学生デザイナーが挑んだ“新たな靴の提案”に込められたメッセージ
メンズ館地下1階=紳士靴で10月19日(水)からスタートする靴博 第二弾「JAPAN靴博2016“人類と靴文化の発展に向けて”」に、昨年に続いて、“靴づくり”の技術を学ぶ、専門学校 ヒコ・みづのジュエリーカレッジ シューメーカーマスターコースの3人の学生の作品が特別展示されます。
靴博を企画する紳士靴アシスタントバイヤーの田代径大は、「靴博は、靴文化や靴業界の発展を大きなテーマにしていますが、もう一つ、未来の靴文化を支えていくクリエーターの発掘も重要なテーマです。靴好きのお客さまに学生の作品を見ていただく機会としても靴博にご注目ください」と語ります。
左から、吉田卓巳さん(21歳)、田原 咲さん(20歳)、猿渡健太さん(22歳)
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3年生全員から一人10分のプレゼンテーション
昨年の第1回では、同校のシューメーカーマスターコースの4名の学生の作品を展示しましたが、「私たちが面白いと選んだ靴を、会期中にお客さまに見ていただき、とても良い反応と高い評価をいただきました。今年も同コースの学生さんにプレゼンテーションしてもらい、3名の作品を特別参加として展示します」と田代。
選ばれたのは、猿渡健太さん(22歳)、田原 咲さん(20歳)、吉田卓巳さん(21歳)の3名です。
自分で選んだ「テーマ」から発想の翼を広げて具現化する
――では、それぞれの「テーマ」と、そこから実際の靴への落とし込みを解説してください。
「Origami-Shoes」
日本独自の文化である折り紙の"剛体折り"の構造を取り入れた薄いすながらも強度に優れた一足。柔らかな革を使用することで履き心地がよく、平面化することで抜群のポータビリティを実現した。
猿渡健太 テーマは「サーフェス」です。サーフェス=表面なので、日本の折り紙の技法に着目して、“靴じゃないカタチからトランスフォームする”ことを考え、レザーを折りたたんで「立体化するシューズ」を作りました。
「alegria」
メキシコの民族衣装や伝統的なダンスから着想されたダンスシューズ。ダンスにおける人々の喜びや悲しみ、さまざまな表情をこの一足で表現した。
田原 咲 私は「コミュニケーション」をテーマに、言葉でのコミュニケーションではなく“動きでのコミュニケーション”として、踊ると金属が鳴る「ダンスシューズ」を作りました。見てほしいのは、ウエスタンブーツの技法を用いたアッパーの飾り部分です。とても難しかったのですが、自然物のモチーフが好きなので挑戦しました。
「Puzzle Shoes 」
すべての人が履ける靴をコンセプトにした「Puzzle Shoes 」はパズルのようなピースでソールを構成することにより、サイズだけではなく好きな形にカスタマイズも可能。
吉田卓巳 自分が選んだのは「ファンクション」です。ファンクション=機能ですが、“すべての人が履ける靴”をコンセプトに、ジグソーパズルのカタチに注目。木をレーザーカットして、「履いてもピースが外れない」よう木に厚みをつけて、塗装面もニスや合成樹脂を厚めに塗ったり工夫しました。「本当に履けるの?」とよく言われますが、下駄のような感覚で履けます。
靴博を企画するアシスタントバイヤー田代径大
3人とも違う感覚がストレートに伝わってくる作品
田代 私たちが注目したのは、決めたテーマからどう自分なりに解釈して表現するかのプロセスです。猿渡くんの「折り紙を立体にしていく」という、革のシワをカタチづけて履けるようにする発想は新鮮で、日本らしい発想ですが、できあがりは異質なモノになっていてとても面白い。
田原さんは、一見して派手な靴ですが、コミュニケーション=靴に仕掛けという発想が面白くて、カラーリングもきれいで民族的な雰囲気でまとまっています。「コミュニケーションを突きつけたときに、一番素直なモノを作った」という田原さんらしさが伝わります。
吉田さんの「ファンクション=ジグソーパズル」という発想と解釈のしかたがすごいですね。3人とも違う感覚がストレートに伝わってくる作品になっています。
三者三様のテーマと靴への向き合い方
――靴博に選ばれたときの気持ちは?
