【連載】釣りと靴を探求するスタイリスト 那須 一輝さん「突き詰めないと見えない世界がある」|メンズ館で出会った○○マニア
伊勢丹新宿店メンズ館では、マニアックな知識をもつファッショニスタから、ハイセンスなウェルドレッサーまで、さまざまなスタイリストがお客さまをお迎えします。
今回、ご紹介するのはシニアカテゴリースペシャリストの那須一輝さん。2005年に入社後、メンズクリエーターズやビジネスウェアのフロアを経て、紳士靴販売を10年間担当し、今春より現職に就きました。
紳士靴の豊富な知識で目利きのお客さまに提案を続けてきた那須さんですが、その探究心は仕事だけにとどまらないようで……。那須さんは子どもの頃からの釣り好きで、なんと最近はマグロを釣り上げたとか。釣りへの熱狂ぶりは同僚のなかでも評判となっています。
そんな釣りマニアである那須さんに、釣りの思い出や釣り具へのこだわり、紳士靴との意外な共通点などを伺いました。
マニアックに追求する「釣り」そして「紳士靴」
釣りを始めたのは中学生の頃。1990年代のブラックバス釣りのブームが巻き起こるなか、友だちと一緒に地元・和歌山の釣りスポットへよく出かけていたそうです。
「やっぱり大きい魚を釣ったときのワクワク感が好きですね! バス釣りなどのルアーフィッシングはえさ釣りのように簡単には釣れなくて、一日やって数匹という日もザラなのですが、どうやったらうまく釣れるかと戦略を立てるのがおもしろいですし、イメージ通りにいったときはうれしいです」
那須さんは釣りの魅力を楽しそうに語ります。地元を離れて大阪の美容系専門学校へ進学すると、淀川を中心にバス釣りを継続。三越伊勢丹へ入社後は、数年は釣りから離れたものの、釣り好きの後輩からの誘いで再燃していったといいます。
大物を狙ってバス釣りのメッカといわれる千葉の亀山湖や山梨の河口湖へ。そして最近は、海釣りに目覚め、シーバス釣りがメインになっているとのこと。昨夏には、多くの釣り好きの夢であるマグロを釣り上げました。
「縁あって地元の知人がマグロ釣りに連れて行ってくれました。本当にシビれる釣りでした。とにかく引きがとんでもなくて、釣り上げるのに40分くらいかかりました。1週間筋肉痛になりました(笑)」
そんな那須さんの探究心は、仕事でも存分に発揮されています。昨年度まで10年間担当したメンズ館の紳士靴フロアでは、ハイエンドのブロックを長らく担当し、目利きのお客さまから大きな信頼を得ていました。
「僕はもともと靴を軸にしたコーディネートが好きだったので、自ら希望して紳士靴担当に配属していただきました。革靴は似たように見えるものが多いですが、革質だったり、ディテールだったり、マニアックなところがおもしろくて、すごく惹かれていきました。突き詰めて行っても終わりがない、正解がないっていう深いところが魅力だと感じます」
メンズ館の紳士靴フロアは、世界屈指といわれるほどの豊富なラインアップ。那須さんは「とにかく自分で履いてみること」を重視し、これまでに数多くの靴を自ら購入して愛用してきたそうです。
「革靴は、新品の状態から馴染ませていくことで初めて完成していきます。“靴を育てる”という感覚はやっぱり実際に履かないとわかりませんし、お客さまにご提案するときにも知識だけだと説得力を欠いてしまう。だから経験が非常に大切だと思うんです」
実は、那須さんの影響なのか、紳士靴フロアにちょっとした釣りブームが来ていて、同僚数人で定期的に海釣りへ出かけているそう。やはり、紳士靴と釣りの親和性が高い!?
