全ては目標のため。シンプルな創作意欲が導いた新たなクリエイティブ


――目標だけを念頭に置いてシビアに活動をするようになった結果、それまでとは全く異なったスタンスで仕事に臨むようになったそう。

 

ある種、仕事に対して感情不要のスタンスになったので、良くも悪くもあまり深くは考えずに、自分の目標に向かって作るということだけをイメージしてやってきています。ただ物作りをするにあたって、一つだけこだわりがあるんです。それは僕が日系アメリカ人なので、これまで日本とアメリカの橋渡し的な存在となって仕事をしてきて、お互いの国の魅力を世界に正しく発信するということ。二つの国の魅力を知ってもらうということが、使命感みたいなものになっているんですよね。両方の文化を体験している身としてはそれをしないといけないと思っています。クリエイティブもせっかく自由に拘れるわけですが、それを作品にどう組み込めるかって考えた時に、日本の伝統工芸や技法とか、そういうものを少しでもいいから自分の作品に組み込めたらなって。そして外国の人に興味を促せるようなものを作れて、なおかつそれを自分なりにアレンジができたら素敵ですよね。

 

――前述のように、店舗なのかアトリエなのかはさておき、世界6都市に自らの拠点を置くという夢を抱えている岩波さん。アート作品は、それぞれの国の特色を生かしたものを作っていくという。今回展示するサーフボードは、LAをモチーフにした作品だ。

ロザンゼルスのアトリエ 


他の都市もそれぞれプロジェクトとして進めていますが、今回はサーフボードを使った作品を展示しようと思っています。LAの中でも海側のエリアに住んでいたことがあるのですが、その時によくスタンドアップパドルをやっていたこともあり、自分にとっては身近なものでしたし。

 

――サーフボード作品の製造過程に、岩波さんならではの特色を取り入れている。


ファイバーグラスが固まり強固になっていったところに5~6層ほど塗るのですが、その際、僕の作品では樹脂を何層にも重ねて塗ったり、間には金箔や薔薇の花などを挟み込むなどして表現しています。今回のテーマは『BETWEEN LAYERS』なのですが、これはサーフボードの特徴が、漆塗りや蒔絵のように何層も樹脂が重なり、それぞれの層の間に素材を閉じ込めているものということが前提としてあります。僕は各層自体にも、それぞれ個性・意味があり、全てが重なることによって完成されていると考えており、そこへ日米の文化や日本の伝統工芸の素晴らしさ、さらに想像と創造の自由さをアイデンティティー、オリジナリティーで固めています。今回の展示では、様々な想いを層の間に閉じ込めている作品として見ていただけたら嬉しいです。