INTERVIEW to Shoeshiner Vol.1 ジョン・チョン(MASON AND SMITH)|お客さまと向き合う愚直な姿勢
世界最大の屋上プール、インフィニティ プールや受賞歴のあるレストラン、さまざまなショッピングやエンターテイメントで知られる、シンガポールを象徴する5つ星ホテル『マリーナベイ・サンズ』。ここで靴磨きを生業としていた若干26歳の青年が、今年4月、イギリス・ロンドンで開催された『World Shoe Shine Championship 2018』を制した。その名は、ジョン・チョン(John Chung)。ファッションに興味を持ち始めて6年、靴磨きのキャリアは4年という新鋭だ。
靴磨きとの出会いは突然に
「私のスタイルはお客さまの雰囲気や要望に合わせたシューシャイン。なのでハイシャインはもちろん、マットな仕上げもする。別にどっちが好きとか自分のスタイルとかはなくて、ただただ要望に対して、お客さまの喜んだ顔や驚く顔が嬉しいんだ」
ジョンは、1992年生まれ。シンガポール出身の26歳。ナショナル・サービス(NS)と呼ばれる兵役制度に19歳から2年間従事した経験をもつ。
「それまではファッションに対する関心はそこまで高くなかったけど、少しずつ興味を持ち始めたんだ」
初めて手に入れたヴィンテージの<コールハーン>は、彼の転機となった。
ケアをした時に感じるなんとも言えない感覚に魅了され、みるみるうちに靴の奥深さにはまっていった。2014年には上述の通り、『マリーナベイ・サンズ』にてそのキャリアをスタート。1年も経たずして靴磨き部門を取り仕切るまでになっていた。
そして2015年、その有り余る情熱が、シンガポール初の靴磨きと靴修理専門店「MASON AND SMITH」として一つのカタチになった。
「シンガポールにはさまざまな国籍や文化をもつ人々が暮らしているから、色々な靴を見ることができる。もちろん平均気温が高いのでレザーシューズを履いてるビジネスマンはごく一部だけど、その一部で十分なんだ。だって、シンガポールで靴磨き専門は僕らだけだから(笑)」
そう柔らかな表情で応える彼には、さらなる大きな夢があった。
将来は靴職人になりたいんだ
「毎日、仕事が終わると靴作りをしているんだ。将来は靴職人になりたい。昨年は福田洋平さんのアトリエにも修行へ行った。まだまだ学ぶべきことはたくさんあるけれど、いつかは、シンガポール初のビスポークシューメーカーになりたいんだ」
強い想いを押し付けるわけでもなく、自信がなく去勢を張るわけでもなく、彼は自身の想いをやさしく丁寧に教えてくれた。
個性がないといえば嘘になるが、彼の個性は一筋縄にはいかない。それを紐解こうと質問を投げ掛けたとき、また1人彼に挨拶に来た顧客がいた。彼に日本のお土産を渡すと「またね!」と言って静かに立ち去る。
これこそがまさにジョンが提案したい顧客との関係性なんだと改めて気付かされたのだった。
Photo&Text:ISETAN MEN'S net
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