JAPAN 靴博 2015|【インタビュー】あのワクワクを、もう一度 靴業界の未来を担う学生デザイナー(1/4)
- 10.28 Wed -11.10 Tue
- 伊勢丹新宿店 メンズ館地下1階 紳士靴
マーケットインは飽和する小売の現場において生まれた概念で、エンドユーザーのニーズをいかに汲み取るかを至上命題とした。一定の成果を収めてきたのはたしかだが、それだけでは味気ない。つくり手主導のプロダクトアウトの発想も時には必要ではーー数年越しのそんな思いを具現化したのが、「JAPAN 靴博 2015」。いよいよ幕を切って落とす。
人類の進歩と調和をテーマに掲げ、過去最大の規模を誇った日本万国博覧会。通称、万博。岡本太郎がつくり上げた太陽の塔が会場を睥睨するようにそびえ立ち、月の石を展示したアメリカ館は途切れることのない行列ができた。ゆうに6000万人を超える来場があり、国際博覧会初の黒字を達成したことでも話題になった。1970年におよそ半年にわたって開催された万博は高度経済成長を成し遂げた日本を世界に喧伝する、またとないイベントとなった。
「国威発揚を目的とした万博には77の国が参加、最先端の技術を競いました。三菱や日立、そして松下といった民間企業も負けていませんでした。みなが明るい未来を信じていた時代。そのワクワクをふたたび、という願いから靴博と名づけたんです」とアシスタントバイヤーの田代径大はいう。
「つくり手みずから心から面白いと思えるモノづくりをみてみたかった。従来であればサンプリング→修正という流れを経るのですが、このプロジェクトに関してはだからそのようなプロセスをすべて省略しています。お願いしたのはただひとつ、ほんとうにつくりたいものをつくってください、ということだけ」
日本を代表する職人、デザイナー、ファクトリー総勢30に近いブランドがこの試みに賛同した。すべてが一点モノであり、まさにアートピースといっていい珠玉のラインナップ。購入も可能で注文が入ると売約済みの札が下げられる(作品の下にはつくり手のコメントつきのフットプリントが敷かれおり、購入者にはそのフットプリントも贈られる)。さながら美術館のような空間では、「販売員は学芸員の体で接客にあたります(笑)」
見逃せないのが学生を巻き込んでいる点である。それは紳士靴業界をリードする存在となり、文化深耕の役回りも期待されるイセタンメンズの矜持であり、若手にとってはこれ以上ない舞台。会期中は選ばれた作品も展示される。
「ヒコ・みづのジュエリーの学生さんに協力してもらったんですが、いささかの下駄も履かせずレベルが高かった。選考にはほんとうに苦労しました。総勢19人がエントリー、苦渋の決断で4人に絞り込みました」
イセタンメンズのバイヤーをして掛け値なしに面白いといわしめた作品を、つくり手の思いとともに一足早くお届け。
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