2019.03.15 update

新たなシンボルとなり、メンズ館らしさを表現した場=SIとは

3月16日(土)、「男として、そして、人として -As a man , and As a human- 」を新ステートメントとして掲げ、お客さま一人ひとりのご要望に寄り添い、”〇〇らしさ”を叶えるメンズファッションストアとして生まれ変わるメンズ館。

これまで「男」であることを前面に打ち出してきたメンズ館であるが、社会やお客さまの価値観の変化に伴い、「男」である前に「人」であることを改めて見つめ、”開かれた場所”でありたいと考えている。

メンズ館創設当時は、エントランスを持つことを強みにし、各階にホールと床の間をつくり、一輪挿しを装飾した"壁"="面"でお客さまをお迎えしていた。

そんなお迎えの場を、"面"から"空間"へと進化させたメンズ館らしさを表現した場=SIが新設される。各フロアを縦に繋ぐように、1階・2階・4階・6階に立方体の空間が存在し、初年度は新ステートメント「男として、そして、人として」をアーティスティックにビジュアル化した作品が展示される。





SIにおける展示のテーマは、「文体物体身体解体練習-EXERCISES in PHYSICAL THINGS- 」。

デジタルなものが世の中に台頭している現在において、様々な"フィジカル"を扱うリアル店舗ならではの価値を見つめ直し、「文体」・「物体」・「身体」・「解体」という、人間そのものを表現した4つの"体=フィジカル"で具現化。



4つの”体”を通して、「自分らしさ」や「男らしさ」とはいったい何であるのか。
”ある”ものなのか、”なる”ものなのか。”いる”のか、いらないのか。
簡単に口にしてしまう「〇〇らしさ」という概念を、様々な角度から見つめ直している。

「文体練習」は、自分らしさを言葉と文体のバリエーションと差異
「物体練習」は、どんな距離、どんな態度、どんな意味で物と付き合うか
「身体練習」は、男の身体を現代のアーティストたちはどう表象するのか
「解体練習」は、衣服は男らしさと評されるあり方にどう影響を及ぼしたのか

「らしさ」と呼ばれるものの可能性と限界、時代性と虚構性、過去と未来など、
SIの展示物を通して、みなさんが自分の「らしさ」を考え、
そのらしさとファッションの関係を楽しむきっかけとしての機能も期待している。



それぞれの考える"〇〇らしさ"を通して、メンズ館の持つ多様性や、お客さまへ様々な”〇○らしさ”を提案・デザインしていく姿勢を表現している。

今回そのディレクションを担当したのが、ブックディレクター/編集者である山口博之氏だ。





山口博之
ブックディレクター/編集者。1981年仙台市生まれ。立教大学文学部卒業。大学在学中の雑誌「流行通信」編集部でのアルバイトを経て、2004年から旅の本屋「BOOK246」に勤務。06年、選書集団BACHに入社し、16年に独立。good and sonを立ち上げる。ルミネ本社オフィスのライブラリーや新木場のCASICAをはじめ、病院から個人邸まで様々な施設のブックディレクションを手がけている。また各種単行本からカタログまで編集、執筆、企画なども行っている。三越伊勢丹の花々祭や彩り祭などのクリエイティブディレクションや、ブランドのネーミングからステートメントまでコピーライティングも行い、幅広い分野で活動している。ハニカムや食べログマガジンなどでブックレビューを連載中。


「文体物体身体解体練習-EXERCISES in PHYSICAL THINGS- 」

 

“自分らしい”とはどういうことなのでしょうか。これが私だとはっきり言える人は素敵ですが、揺れながら、変わり続けながらも自分という存在と向き合う人もまた魅力的です。小説家から歌人、哲学者、ファッションデザイナー、劇作家、ラッパー、プロレスラーまで、性別も職業も様々な43名による43の自分らしさについての言葉と文体を記した本を制作。イセタンメンズは、多様なみなさんの“らしさ”と個性と向き合いながら“イセタンメンズらしさ”を追求していきます。


