自分の気持ちの7~8割が詰まっている本


柴田 今日はアラン・フラッサーの名著で、ファッション業界人なら必ず目を通すといわれている本『Dressing the Man: Mastering the Art of Permanent Fashion』をお持ちいただきましたが、どのページが、もしくはどのカットが山下さんに強く刺さったのか教えてください。

山下 この本は着こなしのネタ帳のようなもので、自分の憧れである30年代の英国スタイルが細かく載っています。30年代のダンディ・スタイルが一目瞭然だったり、自分の気持ちの7~8割が詰まっています。昔の伊達男の着こなしや映画スターの装いも好きですね。

柴田 この本から派生して、行動に移されたことは?


山下 2年前にサヴィルロウの老舗テーラー<ANDERSON & SHEPPARD/アンダーソン&シェパード>に初めて足を踏み入れてスーツを作るようになりました。 <アンダーソン&シェパード>は昔のハリウッドスターやチャールズ皇太子など、いわゆるダンディといわれる男たちご用達のテーラーハウスです。

自分的には「浅草の洋食屋さん」のようなもので、今はテーラーの技術が上がっていて、そういう観点から見ると究極とは言えないのかもしれませんが、100年以上築き上げてきた様式美は明らかに違う。老舗ならではの様式美というか、進化しない良さもあります。

柴田 なるほど。山下さんは仕事柄、本を買うことは多いですよね。

山下 ファッション本も多いですが、ドイツの写真家のアウグスト・ザンダーの写真集や、トルコやモロッコの民族衣装の本など、アート本というより資料性の高い本を買うことが多いですね。

柴田 山下さんは取材でさまざまな国へ行かれていますが、国内外問わず、オススメの本屋をぜひ教えていただけませんか。

山下 古本屋街だと、神保町を超えるところはないですね。Amverの中武康法さん(https://amvai.com/amvar/6)の『magnif』のような本屋は世界中探してもどこにもありません。国外のオススメだと、ミラノの『10コルソ・コモ』の上の本屋は写真集などビジュアル書が充実していますね。あと、ミラノ郊外のプラダ美術館にあるミュージアムショップ、台湾で『メンズプレシャス』を扱ってくれている誠品書店にも注目しています。