【イベントレポート】<EDWARD GREEN/エドワード グリーン>|125周年を迎えた老舗の矜持
粋人、チャーリー・ヴァイスが営む「THE GALLERY by CHALIE VICE」にて密やかに行われてきたエンドユーザーとつくり手の交流イベント。本日のゲストは<エドワード グリーン>のマネージング・ディレクターにして、チャーリーと旧知の仲というヒラリー・フリーマンだ。
司会 このたびはお越しいただき、ありがとうございます。ヒラリーを囲んだ当イベントは今回で2回目。作り手の生の声がお届けできるとあって前回も盛況でした。今宵はもう一歩踏み込んで、新作を紹介させていただくと同時にインフォーマルなエピソードも織り交ぜればと思います。
ヒラリー・フリーマン(以下・ヒラリー) 今日は私も包み隠さずお話しするつもりでおりますが、長い付き合いになるチャーリーはいまだに年齢からなにからすべて秘密。しかもたったいまも世界のどこかを旅している。フェアじゃないわね(笑)。
ーー会場に笑いが起きる
ヒラリー さて、まずは「ガルウェイ」。みなさんご存じのハンティングブーツです。イタリアの取引先からもう少しファッショナブルな「ガルウェイ」が欲しいという声があってあらたにつくったのがこちら。シャープなラスト82を使って、スムースレザーとスエードやグレインレザーをコンビで仕上げました。先日、ふらりとファクトリーを訪れたチャーリーにお見せしたのだけれど、好評でしたわ。
司会 ラスト82といえばアップデートさせたラストが売場に並んだばかり、と伺っております。
ヒラリー 915ね。82の爪先を数ミリ伸ばしています。サイドウォールを主張したシルエットはさきに完成させたラスト890のエッセンスを採り入れているの。
司会 ここのところ、立て続けにあらたなラストを発表されていますね。
ヒラリー ええ。890(888のフィッティングをベースにエッジを効かせたスクエアトウ)、そしてカントリー・ラストの72、スリップオンの「デューク」を開発したわ。
司会 2014年にはロゴを変え、ジャーミンストリートの店もリニューアルされました。眠れる獅子が目を覚ましたという感じです。
ヒラリー 今年は創業して125年。水面下で準備を進めていました。しかし、これだけ言っておきたいの。その一歩はあくまでエボリューションであり、レボリューションではないということを。ラスト915は82の流れを汲むものであり、82はあの202(エドワード グリーンの名作ラスト)がベースになっていますからね。伝統を大切にしつつ、チャーリー同様、世界を旅して回って、そこで得られたものを熟成させて採り入れています。
司会 お話に出たスリップオンの「デューク」もその一つですね。
ヒラリー かのウィンザー公がプライベートジェットから降りてきたところの写真が残っているんですが、そのときに履いていた靴へのオマージュです。「デューク」は公爵の意。つまりウィンザー公のことなの。
ーーネーミングの由来をイセタンメンズ紳士靴担当バイヤーもはじめて知り、驚きの表情
ヒラリー (チャーミングに微笑みながら)「セントジェームス」も自信作です。独創的なサイドレースはかつて特許をとった仕様で、ノーサンプトンの靴美術館に残っていたスケッチを甦らせたもの。こちらもラスト82をつかったんだけれど、クリンピング(甲革のクセづけ)が難しくてリリースが半年遅れたわ。
司会 来年以降もいろいろ仕込まれているのでしょうか。
ヒラリー それについてはフレデリック(ブリンドハイム)に語ってもらいましょう。彼は昨年からセールス・マネージャーをやってくれているの。どうかしら?
フレデリック (突然話を振られ、すこし動揺しつつ)アメリカのシカゴでコードバンをみてきました。現在は特別な革を開発中です。
ヒラリー 私が履いているスリップオンも見ていただけるかしら。ジョン(フルスティック、先代)の時代につくったことのあるモデルで、サフォークというイギリスでポピュラーな低地に棲息する羊の毛をつかっています。来年には商品化したいわね。
守りつづけるファミリービジネス
司会 現場の人々のことも教えてください。まず、みなが疑問に思っているだろう点です。グリーンはだれがデザインしているのか?
ヒラリー マシューです。ラストメーカーであり、わたしが全幅の信頼をおいているシューメーカー。ちなみに彼は冬でも半袖なんです。今日一番の秘密かも知れないわ(笑)。
司会 型紙や縫製は?
ヒラリー ジュリーよ。彼女もマシュー同様、学生のころから優秀だったわ。
司会 新陳代謝も順調に行われているんですね。
ヒラリー トップドロワー(プレステージライン)はまだまだアンディの聖域だけどね。彼、作業の直前、一瞬、動きがとまるの。かっこういいわよ。
司会 ライニングの小窓に品番などを書いているのは?
ヒラリー カレンです。
司会 さすが家族のような付き合いをしているだけありますね。名前がすらすら出る。
ヒラリー <エドワード グリーン>というカンパニーはファミリービジネスであることが強味ですからね。みな、気持ちのいい人ばかりよ。機会があれば、ぜひ会いにきてやってください。彼らにとっても励みになります。
司会 みなさま、本日はご参加いただき、ありがとうございます。エドワード グリーンをお履きのお客さまはこちらにお越しください。最後に足元の集合写真を撮りましょう。
ーーパチリ
ーー拍手
Text:Takegawa Kei
Photo:Fujii Taku
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