【イベントリポート】中野香織×綿谷 寛×バー「ル・パラン」|「21世紀に生きる日本の紳士」を語り、描き、飲む(前編)
土曜の午後、シャンパンでの乾杯からスタート!
6月18日(土)の午後、メンズ館8階=チャーリー・ヴァイスに、思い思いに着飾った大人たちが集合しました。“画伯”がお目当ての女性も多く、トークショーは華やかな雰囲気の中でシャンパンでの乾杯からスタート。
中野香織 主人(あるじ)のチャーリーはイタリアに行ってしまって寂しいですが、今日はゲストの皆さまが華やかでとてもうれしいです。スペシャルゲストに綿谷 寛さんと、バーの名店「ル・パラン」の本多啓彰さんとアシスタントの上村 拓さんをお迎えしていますので、皆さま、どうぞ楽しい時間をお過ごしください。
「紳士のもの選び」の連載の取材で一番感動したのは「人」
中野 雑誌サライの連載「紳士のもの選び」をまとめた単行本『紳士の名品 50』は、たんなる商品カタログではなく、名品を通して紳士の世界を語ったもので、翻訳も含めると私の13冊目の本になります。この紳士の世界に必須の茶目っ気や色気を表現するのに、イラストが一番のポイントだったのですが、編集者と「綿谷さんしかいない!」と意見が一致し、時間のない中でお願いしました。今日は特別に原画も展示しています。画伯がわざわざ絵にあわせた額装をほどこして持参してくださいました。ありがとうございます。
私は、ファッションというのは単に服装だけではなく、時代と社会と人を形成するものと思っていて、言葉や社会生活、立ち振る舞い、考え方などすべてを含めてファッションとして扱っています。「紳士」もそうで、服装だけではなく、言葉や振る舞い方、考え方や行動など広く含めて紳士像が作られると考えています。
「紳士のもの選び」の連載の取材で感動したのは、ものそのものよりも、関わる「人」でした。職人さんにならってガラス作りを体験したり、エスプレッソの正しい飲み方を習ったり。その時に「砂糖なしのエスプレッソは愛のない恋愛と同じ」という名言を教えてもらいました(笑)。取材で知り合った多くの人とのつながりが一番の財産になりました。
また、単行本には書けなかったのですが、英国王立園芸協会の取材で、800色以上あるカラーチャートを使って植物を登録することを知ったり、バッグメーカーの<エース>ではバッグにおける“ビジネス仕様とカジュアル使い”の定義の違いを知ったり、貴重な体験もできました。
紳士を作るのには、服装以外の要素がとても重要
中野 今日のスペシャルゲストの本多啓彰さんは、夏場でもスリーピース姿の紳士に遭遇する確率が都内でもっとも高いといわれるバー、「ル・パラン」のマスターバーテンダーで、7年ほどのお付き合いになります。カウンターに座って少し会話すると、その時の体調に良さそうな旬の飲みものをスッと出してくれるんです。今日は、「紳士を作るのには、服装以外の要素がとても重要」ということで、多くの紳士を見てきた本多さんと上村さんにお越しいただきました。まず本多さんの「紳士像」をお聞きしたいのですが。
本多 そうですね。40歳以降で、見た目がハンサムかどうかではなく、表情や雰囲気だと思います。
中野 お店に入ってきたとき、「紳士だな」と思う方は?
本多 店に入られた瞬間から、私たちはカウンターの中から拝見し、お客さまからも見られていますが、紳士だなと感じるのは、背筋を伸ばして、朗らかな表情で、心の中でショパンのノクターンが流れているかのように優雅に歩き、颯爽としている方ですね。
中野 ショパンのノクターン! 女性をエスコートしている場合はどうですか。
本多 お連れの女性の椅子を引いて先に座らせると、「こいつはできる」という雰囲気になりますね。
中野 ちなみに、女性一人の場合は?
本多 最高の笑顔でお店に入ってきていただければ、あとはバーテンダーが勝手にやります(笑)。
バーで良いサービスを受けるための振る舞いを教えます
中野 バーでの“紳士的なオーダー”の仕方ってありますか。
本多 まず座ってすぐスマホをいじらないことが大事です。それからカウンターに座ったなら、お酒の品揃えを吟味して、ゆったりした気持ちで飲みたいものをオーダーしてください。
綿谷 寛 つい急いで「ジントニック!」を頼んじゃうんだよね(笑)
本多 バーで良いサービスを受けるには、バーテンダーをその気にさせるのが大事ですね。
中野 バーでのタブーってありますか?
本多 女性も男性も、バッグをカウンターの上に置くのは避けて、足元の床に置くか、スタッフにお預けください。バッグをカウンターに置くのは、靴を置くのと変わらない行為で、イギリスでそんなことをすればオーダーを取りに来ないかもしれません。
中野 そうなんですか。では、バーでの粋な会話のコツは?
本多 誰が聞いても心地良い会話を目指してください。最近見た映画の話などだと、他のお客さまも興味を持ちやすいですね。「うちの部長がさ……」だと、誰も参加できません(笑)。
中野 そうですね。映画や美術、お芝居の話だと会話に参加できますね。新宿で映画を観た後は、ぜひバー「ル・パラン」へどうぞ。では、後半は、「装いから見た現代の紳士」のご紹介と、綿谷画伯によるライブドローイングのパフォーマンスです。ご注目ください。
後編>21世紀に生きる日本の紳士」を語り、描き、飲む
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