2回の仮縫いを経て完成した珠玉の一着
山口にはナポリにいる師匠から叩き込まれた言葉がある。
「出来上がった服を納めたときに新品に見えちゃダメだ。人間が着るものだから、服が目立たないように。服は人を引き立てないと意味がない」
この言葉を踏まえて、「モードとビスポークはアプローチの仕方が違う」と悟ったという。
2回の仮縫いを経て出来上がったコートに、山口は満足気な表情を浮かべた。
仮縫いの過程で、"自分だけのため"のコートが出来上がっていくことを徐々に実感したというKUYURIも、この完成したコートを羽織って、今までに体験したことのないような着心地とデザインの格好良さに惚れ惚れしたという。
「腰周りのエレガントなフォルム、見た目はタイトなのに、とても着心地が良いですね。既製品だと満足できる着丈のコートがなくて、ワイドなビッグシルエットを着て、そのゆとりを"着心地が良い"と思っていましたが、このコートを着て"フィットする"という本当の意味がわかりました」
KUYURIの長身を活かす着丈にこだわり、トレンドに左右されることなく着続けられるという思いから生まれた<ラ・スカーラ>のウィメンズコート。クラシックかつエレガントなコートでありながら、KUYURIが着たときにはモードに見えるのも、彼女の魅力を捉えて作り込まれた賜物だ。
最後にKUYURIはこう言った。「私のアイコンにしたいです」と。
風になびくコートをよそに、颯爽とパリの街をいく彼女の後姿を想像した。
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Photo:Tatsuya Ozawa
Text:ISETAN MEN'S net
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