【インタビュー】<増永眼鏡>増永宗大郎|皇室献上品を現代に蘇らせる「半医半芸術」の粋(1/2)
この「MASUNAGA G.M.S.」に昭和天皇に献上品として捧げられたモデルがある。昭和8年、昭和天皇の福井行幸の際に献上されたという記録が残されている。本社に保管されていた「献上品 複製品」と銘打たれた桐箱は、献上本品に不都合が生じた際の予備品であったという。蓋を開けるとアールデコ様式の革張りの装飾箱が納められており、中には献上品と寸分違わぬ3枚の眼鏡フレーム、セルロイド製1本と20K金無垢2本。ひとつひとつ専用のケースに収められた状態で所蔵されている。80年以上が経過しているにも関わらず状態は非常に良好で、職人が命を吹き込んだかのように、いまも静かに息づいているように神聖な品であった。
「献上品は2人の職人が白装束に着替え、身を清める禊を経てから作業に入ったと聞いています。当時の当主である五左衛門ですら、作業場に足を入れられなかったそうです。天皇陛下に献上する品を作り上げるというのは、とても神聖な儀式だったのです」。
そう話す増永眼鏡現社長・増永宗大郎氏は創業者・増永五左衛門の曾孫にあたる。
<増永眼鏡>増永 宗大郎社長
「2005年に創業100周年を迎えたとき、それまで休止していたG.M.S.を復刻させました。現代の技術のお披露目と未来に向けての決意表明として、かつてのモデルはあくまでモチーフとして、最新の素材と技術、デザインで作り上げました。大変ご好評をいただいたのですが、なかには当時のデザインそのままのものを希望されるお客様もいらっしゃいました。そこで2009年に、あらためて献上品の復刻版としてGMS 999をリリースしました。999という数字は、ほぼ究極に近いものという意味を込めたものです」。
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