インスタグラムは、雑誌の面白さを伝えるのに最高のツール


中武 店頭を見ていると、まだ80年代を探している人が多いですね。ちょっと前は、フレンチアイビーやアルマーニを探している人が多くて、年代というよりもっと局地的な感じですね。
そういうお客さんに話を訊くと、「ネットには情報はたくさんあるが、表層的な情報しかない」とみんなが言います。

柴田 そうなんですよね。物事のルーツというものはネットには驚くほどありません。探そうと思うと本当に大変で、古ければ古いほど情報はない。

中武 ネットはコンテンツとして、誰かが意図的に保とうとしないと無理なのかなと思います。たとえば20年後ぐらいに検索サイトで「令和元年」を調べても、表面的な情報しか検索上位にこないはずです。

柴田 そう考えると、「今の情報がストレージされているのは電子なのか書籍なのか」という疑問に行き着きます。過去に興味がある未来の人はどうたぐり寄せるんでしょうか。

中武 柴田さんがおっしゃることは難しい問題ですね…。


画像はマグニフのインスタグラムより(@magnif_zinebocho

柴田
自分が最近意識しているのは、「未来に何をどう残すのか」なんですが、ファッションは残しづらいジャンルになってきていると思います。だから中武さんの仕事は貴重で大事だなと。
マグニフのインスタグラム(@magnif_zinebocho)も凄い人気ですよね。約27千人ものユーザーからフォローされている。

中武 ファッション誌って、あたり前ですが当時の流行がヴィジュアルとして表現されているので、インパクトを得やすいのだと思います。

モデルの服装や髪型はもちろん、誌面のフォントや配色、特徴的な煽りコピー、広告ページなどの全てに流行が凝縮されています。「昔はこうだった~」と語るブログやツイートよりも、ダイレクトに画像で表現できるインスタは、雑誌の面白さを伝えるのにドンピシャなツールなのかもしれません。


また表紙だけでなく、小さな記事なども拡大して載せる事で、当時では見過ごされたような事象も、新しい意味や文脈で「発掘」する事ができます。

柴田 80年代、90年代のファッション誌は、本当に時代を映す鏡でした。

中武 時代をありのままに伝える役割を担っていた雑誌の魅力は、インスタでより伝えやすくなりました。

柴田 インスタでの広がりを“発見”したことで、古書の魅力は益々大きくなっていくのですね。

中武 ありがとうございます。雑誌好きに喜んでもらえることを出来る限り続けたいです。



柴田 この「名著から紐解く達人のファッション考」は、実は、「貴方の根っこ見せてください」的な企画で、中武さんが持って来た2冊は、王道だけど性格が反対で、根っこ=ルーツとすると意外でしたが、お話を聞いて、なるほどなと納得しました。

中武 柴田さんは、ぜひ新しい時代の『TAKE IVY』を伊勢丹メンズで作ってください!

柴田 ありがとうございます、頑張ります!





■Amver 古書店 店主 中武康法(Yasunori Nakadake)
1976年宮崎県出身。大学入学と同時に上京。それから間もなくして、世界的な古書店街である神田神保町にて古書の道へと進む。10年以上の古書店勤務を続けるなかで、過去のファッション雑誌を顧みることの面白さと重要性を見出してゆく。2009年、同じ神保町の地に古書店「magnif/マグニフ」ヴィンテージマガジンを中心としたその品揃えは瞬く間に注目を集め、開業から今日まで多くのマスコミに取り上げられる。特にメンズファッション関連の品揃えには定評があり、服飾メーカー、デザイナー、ファッション雑誌編集者、そして多くの洒落者や趣味人たちが足繁く通う店となっている。最近ではアパレルショップ、百貨店などのイベント協力など、その活動の幅は更に広がりを見せている。

magnif(マグニフ)
東京都千代田区神田神保町1-17
TEL・FAX : 03-5280-5911
OPEN:11:00~19:00(定休日:不定休)


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