21世紀型のラジカセと、音楽業界、さらに伊勢丹での新しいスキーム作り
金子 今回のフェアではビンテージラジカセの展示販売、松崎さん監修の書籍やDVDの販売、オリジナルブランクテープの販売に加えて、先日終了したクラウドファンディングによる未来のラジカセ「MY WAY」の告知も行います。
松崎 ラジカセはこの数年で、一つの“カルチャー”として注目されましたが、その原点は、ラジカセが持っているユニークなデザイン・機能と、日本の家電メーカーが物作りに真剣に取り組んでいた時代のメイド・イン・ジャパンの価値にあります。そういう点が世界的に認められてムーブメントになりましたが、さらに“アート”としても新しい文脈を作っていこうと、編集者でプロデューサーの熊谷朋哉さんとタッグを組んでプロジェクトを進めているところです。
金子 熊谷さんは松崎さんのことをどう見ていたのですが?
熊谷朋哉
編集者・プロデューサー。株式会社スローガン代表取締役。アート/音楽系の書籍や広告/イベント/展覧会などを数多く手がける。編著書に『Yellow Magic Orchestra×SUKITA』『四代目 市川猿之助』『坂本龍一+編纂チーム/いまだから読みたい本・3.11 後の日本』『デヴィッド・ボウイ・アーカイヴ』『中西俊夫自伝/プラスチックスの上昇と下降、そしてメロンの理力』『プラスチックス/情報過多』『ラジカセ for フューチャー』など多数。展覧会に『Time – David Bowie by Masayoshi Sukita』など多数。
熊谷朋哉 松崎さんのことはさまざまなメディアで拝見していて、「恐ろしい人がいるな」(笑)と思っていました。それから仕事でご一緒する機会があったのですが、想像していたより恐ろしい人でした。
金子 恐ろしい人というのは?
熊谷 古い物を集める、愛でる、本などで発表する、いわゆるマニアの人ではなくて、そこから次に何をするか、「人間と家電の関係」を射程に入れつつ、オリジナルでラジカセを作ろうと思って行動する、スケールの大きさと射程の長さが凄い。文化的な家電の歴史や音楽、経済、暮らしなどの全部で面白い切り口をお持ちの方です。
松崎 熊谷さんとは、優良遺伝子を現代に引き継ぐラジカセと、デジタル化で疲弊している音楽業界を結んで新しいスキームを作りたいと思っています。それに伊勢丹さんの協力をいただけるのも心強いです。
21世紀型ラジカセ「MY WAY」
21世紀型ラジカセ「MY WAYプロジェクト」とは
金子 今回のフェアでは、フルアナログの新たな原点となる21世紀型ラジカセ「MY WAY」の告知も行いますが、なぜ自前でラジカセを作ろうと思ったのですか?
松崎 家電は家電メーカーに任せればいいんですが(笑)、何社かラジカセ復活の提案をしたんですが、今の家電メーカーはどこもそれどころではないんですね。それなら草の根から変えていけることをしようと。まだスタートしたばかりですが。
金子 「MY WAYプロジェクト」では総合プロデュースと監修を松崎さんが、プロデュースを熊谷さんが担当されています。
松崎 デジタルツールが普及したことで、いわゆるアナログは自己表現のツールとして捉えてもらえるようになりました。電車の中ではスマホで音楽を聴きますが、家ではアナログで柔らかい音を味わうなど、使い分けが上手になってきた。そういう“アナログとデジタルの共存”から新しいカルチャーやスタイルが見えてきます。
熊谷 忙しいときや仕事中は缶コーヒーを飲むけれど、時間がある家ではサイフォンでのコーヒーを楽しんだり、ファッションでも<コンバース>のオールスターと、<ナイキ>の最新モデルを履き分けたり、私たちはどんな状況であっても暮らしにうるおいを求め、アナログ的なものに愛着を感じています。ラジカセはあくまで音楽を聴くものですが、ハードの多様性によって、好きなスタイルが選べるようになりました。
金子 「MY WAYプロジェクト」にはミュージシャンも参加されていますね。
熊谷 新たなカセットレーベルを立ち上げますが、コラボレーションアーティスト・クリエイターとして、80年代から活動していたミュージシャンでプロデューサーのSalon Musicに参加してもらっています。アナログならではの豊かな音を届けたいですね。
アナログとデジタルが共存する未来像を描いていく
松崎 ビンテージラジカセはご説明したように、今後アートピースとしての魅力も高めて、価値が下がらないと思います。整備をしていて中のメカを見ると実に丁寧に作られていて、家電メーカーに問い合わせても「今の時代には作れない」と返答されます。そういう価値ある家電を通して、これからのアナログとデジタルの共存できる世界を作っていければと思います。
金子 メンズ館のお客さまには、80年代前後にラジカセで音楽に夢中になっていた世代の方も多いので、この秋に予定する<デザインアンダーグラウンド>の“第2章”となる「MY WAY」にもご期待いただければと思います。
松崎 オリジナルラジカセ「MY WAY」は2017年春以降の発売を予定していますが、フェア会場にモックを置いているので、ぜひご覧ください。
金子 「MY WAY」から広がる新しいプロジェクトにも期待しています。
<デザインアンダーグラウンド>期間限定フェア
■12月26日(月)~2017年1月17日(火)メンズ館8階=イセタンメンズ レジデンス
■2017年1月3日(火)~17日(火)銀座三越5階=ジェントルマンズ ラウンジ
■2017年2月1日(水)~7日(火)日本橋三越本店2階=紳士プロモーション
*価格はすべて、税込です。
お問い合わせ
メンズ館8階=イセタンメンズ レジデンス
03-3352-1111(大代表)
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