サーフボードの細部に宿るクリエイティブの真骨頂
――伊勢丹メンズ館から展示のオファーが来た時の率直な感想を聞いた。
すごく嬉しかったです。日本のトップの百貨店だと思いますし、特にアパレル業界に身を置いていた時期もあったので、その凄さは承知していますから。あと、日本でここまで大きな展示をしたことが今までないので、日本の方がどんな風に感じてもらえるのかすごく興味がありますね。
――今回の展示で特に注目して欲しいのが、焼杉板を使ったサーフボードだ。
焼杉板は日本の伝統家屋で使用されるような素材で、黒い見た目が特徴ですが、炭化させることで紫外線から守られ耐候性・耐久性が高まるのが魅力です。こういった素材選びや加工技術は、もともと日本の伝統工芸が好きなので、日本に行った際に現場に足を運んでチェックしたりして情報を得ています。一つの伝統技法を目にしたら、たくさん知らないことが出てきますし、それを調べていくとすごく楽しいんですよね。僕の作品作りは、そういったことの積み重ねだと思います。組み込めるものは極力組み込みたいですし。あと今回は金継ぎのサーフボードも見て欲しいのですが、見どころは金継ぎ部分だけじゃないんです。このボードには水晶を砕いたものを樹脂と混ぜ合わせて顔料として使っているので、よく見ると表面に光沢があってすごく綺麗なんです。そこから板を壊して、さらに金継ぎをしています。
――表部分ばかりを見てしまいがちなサーフボードだが、今回の展示では全体をくまなく見て欲しいという。
後ろを含めて、ディテールも見てみていただきたいです。あとは細かい部分で言うと何層にも重なってできている作品なので、角度を変えて見てほしいですね。微妙に色や柄が違って見えるんですよ。絵と同じで、キャンバスに接近して見るのと離れたところから見たり、角度を変えて見ることで作品に対する印象ってぜんぜん違うじゃないですか。感覚的にはそれと一緒です。
――では今回の展示を通じて伝えたいこととは?
日本には技法や手法など素晴らしいものがたくさんあって、そういうものがこういう形で表現されているということをまずは知って欲しいです。また一方では、サーフボードはサーフィンに使うものっていう概念がありますが、そうではなく、ここではサーフボードだけでなく、全てのものは「必ずこうじゃなきゃいけない」っていうことはないですよ、という大きなメッセージも込めています。
――最後に、今後のアーティストとしてのビジョンを聞くと、間髪入れずに答えてくれた。それは「ホテルを作ること」。
ホテルって衣食住、全てのもので五感を刺激できますし、クリエーションの観点から言えば0から100まで全部できちゃうんです。ホスピタリティも含めて全部入っているから面白いと思うんですよね。小さくていいから古いシャトーを改造して、とことんこだわった素敵な空間を作りたいです。さっき話した6都市のどこかに作りたいです。
――ちなみに先ほどから出ている、いずれ進出を考えている6都市とはどこなのか聞いて見ると、最後にいかにも岩波さんらしい自由な答えが聞けた。
ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ロンドン、東京…。実は、最後の6都市目は未定なのです。だってまだ世界中を見れていないですから(笑)。これからじっくり決めたいと思います。
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Text:Kei Osawa
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