「最後に、我々のマフラーにも注目していただきたい。これらの製品はスコットランドで作っています。素材は肌触りのいいウール、防寒性の高いアンゴラです。そして、タイ同様に大胆な配色やジオメトリックパターンをマフラーにも採用しています」。

その配色は二面または四面で切り替えられており、シグネチャーであるパープルやピンクに、シックなグレー、ブラウン、ネイビーを合わせている。シックな色の露出を増やせばビジネスに、鮮やかな色を増やせばオフに、と汎用性の高さも魅力で、世界的に爆発的なヒット商品となっているという。また、ジオメトリックパターンのタイとマフラーをコーディネートしてみるのも一興。ギフトにも喜ばれること間違いないコンビネーションだ。

Text:Ogiyama Takashi
Photo:Ozawa Tatsuya


Seaward&Stearn/シーワード&スターン

代々、ネクタイ製造に従事する家系に生まれ、<ターンブル&アッサー>のデザインディレクターを務めたこともあるマーク・スターン氏(写真上)と、長くネクタイ業界で活躍してきたギャリー・シーワード氏によって2002年にイギリスで創業した<シーワード&スターン>。歴史が浅いブランドでありながら、20世紀初頭に遡るセブンフォールドなどの伝統的手法を取り入れているのが特徴で、プリント生地は、1700年代からシルク生地生産で名高い地域でハンドプリントを得意とするアダムリー社製の最高級品だけを使用し、デザインだけでなく素材にも独自のこだわり持っています。


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