LA SCALA Stories(2)世界を目指すモデルへ託す一張羅──KUYURIのために仕立てた、"極み"のロングコート(1/2)

伊勢丹新宿店メンズ館に常駐するテーラー山口信人が主宰する<LA SCALA/ラ・スカーラ>が初めて挑戦する“世界の最新モードを知る女性のための一着”――連載第2回は、「<ラ・スカーラ>の世界観をウィメンズで表現してみたい」と思い立った山口が、<ヨウジヤマモト>2016年春夏コレクションでパリコレクションデビューしたモデルKUYURIのためにコートを誂えた。177cmの長身に美しく映える黒のカシミヤコートに、作り手とモデルはどんな夢を見るのか。両者の言葉と思いから“ラ・スカーラの現在地”を探る。
 


KUYURI
2015年秋に<ヨウジヤマモト>のショーにてパリコレデビューを飾り、以降、<エルメス><ドルチェ&ガッバーナなど多くのショーで活躍中のファッションモデル。黒髪前髪パッツンがトレードマーク。 


KUYURIが黒しか着ない理由

 

KUYURIのモデル歴は約5年。「毎日ショーがあるなら、毎日ランウェイに立ちたい」と言う彼女は、フランス・パリで年2回行われる<ヨウジヤマモト>のショーに2016年春夏から歩き続けている。一流モデルだが、コレクションでは、もちろん服が主役。ランウェイを歩いているときは、「ブランドの世界に溶け込んで、服がしっくり"ハマる"モデルでありたいと思っています」と続ける。

パリコレに出るようになって服から小物までどんどん「黒」が好きになったという彼女。取材のときも全身黒。もちろん<ラ・スカーラ>で仕立てたコートも黒だ。


「モデルになりたての頃の写真を見るといろんな色を着ていますが、今はすべて黒です。黒はスマートで居心地が良い、私が格好良く見える色。力まず着られる色なので、ヨウジさんのコレクションでも気負わず着ることができます」

黒を好む理由も語ってくれた。

 

山口がウィメンズに挑戦した理由


もともとデザインすることより、服の作りや着てきれいに見えることに興味があったという山口。テーラーの道に出る前に通っていた服飾専門学校では婦人服を専攻していたが、「デザインする」というカタチにはしっくりこなかったという。

今回の挑戦も、お客さまの体型に合わせて美しく魅せる<ラ・スカーラ>の世界観をウィメンズで表現したいというテーラーとしてのシンプルな想いからだった。

そして、そんな折に出会ったのがKUYURIだった。



彼女を見て、山口がまず、頭に思い浮かんだというのが、巨匠ヘルムート・ニュートンが撮り下ろした<イヴ・サンローラン>のスモーキングルック。発表された1966年当時、「スモーキング革命」とまで称された画期的なスタイルだ。これにコートを羽織らせたい、色はもちろん黒、素材は極上のカシミヤ。――今見ても憧れるタキシードスタイルにどんなコートを羽織らせるのか。

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