いま注目のショップが軒を連ねる。 シューシャイン・ アーケードに集う 靴磨きたち。
Brift H 長谷川裕也
靴磨きブームの仕掛け人。
2004 年から路上で靴磨きを始めた長谷川裕也氏が、「日本の足元に革命を」というスローガンとともに2008 年に東京・青山でスタートした靴磨き店。世界で初めてカウンタースタイルを導入し、これまでの靴磨きのイメージを覆すスタイルでたちまち話題となり、各種メディアで紹介された。さらにロンドンで開催された第1回のWorld Championships in ShoeShining でトップに輝き、世界的にもその存在が注目されるように。長谷川氏は現在も変わらず同店にて靴磨きを行う一方、自社ブランドのシューケアプロダクトの開発、書籍『靴磨きの本』の上梓、新たな靴磨きの業態『ブリフトスタンド』の監修など、さまざまに靴磨きの普及に取り組んでいる。
Shoe Care&Order Room FANS. 三村ミチオ
革のケアを中心に行われる靴磨き。
『M. モゥブレィ』などのシューケアプロダクトを扱うR&D が営む、シューケアとオーダーシューズのショップ『ファンズ浅草本店』。同店の三村ミチオ氏は、同社入社より3 年間、靴磨きに携わっている。三村氏は第1 回の靴磨き日本選手権大会出場時に確立した、つま先から踵部までのアウトサイドを光らせる「イルミナシャイン」で知られているが、重要なのは革のケアと語る。鏡面磨きの注文にももちろん応えるが、それより汚れ落しに時間を長くかけるのが同店での特徴だとも。コードヴァンなどはワックスを少なめに、乳化性クリームと馬毛のブラシで仕上げていくという。ISETAN 靴博には銀座三越店の岡嶋翔太氏とともに参加する予定。
GAKU PLUS 佐藤我久・河村真菜
靴磨きはLIVE だ。
名古屋名物「ナナちゃん人形」前での路上靴磨きを経て、2015 年にクラウドファンディングで靴磨きサロン『GAKU PLUS』を始めた佐藤我久氏。2017 年にはヴィンテージビルの現在の店舗に移転し、さらに今年は東京のリファーレ自由が丘店店内で『GAKU PLUS TOKYO』をスタート。東京店には弟子の河村真菜氏が常駐している。靴磨きをライブと表現する佐藤氏は、顧客とのマンツーマンのコミュニケーションを何より大切にしてる。もともと靴に関する職業を探す中で、常に人と接する靴磨きに魅力を感じ、志したのだそう。書籍『靴磨きスタートブック』の監修に携わるなど、靴磨きに対する思いは熱い。
GMT FACTORY 冨樫輝好
修理店ゆえのベースケア。
『トリッカーズ』や『ジャラン スリウァヤ』のインポーターとして知られるGMT が営むケア& リペアショップ『GMTFACTORY』。代々木上原店オープン以来、同店でシューケアを担当して8 年になるという冨樫輝好氏。得意とするのは、この店に加わる以前より行なっていたというベースケア。本来修理店なので、靴を長く持たせるためのケアに注力していて、汚れ落としや保革、キズの修復などを、各種の革で行なっている。鏡面磨きはそうしたベースケアを経て行うことが多く、その姿勢が評価されてか、最近はビスポークシューズの持ち込みも増えているそう。ウィメンズシューズのケアのスキルも豊富で、ISETAN 靴博ではぜひペアでの来店を、とのこと。
92-NINTYTWO- 安部春輝
もっと気軽にポップな靴磨き。
2017 年4 月に広島のエディオン蔦屋家電内にオープンした靴磨き&リペアショップ。代表の安部春輝氏は介護の仕事に従事する傍ら、独学で靴磨きを修得し、24 歳のとき日本で最初のAVEL 社公認SAPHIR シューケア トレーナーに認定される。そして2016 年には広島初のカウンタースタイルの靴磨き店『BURIE(ブリエ)』をオープンし独立した。現在『92̶NINTYTWO̶』は広島市内に2 店舗を展開し、中国地方だけでなく福岡などからも顧客が訪れるという。安部氏自身も地方や海外でのイベントに参加することも多い。また、昨今どこか文化性を帯びつつある靴磨きに関して、例えば散髪のように、もっと気軽に、ポップに提案したいと安部氏は語る。
OAK ROOM スティーヴ・ハン
台北きってのハイセンス・ショップ。
日本やヨーロッパのメンズファッション事情に精通したロビン・チャン氏が台湾・台北でスタートした、紳士靴を中心とした品揃えのセレクトショップ。ジョン ロブやクロケット&ジョーンズといった高級既製靴の他にリングヂャケットなどのウェアやレザーグッズなども幅広く展開し、さらに海外のブランドや職人を招いての、靴や服飾のトランクショーなども積極的に行なっている。シューケアや靴磨きに関しては、ブリフトアッシュの長谷川氏のもとでトレーニングを受けたスタッフのスティーヴ・ハン氏がサービスを行なっている。スティーヴ氏は第1回の靴磨き日本選手権にも参加し、腕を披露していた。
THE WAY THINGS GO(TWTG)石見豪・寺島直希
ふたりの日本一職人の技。
2012 年に靴磨き職人石見豪氏が設立。出張靴磨き職人として約2万足の靴を磨き、その後2015 年に大阪・船場のヴィンテージビルにショップをオープン。2019 年には靴修理店ユニオンワークスと協業する形で東京にも店を構えた。石見氏は第1 回の「靴磨き日本選手権大会」で第1 位を獲得。さらに第2 回の「靴磨き日本選手権大会」では同店の靴磨き職人、寺島直希氏が第1 位となった。2年連続日本一に輝いた靴磨き店である。独特の店名は石見氏が愛好するアーティスト、Peter Fischli &David Weiss(ピーター・フィッシュリとダヴィッド・ヴァイス)が1987 年に発表した映像作品からとられている。店内には彼の美意識を反映する作品が散見される。
Y’s Shoeshine 杉村祐太
静岡と世界で活躍する靴磨き。
2014 年より靴磨き職人として静岡県で活動を開始し、2018 年に静岡市に靴磨き専門店をオープン。ショップオープンの同年に開催された第1 回「靴磨き日本選手権大会」では第3 位、そして今年3 月ロンドンで行われたWorld Championship inShoe Shining では見事優勝を果たした。トラッドファッションの好きの父親の影響を受け、高校時代より靴磨きをするように。大学時代には独学で靴磨きを研究するようになった。ワールドチャンピオンを獲得した最近は東京など静岡県外での活動も多いが、静岡市の繁華街にある地下1 階のショップは小ぢんまりと落ち着いた雰囲気で、ここを訪れることを楽しみにしているファンも多いそうだ。
*16日(月)は18時閉場になります。
Photo:Takao Ohta, Hirotaka Hashimoto
Text:Yukihiro Sugawara