内澤崇仁(androp)× 長谷川裕也(Brift H)──音楽と靴磨き、異なる創造性の出会い。
長谷川 (靴を手に)このオールデンはヴィンテージで買われたんですか。
内澤 これは整形靴の種類ですよね、確か。
長谷川 モディファイドラストって、元々はそういうものですね。おしゃれのためではなくて。
内澤 長谷川さんの過去のインタビューにあった、バー形式にして、靴を脱いでもらうことによって中を確認できるのは理にかなっていてよかったという話が印象的でした。
長谷川 以前路上で靴を磨いていた時、足を出して磨かせるというのは気がひけるという方が結構いらっしゃったんです。それに、脱いでもらったほうが、より完全に磨けるので。
内澤 靴クリームとかも独自に開発されたんですよね。
長谷川 普段は靴クリームなどをつくっていない化粧品会社に依頼しました。
──内澤さんも道具である楽器に、こだわりはありますよね。
内澤 道具は自分が使いやすいものをこだわり抜いて、ここまでたどり着いたみたいなところまで行かないと。
長谷川 何本目のギターですか。
内澤 何本なんでしょう。いくつも触ってきた中で、インディーズデビューする際に、音楽だけでやっていくぞと買ったのが、今も使っているギター、1959年のフェンダー・ストラトキャスターです。当時けっこうな値段で、クルマが買えるくらい。でも自分の尻を叩くために買いました。
長谷川 かっこいい。やっぱり音、違うものですか。
内澤 違いますね。時代を生き抜いてきた強さがある。長谷川さんは確かパンクがお好きとか。
長谷川 エピタフ系、NOFXとかですね。今も聴いてますよ。内澤さんのルーツは。
内澤 僕は洋楽はパンク系、高校時代に聴いたグリーン・デイが始まり。
長谷川 いいですよね、『ニムロッド』。
内澤 そうです。その前に『ドゥーキー』ってアルバムがあって、そのあたりです。
長谷川 本職の方を前に言うのもなんですけど、僕はロックミュージシャンが世界で一番かっこいい職業だと思っていて。僕自身は寿司職人みたいなところがあって、目の前のひとりのお客様を最大限に満足させたいとやっているんですが、音楽がすごいのは、内澤さんが歌うことで、何万人を感動させることができるじゃないですか。その力は、靴磨きにはない。
内澤 僕は気持ち的には、靴磨き職人ですよ。何万人、何千人の前で演奏したとしても、1対1の気持ちでやりたいですね。自分自身音楽に感動して、音楽にはこんな力があると、音楽をやらせてもらっているわけです。そして、自分の鳴らす音が聴いてくれる人の心を揺らすのに出会いたいとも思っています。でも関係性が浅かったりすると、ぜんぜん心に響かない。こうやって1対1で話すほうが、深くまで話し合えるので。
長谷川 その感じで何万人の前でもやれるようにしたいと。
内澤 そうです。
photo:Hirotaka Hashimoto
Hair&Make-up:Maki Sakate(vi’s)
Text:Yukihiro Sugawara