<レ・ザック>代表取締役 外山雅之×バイヤー 井波 亮

エキゾチックレザーのバッグを誂えるという行為は、エモーショナルな部分を満たしてくれる特効薬である。


左:レ・ザック 代表取締役 外山雅之
大学卒業後、留学時代に交流のあったファッション・ブランドの日本上陸にあたり、立ち上げメンバーとして活躍。家業に従事し、20年超。


右:紳士鞄バイヤー 井波 亮
2007年、伊勢丹入社。インターナショナルラグジュアリー、紳士鞄のアシスタントバイヤーを経て、2015年にバイヤーに。


エキゾチックレザーのバッグをオーダーする魅力とは


三越伊勢丹がレ・ザックを取り扱いはじめて、すでに3年が経つ。1980 年に東京・日本橋にて創業、OEMで培った感性、技術を武器に2004 年、ローンチしたレ・ザックはエキゾチックレザーに特化したバッグブランドだ。キーマンである代表取締役の外山氏が語るブランドの底力、そしてオーダーメイドの魅力とは──。

井波 エキゾチックレザーが醸し出すたたずまいは決して牛革では味わえないものです。潜在的なニーズがあるだろうことは想像できましたが、予想を超えた反応があった。お客さまにはブランドにこだわらず、よいものが欲しいという男性が多い。国内外の名品に触れ、目が肥えた方々です。
外山 お披露目のタイミングでトランクショーも開催していただき、我々のモチベーションも上がりました。
井波 トランクショーはバッグ売り場においても欠かせない催しです。ステファノマーノやダニエル&ボブなど、さまざまなトランクショーを開催していますが、エキゾチックレザーについてはほとんど手つかずでした。レ・ザックの真価はフルオーダーに顕著です。フルオーダーではお客さまの要望を丁寧にすくい上げるスキルが大切になってきます。その点でレ・ザックほど安心できるブランドはありませんでした。ホスピタリティあふれるプロセスは、さすが日本のブランドだけあると感服しています。
外山 フルオーダーの場合はその場でラフを描いて方向性をすり合わせるところからはじめます。次にラフをもとにスケッチを作成、ご確認いただいて問題がなければスライサーという素材でモック(模型)をつくります。革に近い風合いがあるので、かなり正確にできあがりがイメージできます。すべてのプロセスに納得していただいてからでないと、生産に入りませんので、納期はあってないようなものです。この流れは20年の経験で培ってきたものです。


フルオーダーはラフ→スケッチ→モックの3段階を経て、製作される。

井波 あらためてうかがいたいのですが、スーツや靴と違い、バッグにはフィッティングやサイズの不満を解消するというオーダーの基本的なニーズがほとんど存在しません。しかも、バッグにはいくつものマスターピースがあり、そこに価値を見出されるお客さまが大半です。それでもなお、レ・ザックが評価されている現状をどのように分析されていますか。
外山 この世にひとつしか存在しない、自分だけのバッグ、という精神的充足感を与えてくれるところに尽きるのではないでしょうか。まさに粋で酔狂な嗜好品の世界であり、酔狂を突き詰めればエキゾチックレザーにたどり着きます。
井波 (大きくうなずきつつ)まったく同感ですね。レ・ザックの魅力のひとつがモダンさのさじ加減にあります。牛革に比べればはるかにポーションが小さく、ユニークな斑をもつエキゾチックレザーはデザインワークに制約があり、あたらしいデザインを起こそうと思えばなかなか骨が折れるマテリアルです。これをやすやすとカタチにしてみせたのがレ・ザックでした。
外山 年に2 回はヨーロッパを訪れているので、自然と感性が磨かれる環境にはあると思います。渡航目的はバッグの国際見本市であるミペルや紳士服飾のピッティ イマジネ ウォモの視察・商談、それに代理店業務の営業。思い起こせば、物心ついたときにはファッションが好きでしたね。縁あってカナダのブランドの日本上陸のお手伝いをしたこともあります。
井波 海外の情報にもつねにアンテナを張り、デザインに落とし込むという作業を愚直に掘り下げてきたからこそ、お客さまが望まれるイメージも的確に汲み取れるのでしょう。レ・ザックがつくり上げたオーダーの魅力を考えるときには、その咀嚼能力の高さは外せません。

鏡面のクロコダイルではなく、地ツヤ仕上げを選ぶ理由とは



「手がけるには熟練の技が必要なため、ご多分に漏れず、高齢化が悩みのタネです」と外山氏。


トートバッグ 972,000円
クラッチバッグ 291,600円


外山 励みになるコメントをありがとうございます。
井波 地ツヤと呼ぶクロコダイルの仕上げもレ・ザックのモダンさを裏づけます。革の宝石といわれるようにクロコダイルといえば光り輝く斑が身上。ところがレ・ザックのそれは地(を生かす)ツヤの名のごとく、実に柔らか。こなれたデザインと相まって、現代のスタイリングに溶け込むんですね。しかもそのカラーバリエーションは、11 色にのぼる。レ・ザックといえばパイソンも得意とするマテリアルですが、こちらもやはり11 色。高額なマテリアルですから、どうしても無難な色になりがちです。カラーバリエーションはレ・ザックの魅力のひとつです。
外山 当社はバッグの会社でキャリアを積んだ父が立ち上げました。開業当初はエキゾチックレザーを中心としたバッグを輸入していました。家業入りした私がもうひとつの柱として育てるべく始動させたのが製造業であり、その一環で開発したのが地ツヤ仕上げのクロコダイルでした。化粧を控えめにすればごまかしがききませんから、必然的に原皮に対する要求も高くなります。レ・ザックは、世界有数の会社から原皮を仕入れ、日本でなめしています。地ツヤはもちろんのこと、豊富な色展開や極めてしなやかな風合いは、日本で妥協なくつくり込んだからこそ、です。

*価格はすべて、税込です。

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