25「可変性」森山開次

【タイトル・著者】
01「特定条件」稲村弘・02「箇条書き」三原康裕・03「あなたらしさ」志磨遼平・04「凹凸」郡司ペギオ幸夫・05「鏡」菊地成孔・06「失敗」千葉雅也・07「筋肉」棚橋弘至・08「意識/無意識」為末大・09「素直さ/正しさ/苦悩」上妻世海・10「観念の増殖と進化」吉川浩満・11「天ぷら/フライ」木村草太・12「食い意地」清水ミチコ・13「見えることば」齋藤陽道・14「季語」佐藤文香・15「ニホン語」温又柔・16「あやふや」星野概念・17「何者」佐久間裕美子・18「脱呪い」あっこゴリラ・19「脱強制」武田砂鉄・20「NEOかわいい」CHAI・21「ルーティン」有働幸司・22「好きなもの1」清水慶三・23「好きなもの2」鈴木大器・24「変わらなさ」片山勇・25「可変性」森山開次・26「影響関係」町田康・27「影響と教育」有田一成・28「生と死」清水文太・29「不死身」谷中敦・30「季節と狩猟」奥野克巳・31「苦手」尾花大輔・32「表札」石垣りん・33「感受性」茨木のり子・34「孤独と寂しさ」國分功一郎・35「視線の上書き」鈴木みのり・36「毒/薬」蘆田裕史・37「不満」岡田利規・38「怒り」夢眠ねむ・39「倫理」望月優大・40「ありのまま」エリイ・41「ネガティブ」ミッツ・マングローブ・42「正直さ」槇原敏之・43「虹」松中権





 

男らしさと一般的に呼ばれる抽象的な概念は、精神的にも身体的にも、時代や国、地域によってそのあり方は大きく違っています。物理的なものからヴァーチャル/データ的なことまで。いまを生きるアーティストが男性を表象する時、どんな考え方や方法で、どんな身体を表現するのでしょうか。彫刻家淺野健一は、能などの伝統芸能の世界観を、リアルとヴァーチャルを行き来する「憑依」「一体化」というテーマのもと、ゲームやCG以後の身体感で彫刻を生み出しています。



『IKIGAMI(INCANATION)2008』
淺野健一
彫刻家。日本の伝統芸能に「憑依」「一体化」をテーマにしながら、木彫にポップカルチャー的要素を融合させ、現代アートヘと昇華させる。小さい頃に連れて行かれた寺や神社で感じた感覚が原風景となっている。祈りや畏れの心が向けられた厳かな空間に、何かが潜んでいそうな緊張感や神秘性に魅かれていた。仏像修復に携わる中で木彫や漆、膠を使った古典技法を獲得。生まれ育った尾張地区は、江戸時代からカラクリ人形師を輩出し、職人の技が継承されてきたところである。その影響からか、球体関節を使い、ひもで操るカラクリの技を学び、作品は動く木彫ヘと進化していく。その後もモーターでカラクリを動かす茶運び人形の「電波式」から、小型カメラを内蔵し視覚的にー体化する感覚が味わえる「武神一号機」ヘと、果敢に現代のテクノロジーを木彫に取り入れていく。淺野は柔軟な発想と独創性で日本の伝統芸能を現代的センスで蘇らせている





 

フランス革命期の「アビ・ア・ラ・フランセーズ」から20世紀初頭の「ラウンジスーツ」まで、現代のスーツへと至る流れがあります。装飾から実用へと向かう流れにあって、ジャケットはその構造や生地、縫製の方法によって男性の身体を形づくっていた側面もあります。フランス革命期から現代まで服の半分を分解、展示する「半・分解展」の長谷川彰良とともに、100年以上前の服を半分解体/分解し、ディテイルから男性の装いとらしさの関係性を還元的に探ります。