猿渡 出展が決まったときは心の準備がなくて、びっくりしたのとうれしいのが混ざっていました。自分は、作品製作のとき、「商品としてほしいと思ってくれるモノを作ろう」と心がけているので、靴博でもそういうふうに見ていただければうれしいです。
田原 他の人の作品を見て、「私、一人だけ異質?」と思っていたので、選ばれると思っていませんでした。テーマから行き詰まってしまって、「自分の好きな靴を作る」と決心して作った靴なので、本当に自己満足の作品です。そこを見てほしいですね。
吉田 靴博に出展したいと思っていたので、選ばれてよかったです。これまで、「今までになかった新しいモノを作りたい」と思って勉強してきたので、そこを感じて見てほしいです。
クラスメイトの作品を評価してみよう
――では、それぞれ他の人の作品の評価をしていただけますか。
猿渡 吉田君の「ジグソーパズルが靴になる」という発想には驚きました。ファンクションのとらえかたが、組み替えができる面白さで、クオリティも高いです。また、サイズを問わないので老若男女が履いて楽しめて、コミュニケーションのきっかけにもなる。楽しさも感じられる靴で素直にすごいと思います。
田原 猿渡さんはクラスで隣の席で、製作過程を見ていて、革を叩いていたのが「折りたたんで立体になる」という靴になって感動しました。飛行機などに乗ったときに履き替えるなど実用性もありますね。商品化されるといいなと思います。
吉田 田原さんのダンスシューズは、もう田原さんしか作れないと思います。それぐらいオリジナリティがあるし、技術も発想も込められていますね。
モノづくりに影響を与えるブランドやデザイナー
――好きなデザイナーやブランドを教えてください。
猿渡 自分の作品にも影響が現れていますが、好きなブランドは<ISSEY MIYAKE/イッセイミヤケ>です。常に新しいものをつくろうと、日本にいながら海外と戦っているところにリスペクトを感じます。プロダクトデザインに機能が備わっていて、さらに美しい。機能美がすごいです。服では、ヴィンテージのリメイクをストリートテイストで表現する<COTE MER/コートメール>というブランドが好きです。
田原 私はセミナーで来校された<writtenafterwards/リトゥンアフターワーズ>のデザイナーの山縣良和さんです。山縣さんの考え方が好きで、デザインにある独特のヌケ感が好きで、お話に感動して、服を買いました。「自分らしく作品を作る」ということを教えていただきました。普段は下北沢の古着屋が好きです。
吉田 もともとスニーカー好きが好きで、特に<NIKE/ナイキ>はデザイン性と常に新しいことにトライしているところが好きです。服でよく買うのは<A.P.C./アー・ペー・セー>ですね。
――卒業後の進路や将来の夢は?
猿渡 靴づくりを学んできて、洋服にも興味があり、靴で学んだことを他に活かせたら、面白いモノを世に出せるかなと、いろんなことにチャレンジしたいです。
田原 私はもともとファッションが好きで入学しました。クラスメイトはみんなヲタクレベルでスニーカーが好きですが(笑)、私はまずブランドの販売職に就きたいと思っています。
吉田 自分はバッシュから好きになって、スニーカーを好きになりました。将来はスポーツシューズの企画デザインが夢です。
最後に田代から、「3年次には高度な製靴技術を修得して、“靴”という表現手法を通した独自の世界観を学んでいる3人ですが、靴博は、感度の高い目の肥えたお客さまが見てくれる希少な機会。今回の参加を自分から積極的に発信してほしいし、今後に活かしてほしい。もちろん私たちからもいただいたご意見をフィードバックするので、自信を持って臨んでほしいです」と締めくくられた。
JAPAN靴博2016~人類と靴文化の発展に向けて~
□10月19日(水)~11月1日(火)
□メンズ館地下1階=紳士靴
■参加ブランド
オーツカ、キッズラブゲート、サンカッケー、ジョリ、スコッチグレイン、スピングルムーヴ、セルビノ、ソイム、ダイタキムラ、ナオヨコオ、ビブリオテック、ヒロシツボウチ、ユニオンイぺリアル(50音順)
■そのほか各店での開催はこちら
・銀座三越:11月9日(水)~15日(火)
・岩田屋本店:11月19日(土)~27日(日)
・伊勢丹立川店:11月30日(水)~12月13日(火)
*都合により開催期間、場所が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ
創立50年。身体を装飾するアイテムに特化した専門学校の「ヒコ・みづのジュエリーカレッジ」。ジュエリー、シューズ、バッグ、ウォッチのアイテムに特化して、伝統技法から革新的な表現方法まで幅広く学びます。校舎は渋谷・原宿・青山に立地。ファッションと文化をリードする街で、次代の業界を担うクリエーター・技術者を目指します。
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