愛用する釣り具へのこだわりと思い出
さて、那須さんの釣りマニアぶりをさらに深掘りしましょう。
とある同僚によると、那須さんと一緒に釣り具店へ入ったところ、情報収集に熱中し2時間ほど出てこなかったのだとか。というのも、那須さんには釣り具に対する並々ならぬ情熱とこだわりがあります。
「僕、収集癖があって……(笑)。釣りの『集める楽しさ』も好きなところです。フィッシングショーに行って新作をいち早くチェックしたり、プレミアが付いたルアーを買うために釣り具屋を巡ったり。ルアーの名前だけでなく、グラム数も覚えていますね。でも、釣り好きはみんなそうだと思います。オタクが多いんですかね」
「収集癖」を自覚する那須さんの釣り具コレクションの一部を見せてもらいました。
持参していただいたケースのなかには、数え切れないほどのルアーがぎっしり。地元の和歌山が誇るルアーメーカー「ガンクラフト」の大型ルアー「ジョインテッドクロー178」は世界的に人気。「バス釣りをする人で知らない人はいないレベルで有名です。地元のメーカーなので応援したいですね」と那須さんは話します。
なかには、サイン入りのルアーもちらほら。ケースから思い出深いルアーをピックアップして説明してくれました。
「釣り具屋のイベントに行ってプロの方からサインをもらいました。これは下野正希さんという有名なバス(フィッシング)プロのもので、僕にとって初めてのサイン入りルアー。こちらは<メガバス>というルアー会社の超人気ルアーで、店をいくつも回ってようやく手に入れました。購入した数年後に製作者である伊東由樹さん(メガバスグループ創業者)にお会いできてサインをいただきました」
ツーピースのロットは、収納できて電車移動に便利。リールは、スピリングリールとベイトリールを状況によって使い分け、<レイバン>のサングラスには「タレックス」の偏光レンズを……那須さんは目を輝かせながら道具のこだわりを語りつつ、「釣り方によって道具がすべて変わるので大変なんです」と苦笑いしていました。
メンズ館屈指の太公望が推すサンダル3選
続いては、釣りをはじめとしたアウトドアで、那須さんが愛用している、また注目しているサンダルを紹介していきましょう。那須さんは、紳士靴売場の夏の恒例イベント「ワールドサンダルマーケット」も担当してきました。
「スポーツサンダルはブームから定番化した印象で、毎年根強い人気を誇っています。僕も一部危ないシチュエーションを除いて、釣りでもよくスポサンを履いています。今回は、実際に使っている私物も持ってきました」
再び買い足したい<テバ>ハリケーン
まずはスポーツサンダルのパイオニアである<テバ>の定番・ハリケーンシリーズ。5年以上愛用しているそうです。
「アウトソールにグリップ力が高いラバーが付いていて、滑りにくいです。釣りでは濡れた岩場を歩いたり、川にジャブジャブ入ったりもするのでピッタリなんです。ストラップの裏地がウェットスーツ素材になっているので長時間歩いても痛くないというのもポイント」
つま先を守ってくれる<キーン>ゼラポート2
続いて、<キーン>。お馴染みの「トゥ・プロテクション」を搭載したストラップサンダルです。どんなところがお気に入りなのでしょうか。
「水中を歩くとき、石につま先が当たって危ないです。爪がボロボロになってしまったこともあります。しっかりガードできるタイプなら安心です。履き心地もすごく快適です」
今一番気になるサンダル<リグ>クーバ
そして、今夏の「ワールドサンダルマーケット」にも出品される予定の<リグ>の「クーバ」。<リグ>は日本発のサンダルブランドとして注目されています。
「3本のストラップによるホールド感の高さ、厚いソールの高いクッション性で、長時間の歩行にも向いています。歩く距離が長いときなどアウトドアだけでなく、街でファッション軸でも活用できそうです」
「お客さま第一」のフィロソフィー
那須さんは4月からシニアカテゴリースペシャリストとして働いています。特定のフロアを担当せず、メンズ館全体の商品の中からお客さまに最適なアイテムを提案する役割を担っています。
三越伊勢丹がお客さま一人ひとりの最適な提案をする「個客業」への進化を推進するなか、重要視されるポストに就いた格好です。
那須さんに接客で心がけていることを尋ねると、「お客さま第一」という回答。その言葉の奥にある、フィロソフィーとは?
「販売は『売る仕事』のイメージが強いですが、お客さまの希望をきちんと吸い上げてご提案するというのが、本来の仕事だと思っています。カテゴリースペシャリストは、トータルでコーディネートしてご提案ができるポジション。しっかりとした『聴く力』を養っていきたいです」
原点には、学生時代に体験した「お客さま第一」の接客があるといいます。
「専門学生時代に通っていた服のお店があって、販売の方の接客がとても印象的でした。商品のことをいろいろ説明してくれるのですが決して押し売りがなくて、購入を決めたときには一緒に喜んでくれたり、僕が買った商品を覚えていてくれたり……そんな接客をしてもらって純粋にうれしかったんです。自分もそういうお客さまに寄り添った接客を意識しています」
心くすぐる提案は「探究心」から
紳士靴に釣りに、仕事でも趣味でも自分の「好き」を原動力にして、各ジャンルを探究してきた那須さんは「突き詰めていかないと見えない世界は、どの分野にもあると思います」と話します。
「とにかく好きになるというのは自分のなかのスタンスとしてありますね。紳士靴の話でいえば、お客さまは靴が好きで来てくださっているという大前提があるので、その期待値を超えるためには自分がお客さま以上に好きな気持ちを持っていないと還元できません。単なる商品説明で終わらず、ブランドやデザイナーの意図や熱意といった一歩踏み込んだところまでご説明するように意識しています。それは店頭販売だからこそできることですよね」
店頭で繰り広げられる那須さんの「心くすぐる提案」は、ひとつの物事を深掘りしていく姿勢にあるのだと感じられました。
2024年7月17日(水)からはメンズ館地下1階で「ワールドサンダルマーケット」が開催されます。9回目となる今回は、ドレスからカジュアルまでたくさんのブランドが一堂に集結します。
那須さんもイベントに参加予定とのことで、靴好き、釣り好きはもちろん、そうでない方も那須さんとの会話を楽しみに、足を運んでみてはいかがでしょうか。
- 開催期間:7
- 開催場所:伊勢丹新宿店 メンズ館地下1階 紳士靴
►三越伊勢丹オンラインストアで「ワールドサンダルマーケット」の商品の一部を見る
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【連載】「#メンズ館で出会った○○マニア」
Text:Shin Ichinose
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