【第2回】<MARKAWARE/マーカウェア>|モノづくりを農業から見つめ直す
いしかわしゅんすけ●<マーカウェア>デザイナー。1969年生まれ、兵庫県出身。 2002年に産声を上げたマーカに続き、2009年春夏シー ズンに、より洗練されたハイエンドガーメントを提案するマー カウェアを発表。メイド イン ジャパンにこだわり、素材選 びから縫製、加工に至るまで、洋服づくりにおける工程の ほとんどを日本国内で行っている。
2009年に産声を上げた、マーカウェア。その服は、着る者を選ばない普遍性をもちながら、時代を確かに感 じさせるマスキュリニティを兼ね備える。デザイン、素材、 縫製と、どこをとっても海外のハイブランドに引けを とらないクオリティで、ジャパンブランドの雄と形容す べき存在だ。デザイナーの石川俊介がここ数年力を入 れて取り組んでいるのが、サステイナブルな素材の追求 と、ブランドのトレーサビリティ化である。
「まず、工場ありき。メイドインジャパンにこだわるのも、 日本にはすぐれた工場と職人さんがいるから。工場の 集合体、それがマーカウェアなんです。そこで昨年から 値札とは別に“トレーサビリティ下げ札”を付けています。 ひとつの服が内包している物語は語り尽くせません。 その物語の片りんだけでも知ってもらえればと、たずさわっていただいた工場の名前を公表しています。お 客さまの安心安全を考えた結果、服の裏にある情緒的 な情報を伝えることにもつながりました」
コットンとウールは、すべてオーガニックに切り替えられた。さらに今季は、ヘンプが加わった。ヘンプは一年草で、大げさな森林伐採などとは無縁だ。これらは 環境にはやさしい原料であるが、珍しい素材であるため、 製品化には手間がかかる。
「生地を織る際、縦糸の張り具合が重要なのですが、 紙は引っ張りすぎると切れてしまうんです。そこで古 いシャトル織機を持っている、静岡県の機屋さんにお 願いしました。手作業による微妙な調整を行うことで、 和紙による生地をつくることができたんです」
できあがった生地は、通気性に優れていながらもト ロッとした光沢をもっていて、独特な美しさをたたえ ている。物語込みでその魅力を伝えることで、見た目 のかっこよさ以上のものを提供できるのだ。
「服づくりの原点は農業です。例えば食の世界では、 農薬を減らして、土壌に負荷をかけないような取り組 みがなされています。綿花の栽培はそうはいきません。 “衣”の世界は、サステイナブルという観点では後塵を拝 する存在です。一朝一夕にして変わるものではありま せんが、お客さまも含めて理解度が深まっていけば、“衣” の世界も豊かな未来に貢献できるのかなと。先は長い ですが、今後も地道な改良を続けていきます」