【インタビュー】藤原ヒロシに訊く、ファッションデザイナー オオスミタケシと<PHENOMENON/フェノメノン>の実像
2021年1月、ファッション界に衝撃が走った。デザイナー、オオスミタケシ氏急逝。この一報を受けた誰もが衝撃を受け、そして悲しみに暮れた。
オオスミタケシ氏はヒップホップグループSHAKKAZOMBIEのBIG-Oとしてデビューを果たす一方で、1999年には<SWAGGER/スワッガー>、2004年には<PHENOMENON/フェノメノン>を立ち上げファッション界でも大きな注目を集める存在に。2010年からは東京コレクションにも参加、コレクションシーンに残した功績も計り知れない。そんなオオスミ氏が手塩にかけてきた<PHENOMENON>は、2016年を最後に活動停止していたが、今年にかけてリブートを果たす計画だった。その直前でまさかの他界。この悲しい事実が変わることはないが、生前オオスミ氏が残した作品を引き継ぎ、ブランドは継続することを決めた。そして、この秋登場する<PHENOMENON>のアーカイブコレクションと、<MCM>とコラボレーションで展開してきた<MCM by PHENOMENON>のパーマネントレーベル「P+M(PHENOMENON+MCM)」のコレクションについて、兼ねてより交流の深かった藤原ヒロシ氏にインタビューを敢行。オオスミタケシと<PHENOMENON>、この2つをキーワードに貴重なエピソードをお話頂いた。
*三越伊勢丹オンラインストアでは、<P+M>は9月29日(水)12時頃販売開始、<PHENOMENON>は店頭のみのお取り扱いとなります。
ゴリゴリのヒップホップじゃなくてファッションのカルチャーから来ている人なんだなと思いました
——お二人の最初の出会いは雑誌の対談ですか?
そうかもしれないですね、初めて会って話したのは。オオスミくんの存在は知っていたんですけど、割とヒップホップとかからは離れていた時期だったので。この後すぐにってワケではなかったんですが、たまにご飯に行くようになりました。DEPT(デプト)のエリちゃんとも仲が良くて。エリちゃんとオオスミくん、吉井さん(<ミスタージェントルマン>デザイナー)と4人でご飯食べに行ったりとか。そういう誰かと一緒っていうケースが多かったかもしれません。そこで仕事っぽい話はしなかったです、普通の話が多かった。ただ、定期的にご飯は食べに行ったりしていましたね。年に1〜2回だと思うんですけど。
<SWAGGER>時代というかシャカゾンビをやっている頃は、<SWAGGER>もそうですけど、もっとヒップホップっぽい感じだと思っていた。それだけに<PHENOMENON>は全然そうじゃなくてもっとトレンドっぽい感じだなぁとちょっとビックリしたんです。ファッションのカルチャーから来ている人なんだなと思いましたね。
——こちらは当時(2003年)の<SWAGGER>のムック本です。お二人が対談された雑誌と同じ年に出たものです。
(SWAGGERマガジンを見ながら)懐かしいなぁ、当時のスターたちですね。
<PHENOMENON>は最初から割とエッジーなファッションぽいスタイルだったんですか? ヒップホップっぽいものは無かったんですか?
——立ち上がりの最初はヒップホップの要素も満載でした。
そうなんですか。でもこれ(当時の<PHENOMENON>のカタログ)で見ると全然違いますね。理由はなんだったんですか?
——<SWAGGER>がヒップホップで、<PHENOMENON>は自分が本当に着たい服を作っていたんです。
その頃結構びっくりした覚えがあります。東コレの頃は完全にファッションでしたもんね。最初に会った時とはイメージが全然違っていた。海外のブランド、ファッションに憧れみたいなものがあったんですかね。個人差はあるのかもしれないですが、例えばヒップホップにすごいハマってそこが一番良い場所だったらそこで止まると思うんですよね。一方で、始まりはパンクでもヒップホップが好きになる人もいれば、ハウスが好きになる人もいると思うんです。僕らが当初見ていたオオスミくんはB-BOYの感じ、この文脈から来ているものだとばかり思ったんですけど実際はそうじゃなくて。違う好きな物の方に移動していったっていうのは、僕もそういうタイプなので分かるのですが、同じ様な感覚の人なのかなって思ったんです。
——そういう意味でオオスミさんは本当にヒロシさんに憧れがありましたね。
(SWAGGER時代のスタイルを指して)この頃は全く感じなかったですけどね(笑)。でもお見舞いに行った時に、病室だししっかりでもないけど色々な話をして。その時に(憧れていたことを)伝えられました。コレクションも一緒にやらせてもらったりもしたので。まだコロナが広まる前だったし退院出来そうなので遊びにいきましょう、とか言っていたんですけどね。どんどん悪くなってしまった。亡くなった後すぐにオオスミくんと近しい人たちから連絡があって色々な話をしました。元気になる前提だったので、(オオスミくんが)冬物の洋服をいっぱい買い物していて、大きいサイズがいっぱい届くって話も聞いたり。面白いって言うと不謹慎かもしれないですが、ちょっと良い話だなぁと。洋服がすごい好きだったんだなって。
PHENOMENONという名前が残って新しいデザイナーで展開しても面白いかもしれない
——ここからは今回発売となるアイテムについてお伺いします。当時の洋服を復刻しているアイテムと生前デザインした2レーベルの展開をこの秋に発表することになりまして、LOOKもご覧頂けたらと。これは当時の復刻と新作なんですね。今後<PHENOMENON>はどうなっていくんですか?
——2ブランドともに今後も継続していく予定です。
<PHENOMENON>という名前が残って新しいデザイナーが入って展開しても面白いかもしれないですね。日本ではこういうケースがまだ定着していない気がするから。海外では割とスタンダードだけど、日本はほとんど実例が無いから面白そうな気がします。<PHENOMENON>と<MCM>が海外でどのくらいの展開をしているのか僕はわからないですけど、それも踏まえて考えればアリじゃないですか。誰か意外な人が入ればそれも面白いし。外国人とか。いい感じに、メジャーでもないんだけれどみんながちょっと「えっ、あの人が」っていう感じに思う様な人が入るのも面白いですね。
——今回のLOOKで気になったアイテムはありますか?
ローレル柄のTシャツ(*①)、あとはバッグですかね。僕はコラージュっぽい物が好きなので。このバッグは敢えて上からプリントしているんですよね? 良いですね(*②)。 このMA-1はなんとなく覚えているなぁ(*③)。うん、覚えています。今見ても良いですね。
——プライベートでのお付き合いが深かったとは思うのですが、<PHENOMENON>というブランドは藤原さんにはどの様に映っていますか?
先ほども言いましたが、オオスミくんがこのジャンルに踏み込むのは勇気が入ったんじゃないかと思っています。僕は逆にそういうのは好きだから。それこそ流行りものに飛びついてじゃないけど、そういう意見があったり、色々なノイズはあったと思うんです。でも自分がやりたいことをきっちりやる、という点ですごい良いなと思っていました。やっぱり結構な変化だから。もしかしたら、オオスミくんのことを本当のヒップホップスターだと思っていた人たちからしたら、「何チャラいことやっているんだ」って言う人たちがいたのかもしれない。でも、そういった外野の声も踏まえた上で、オオスミくんはこれをやるんだ、って決意で違う世界に入っていった。このことは評価というか、偉いなぁと思いますけどね。そこが凄く面白かったですね。
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