【特集】袖を通せば分かる、熊本県人吉〈HITOYOSHI/ヒトヨシ〉のシャツのクオリティ
「世界に通用する白シャツを」というコンセプトを掲げ、〈HITOYOSHI/ヒトヨシ〉は誕生しました。ドレスシャツは大量生産によるスケールメリットを利用したコストパフォーマンスを売りにするものという時代に、「量より質」のモノづくりを信じた同ブランドは今、世界に通用するシャツとして高く評価されています。
Ⅰ.倒産した親会社から独立した生産工場の躍進
熊本県人吉市は、鹿児島県と宮崎県に接する県最南端の地です。町の中心を球磨川が流れる、のどかで美しい山奥の町に〈ヒトヨシ〉のシャツ工場があります。この地域は7月の豪雨によって甚大な被害を受けました。幸い工場は小高い場所にあるため被災を免れましたが、町の人々はいまも復興に向けて日々努力を重ねています。2009年、手広く事業を広げていたアパレル本社が、ビジネスワイシャツの需要減少や、リーマン・ショックによる景気悪化によって倒産すると、16箇所もあった生産子会社の工場は閉鎖の危機に晒されます。
「当時、ここ人吉市の工場は、他の生産工場のなかでも高い技術を擁する重要な工場として機能していました。この技術を絶やしたくない、職人たちを守りたいといい想いから、工場を独立させることにしたのです。」
そう現社長の吉國武さんは振り返ります。そこから「世界に通じる白シャツを」の想いを実現すべく走り出したのです。独立後しばらくは、他メーカーの下請け工場として地道な経営を続けました。転機は2014年に訪れます。自社名をブランドに冠したシャツを発売すると、その仕上がりの美しさと着心地の良さから、〈ヒトヨシ〉の名が瞬く間に国内外に響き渡ることになったのです。
「ファクトリーブランドとしてのオリジナルシャツは、海外の高級シャツを取り寄せ分解研究することから始めました。細部がどのように作られているのか、手縫いの縫製技術を自分たちのミシンに置き換えるにはどうしたらよいかなどを検討するとともに、日本人の体型に合わせて型紙を調整しました。こうして完成したシャツが多く人から高く評価していただけていることは嬉しい限りです。」
〈ヒトヨシ〉シャツは人吉市のふるさと納税返礼品としても人気が高く、地方再生の好例として高く評価されています。太陽光パネルを利用した再生エネルギーを利用するエコファクトリーとして、その技術と経営の両面から注目されており、工場には多くの海外シャツメーカー、学生や企業が視察に訪れるなど、町の人々にとっての誇りにもなっているのです。
Ⅱ.高く支持される〈ヒトヨシ〉シャツのこだわり
〈ヒトヨシ〉のシャツは、海外の高級ブランドや専業メーカーの技術を、日本人職人の技術に置き換え、さらに日本人の体型に合わせた型紙作りの研究を重ねたことで実現したものです。そんな〈ヒトヨシ〉シャツが優れている点について、社長の吉國さんに語っていただきました。ドレスシャツをより美しく見せるステッチ
「ステッチ(運針幅)は、シャツの印象を左右します。ステッチが細かいほどシャツがやわらかくエレガントに見えるのです。一般的なワイシャツは3cm間に16〜18針ですが、〈ヒトヨシ〉シャツは21〜24針に設定されています。この細かなステッチによって、シャツ全体が洗練された雰囲気に仕上がります。」
衿元がフィットするカーブした台襟
「台襟は先端に行くほど上へとカーブしています。これは身頃や衿羽根に縫い付ける際に技術を要するのですが、こうすることでトップボタンを閉じたときに首周りの吸い付きが格段に上がりますので、ネクタイのノットの収まりがよくなります。ボタンを外したときにも襟元が美しく立ち上がりますし襟開きも少ないので、ノーネクタイが一般化した昨今でも、明らかな違いとなることがわかっていただけると思います」
衿羽が描く優雅なロール
「衿羽根を折り倒したときに、角をつくらずきれいな曲線を描いていることがおわかりいただけると思います。〈ヒトヨシ〉のシャツは衿羽根の上パーツを下パーツよりほんの少し長くすることで、このカーブが美しく出るように研究されています。また衿羽根の芯地は接着芯ではなく、衿端で縫い止めただけのフラシと呼ばれる仕様になっています。これによって衿羽根がやわらかくロールするので表情も優雅に見え、昨今の肩パッドのないアンコンタイプのジャケットにも似合います。」
やわらかさと美しさを実現する巻き伏せ本縫い
「〈ヒトヨシ〉のシャツは裏にも気を遣っています。脇の縫い目を裏から見ていただくと、縫い代がなく、生地端も内側に縫い込まれ、フラットに仕上がっていることがわかります。これは巻き伏せ本縫いという高度な技術です。縫い幅も細くすることで、ボディのシルエットがすっきり仕上がりますし、裏の縫い代が肌にあたってゴロつくことがなく、着心地もよくなります。」
留めやすく外しやすい鳥足付けのボタン
「ボタンはマザー・オブ・パールと呼ばれる天然の白蝶貝を使っています。プラスチックなど樹脂ボタンとは輝きは格別で、シャツの表情をぐっとドレスアップしてくれます。留め糸は海外のシャツ専業ブランドによくみられる、鳥の足の形のような鳥足付けを行っています。この留め方は支点を中心から少しずらしてボタンの片側が浮き上がることで、指を掛けやすくなり留め外しがしやすくなるという利点があるのです。」
袖先に行くにつれ細くなるカフス
「人間の腕は手首に向かって細くなっています。そのためシャツの袖筒も均一ではなく、手首に向かって細く作っているのですが、とくにカフス部分は手首にフィットするぐらい細くなるように仕上げています。こうすることで袖が多少長くても手の甲まで隠れてしまうような、ダボついた着方にはなりません。袖口が手首で止まるので、ジャケットを着たときに覗く分量も長すぎず、スマートな着方ができるようになっています。」
伊勢丹メンズで〈ヒトヨシ〉シャツをスマートオーダー
細部までこだわった〈ヒトヨシ〉のシャツは、伊勢丹メンズの「スマートオーダーシャツ」でも購入することができます。裄丈の調整と襟型・生地を選ぶことができ、襟型はレギュラー、ワイド、カッタウェイ、ボタンダウンの4種類、生地は定番の白やブルーの他、ビジネスに着やすいストライプ、カジュアルに着やすい色柄、季節感のある素材も用意しています。 「スマートオーダーシャツ」ご注文はこちらから
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Photograph:Yuichi Tajima・HITOYOSHI
Text:Yasuyuki Ikeda
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