200年の時を超えて、 現代に息づくクラシック。<ブレゲ>「7337」にニューフェイスが登場
<ブレゲ>のクラシックな名機が最新技術でアップデートされた。時計機構のみならず、新たな合金も発明した初代<ブレゲ>。新しい技術や素材に積極的に取り組むその革新性も受け継ぐ、ニューモデルを紹介。
新作「クラシック 7337」が登場
「クラシック」コレクションを代表する「7337」のニューフェイスは、日・曜日のディスクを初めて深いブルーに染め上げた。各表示窓は既存モデルよりシャープなラインでカットアウトされ、また開口部も広げ、視認性を高めている。
クル・ド・パリ装飾のダイヤルに直接印字へと改められたスモールセコンドのインデックスは、凹凸模様の上にあっても一切の滲みなくクッキリと浮き立っているのが見事だ。ダイヤルの外縁に沿う円弧状だったBREGUETの文字と個体番号のプレートも、長方形に変更。
これらのディテール操作で、<ブレゲ>はメゾンのアイコンをモダンな印象に生まれ変わらせた。
モダニズムを先駆けた初代ブレゲの機能美
時計の針は、ダイヤルの中心に置くもの———そんな既成概念を、初代アブラアン−ルイ・ブレゲは覆した。彼は1812年以降、針を上か下にオフセットした懐中時計をたびたび製作してきた。これを称してエキセントリックダイヤル。以下の懐中時計は、その中の一つだ。
1831年10月13日に販売されたとの記録が残る「No.4691」。7.5分単位で現在時刻を音で知らせるハーフクォーターリピーターをはじめ、いくつもの機構を7.7mm厚の極薄ケースに収めた。初代<ブレゲ>による傑作の一つだ。
オフセットしたダイヤルの上部外側中央にムーンフェイズを置き、その左右に2つの表示窓を配置したデザインを受け継ぎ、「クラシック 7337」は2009年に生まれた。さらに遡れば、同じダイヤルデザインは、1986年誕生の「クラシック 3330」で試みられている。また初代が製作した懐中時計にも、同様のデザインが複数存在する。
自動巻き機構ペルペチュエルやトゥールビヨンなど数々の時計機構を発明・革新し、稀代の天才時計師と称賛される初代<ブレゲ>は、時計の見やすさと美しさとを探究した点においても天才であった。エキセントリックダイヤルは、針がほかの付加表示を隠さないための工夫である。
さらにオフセットダイヤルとその周囲とを、異なる模様のギヨシェ彫りで視覚的に切り分けることで、より見やすくした。金属プレートに手動旋盤で凹凸模様を彫り込むこの装飾加工技術を、時計に初めて応用したのも、初代<ブレゲ>である。
「クラシック 7337」も、ダイヤル中央にはフランス語で“パリの爪”を意味する「クル・ド・パリ」、周囲には風になびく麦の穂に似た「バーリーコーン」がギヨシェ彫りされている。さらにローマ数字のアワーインデックスとドット状のミニッツスケールの間を切り分けているのも、「リズレ」と呼ばれるギヨシェ彫りだ。実は、ギヨシェ彫り用の手動旋盤は、20世紀初頭に姿を消している。他社が現存する古い機械を修理しながら使ったり、プレス加工に変更する中、<ブレゲ>は自社で19世紀当時と同じ仕組みの手動旋盤を製作。技術者も育成し、初代の美意識を継承してきた。以下の写真にあるように、現代の<ブレゲ>は自動巻きローターにもギヨシェ彫りを施す。
これもまた、単なる装飾ではない。ローター外縁は彫りを与えず無垢のまま残し、重量バランスを偏らせることで回転効率を高めているのだ。機能向上と美しさの高次元での両立は、初代からの伝統である。
搭載するムーブメントは、基本設計が1970年代にまで遡れる厚さ2.4mmの薄型自動巻きの傑作。テンプの振動に応じ、ゼンマイの巻き戻りを制御する脱進機を構成するガンギ車にも、耐衝撃装置が備わる古典の高級機でもある。その脱進機とテンプの振動を促すヒゲゼンマイは、加工精度と耐磁性とに優れたシリコン製を採用する。クラシックな名機が、最新技術でアップデートされた。初代<ブレゲ>は時計機構のみならず、新たな合金も発明した。新素材に積極的に取り組む革新性も、現代の<ブレゲ>は受け継ぐ。
photo: Masahiro Okamura
text: Norio Takagi
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