INTERVIEW to Shoeshiner Vol.3 長谷川裕也(Brift H)|シューシャイン・キャラバンの影の仕掛け人
メンズ館地下1階=紳士靴のハイエンドコーナーのリニューアルにともない、新たに誕生したシューケアカウンタ ー。サロンのように人が集まる空間を目指し、そのカウンターで昨年11月より始まったイベントが「シューシャイン・キャラバン」だ。気鋭のシューシャイナーを月替わりで招聘 するというもので、その一人として登場する長谷川裕也はじつはキュレーターとして人選にも当たった。言わずと知れたBrift H(ブリフトアッシュ)の代表である。
「Brift H」を主宰する靴磨き職人、長谷川裕也氏。
「11月はワールド・シューシャイン・チャンピオンシップ2018を制したシンガポールの ジョン・チョンさん、12月は日本のチャンピオンということで石見豪さん(第一回靴磨き 選手権大会優勝者)に登場してもらいました。で、1月はぼく。1月23日(水)から一週間、カウンターに立ちます*。最近、プロレスにハマっているんで。1、2、3、ダァァァです (笑)」
2月以降は未定だが、候補としては第2回靴磨き選手権大会の優勝者や台湾屈指の紳士靴 専門店「オークルーム」のシューシャイナーなどを考えているという。
「モスクワからもひとり、連れてこようと思っています。ワールド・シューシャイン・チ ャンピオンシップの主催者が近々モスクワで大会を開催するんです。これに審査員で呼ばれているんで、そのチャンピオンをスカウトするつもり」
ワールド・シューシャイン・チャンピオンシップの第一回大会で映えある優勝を手に入れた長谷川は自他ともに認める世界屈指のシューシャイナーになった。その腕を見込んで、 バイヤーの福田隆史は新生ハイエンドコーナーの目玉となるイベント「シューシャイン・ キャラバン」のキュレーターを任せた。
「このようなチャンスを与えてもらい、たいへんありがたい。靴磨きが盛り上がっている機運は肌で感じていますが、まだまだ小さなマーケット。幸いなことに靴磨きの職人は横 のつながりもある。一緒に盛り上げようという思いを具現化することができました」
パンクの精神で、守りに入らず
「青山の骨董通りにブリフトアッシュをオープンして10年。所期の目標はほぼ達成しまし た。次の10年は、靴磨きを広めていく期間ととらえています」
年末年始はどうしても注文がたまると笑う長谷川は、職人を育てつつ、いまなおみずから職人として靴を磨く。かたわら、活動領域は想像もつかないほど広がっており、そのいずれもが好調に推移している。
化粧品メーカーとつくったオリジナルのクリーム「THE CREAM」はいまでは東急ハンズをはじめ全国のショップに卸すほどのブランドに成長したし、初の著書として話題となっ た『靴磨きの本』は早くも11刷目に突入した。駅ナカを舞台としたセカンドレーベル「ブリフトスタンド」はいよいよ本格出店が視野に入ってきた。昨年は靴業界にあらたに設立された協会の理事に就任……と、ほんとうに磨く時間があるのだろうかと茶々を入れたく なるくらい八面六臂の活躍をみせるが、現在は障害者の就労支援にも乗り出しているというから開いた口が塞がらなかった。
「障害を持つ方にも働く喜びを感じてもらいたいとの思いでパン工場をつくられたお客さまがいらっしゃいます。これがぼくの地元、木更津の方。で、彼らに靴磨きという職業も用意してやりたいといわれて」
商業主義に走ったロックに変わる音楽として若者に熱狂的に支持されたパンク。物心がつ いたころから親しんできた長谷川はかねがね「パンク精神で靴磨きを誇れる職業に」と語っていたけれど、一歩一歩どころか、十歩、二十歩の勢いで古い価値観をぶち壊してい る。
くだんの「シューシャイン・キャラバン」ではウィンドウのディスプレイも任されているのだが、テーマはずばり、パンクだ。
「いってみればぼくのアイデンティティですからね(笑)。髪を染めたのもそういうことです。さいきん、スーツで靴磨き、というのも浸透したので、ちょっとチャラい感じでい きたいなって思って。原点回帰、初心忘るべからずの意味合いもあります」
Photo:Tatsuya Ozawa
Text:Kei Takegawa
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