長谷川彰良
衣服標本家。1989年生まれ。100年前の感動を100年後に伝えるために、全国で「半・分解展」を行う。「半・分解展」は、フランス革命から第二次世界大戦までの衣服を半分分解し、標本にして行う展示。実際の展示では、試着可能な造形物が並び、100年前、200年前の着心地を実際に体感することができる。目に見えない着心地や内部構造から美の根幹を探り、自身が涙を流した「感動」を具現化し続けている。2016年10月、最初の「半・分解展」を開催。東京、愛知、京都を巡回し1400人以上を動員。 18年5月、「半・分解展 2018」を開催。着心地を体感できる展示へと深化し、東京、愛知を巡回し2000人以上を動員。19年4月「半・分解展 2019」を開催。具体表現から抽象表現に舵を切り、京都、福岡を巡回。 20年5月「半・分解展 2020」を東京で開催予定。




 

様々なものがデータ化され、道具が集約されていく現代にあって、人と物の関係はファッション同様、様々に変化しています。さらに、断捨離やシンプルライフ、片付けの魔法など、増え続ける物との関係を見直し、物を減らしていくことは限りある暮らしの空間にとって必要なことでもあります。人は常に様々な選択をしています。物を選ぶ時、買う時、贈る時、捨てる時、拾う時、飾る時、使う時、そして仕舞っておく時も。同じ物を持っていたとしても、持ち主との関係は一様ではありません。ある特定のテーマで物を選ぶ時、その人と物との付き合い方が浮き上がります。物との関係から、自分らしさの可能性を探ります。



毛利悠子
美術家。1980年生まれ。磁力や重力、光など、目に見えず触れられない力をセンシングするインスタレーションを制作。第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞(2017)をはじめ、数々の賞を受賞。リヨン・ビエンナーレ(2017)、アジア・パシフィック・トライアニュアル(2018) など国内外における国際展に多数参加のほか、2018年には、英国カムデン・アーツ・センター、および十和田市現代美術館にて個展を開催。現在、東京芸術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専任講師。




金氏徹平
美術家。1978年京都府生まれ、京都市在住。2001年京都市立芸術大学在籍中、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)に交換留学。2003年京都市立芸術大学大学院彫刻専攻修了。現在、同大学彫刻専攻講師。日常の事物を収集し、コラージュ的手法を用いて作品を制作。彫刻、絵画、映像、写真など表現形態は多岐にわたり、一貫して物質とイメージの関係を顕在化する造形システムの考案を探求。個展「金氏徹平のメルカトル・メンブレン」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、2016)、「四角い液体、メタリックなメモリー」(京都芸術センター、2015)、「Towering Something」(ユーレンス現代美術センター、2013)、「溶け出す都市、空白の森」(横浜美術、2009)など国内外での展覧会のほか、舞台美術や装丁も多数。あうるスポットプロデュース「家電のように解り合えない」(2011)、KAATキッズ・プログラム2015 おいしいおかしいおしばい「わかったさんのクッキー」(2015-2016)での舞台美術をはじめ、「tower(THEATER)」(2017)では自らの映像作品を舞台化した。2019年はKYOTO GPAPHIE、瀬戸内国際芸術祭への参加、NYでの個展が予定されている。




青田真也
美術家。1982年大阪府生まれ、愛知県在住。身近な日用品、大量生産される既製品や空間など、さまざまな素材のものをヤスリで削り、見慣れた表層を奪い去る作品シリーズを中心に、ものの本質や価値を問い直す作品を制作。主な展覧会に「あいちトリエンナーレ2010」長者町会場(名古屋)、2014年「日常/オフレコ」KAAT 神奈川芸術劇場(横浜)、「MOTアニュアル2014」東京都現代美術館、「Shinya Aota 2014」青山|目黒(東京)、2015年 個展「A.B.」Utrecht/NOW IDeA(東京)、2016年「雑貨展」21_21 DESIGN SIGHT(東京)など。また2015年より名古屋港エリアのアートプログラムの共同ディレクターを務める。